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個店価値の新創造 〜個店の魅力づくり〜

「統一フォーマット展開の徹底が基本」であるチェーン店。そこでも、「個店の魅力」の重要性が強まっていることを裏付けるいくつかの事実がある。

例えば、「ローソン」。以前より、「個店主義」を掲げ、立地に合わせて店づくりを変えている。2009年2月期第3四半期決算では、経常利益前年同期比14%増、売上高は6%増の増収増益。この好業績は、商圏情報(店舗立地、天候、地域の行事など)を分析した『個店カルテ』の活用促進が浸透してきた結果でもあるという。

例えば、「王将フードサービス」。2009年4〜6月期の経常利益は前年同期比90%増、売上高は23%増の155億。しかも既存店が前年同期の20.5%伸びというのがすごい。「チェーンは個店の集合体」という理念があり、その商圏に最適な店づくりを実現させるための裁量は店長に委ねられている。そのことが、この既存店の伸びを支えている大きな一因とも言われている。

チェーンの魅力は「どの店も同じ安心感が得られる」ということにあった。今も、根底にあるその「安心感」は重要であるが、それを超えて、固有名詞の「○○店を選びたい」と言ってもらえる魅力づくりが重要になってきている。もちろん、それはチェーン店に限ったことではない。というより、チェーン店も独立店も同じ土俵の上に立っており、「個店での勝負」が高まってきたと言える。

弊社では、「店舗クリニック」という個店活性化サービスを、10年前から、述べ1万人のお客様のモニター、5000店の個店に実施している。その実例データを踏まえながら、お客様は、どんな店を「選びたい」と思い、「また次も選びたい」と思うのか。どのような個店の魅力を「期待」し、「評価する」のかについて、次から分析を進めていく。


■選ばれる店・選びたくなる店

1.選ばれる店

「新規オープン」「○○地区では最大の大きさ」といったキャッチフレーズだけで、そこに行ってみようと思うお客様はどれくらいいるのか。お客様の声を聞いてみる。

「新しく出来たからって、自分の好きな店が入っていなければ行く意味はない。」(20代/女性)

「いくら大きくても、好みの店がなければ、疲れるだけ。」(30代/女性)

「女性向けの店が多かったら、行っても無駄足。」(30代/男性)

「大きいからいいことって何?見て回るのに疲れて、自分の好きな買い物も出来ない。」(40代/女性)

「もう行くところは大体決まっているので、新しく出来たというだけでは‥。」(50代/女性)

そこで、どれくらいの人が「選ぶ店を決めているのか」「店の選び分けをしているのか」を、「服飾・雑貨」「食料品」「飲食店」について、調査した結果が図表1である。


図表1 「選ぶ店」と「選び分け」

「選ぶ店は決まっている(「使い分けない」+「決めている店の中で使い分ける」)」とした人は、「服飾・雑貨」で6割、「食料品」では8割と高くなった。また、「選ぶ店は決まっている」とした人の中でも「選ぶ店はいくつかあって、目的によって使い分ける」という人が、大半を占めた。

次に「重視する店選びのポイント」を聞いた結果が図表2である。「服飾・雑貨」「食料品」「飲食」ともに上位にきているのが、「好みのものが揃っている」「価格」。特に、「服飾・雑貨」「飲食」では「好みのものが揃っている」が8割と高い。一方「食料品」は、他と比べ、「新鮮な商品」「品揃えの幅が広い」「行きやすい立地」も高くなった。


図表2 重視する「選びのポイント」(5つ以内)

また、「面積が大きい店」「新しい店」は優先順位として下がった。

さらに、これらの「選びのポイント」を数量化V類で、選び方別に分けたものが図表3である。

@服飾・雑貨
『行く店は決まっていて店を使い分けない人』‥「定番品がすぐに買える」「欲しいものがすぐに選べる」が、他と比べての選びポイントとして高くなった。

『行く店はいくつか決まっていて使い分ける人』‥「自分の好みのデザイン」「流行の商品」と「価格」「品揃え幅」「行きやすい立地」で選び分けている人が多くなった。

『行く店は決まっておらずいろいろな店に行く人』‥「自分の好みのデザイン」「流行の商品」と「価格」「品揃え幅」「行きやすい立地」に加え、「大きな店」「新しい店」もあがった。

A食料品
『行く店は決まっていて店を使い分けない人』‥服飾・雑貨同様に、「定番品がすぐに買える」「欲しいものがすぐに選べる」が高くなった。

『行く店はいくつか決まっていて使い分ける人』‥「自分の好みの商品」「新鮮な商品」と「価格」「品揃え幅」「欲しいものがすぐに選べる」で選び分けている人が多くなった。

『行く店は決まっておらずいろいろな店に行く人』‥「価格」「品揃え幅」に加え、「大きな店」「新しい店」もあがった。

B飲食店
『行く店は決まっていて店を使い分けない人』‥「定番メニューが品切れなくある」「欲しいメニューがすぐに頼める」「新メニュー」「自分の好みのメニューがある」が高くなった。

『行く店はいくつか決まっていて使い分ける人』‥「自分の好みのメニュー」「メニューの品揃え」が高くなった。

『行く店は決まっておらずいろいろな店に行く人』‥「価格」「品揃え幅」に加え、「行きやすい立地」「新しい店」もあがった。

このように、お客様は「この店は自分にとって良い店(求めている店)、良くない店(求めていない店)」と、個店魅力を評価する基準をもって、店を選んでいることがわかる。


図表3 「選ばれる店」マップ

2.選びたくなる店

それでは、その店における「選び」の状態について見てみる。「目的のものを選ぶ」というのは当然ではあるが、「目的のもの以外を思わず選んでしまったことがある」という人は、全体の94%もあった。では、どのような時に、「思わず選んでしまったか」をまとめたものが、図表4である。

「服飾・雑貨」「食料品」「飲食」ともに、「価格」が上位にあがったが、「価格」以外で見ると、「利用イメージを刺激される(美味しそう、素敵に見えそう)」「シーズン・旬を感じる」「新しい提案」「他にない」「新鮮」といったことが、共通して高くあがった。

「思わず選んでしまった」ことは、「選びたくなった」からであり、お客様の自主的な「選び」である。そして、このような「選びたくなった」お店に対しては「選び(ショッピング)の楽しみ」も高く、「また行きたい店となる」こととの相関性も強い。

そこで、次に、「また行きたくなる店」について、「来店したお客様の満足度」の視点から調査実例を交えながら、紹介をする。


図表4 「思わず選んでしまった」時

※本提言「個店価値の新創造 〜個店の魅力づくり」は、「営業力開発」誌 2009・No204号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:マーケティング・コミュニケーションズ)へ掲載されています。
誌面では以下の様な構成で続いております。

「個店価値の新創造 〜個店の魅力づくり」

U、ショッピングの楽しみを創る「接客」と「VMD」
V、個店の努力
W、「旬」を伝える店づくり <LUSH>
X、「発見」を伝える店づくり <東急ハンズ>
Y、「こだわり」を伝える店づくり <成城石井>
Z、「お客様起点」の人づくり <阪急阪神ビルマネジメント>
[、個店価値の創造


 
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