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デジタルな時代の新しいマーケティング戦略構築

 「デジタルな時代」である「情報ネットワーク社会」における消費者を真に理解しようと、(株)JMRサイエンスでは、一昨年より関西学院大学の井上哲浩助教授とともに、産学協同で「デジタルな時代の新しい消費者研究フォーラム」を立ち上げた。
 今回の論文は、「ITインパクト調査2002」に基づいて、現代の消費者像の理解の仕方と、それに対して企業が準備しておくべきマーケティング戦略構築のためのシステムについて議論させていただく。
 T章では、われわれの研究の経緯と現時点での成果を簡単に要約。U章では、井上助教授に、「価値」ベースのマーケティング戦略について問題を提起していただいた。V章では、われわれが開発、提案する「JMR_e-Core Value Scales」による消費者像を紹介。W章では、現代の衣・食・住・情報生活の実態を「ITインパクト調査2002」の結果より紹介。X章では、マーケティングと環境問題について、昨年よりフォーラムに参加していただいている玉川大学の青木道代助教授に執筆していただいた。Y章では、新しいマーケティング戦略構築システムについてご提案させていただいた。
 この研究をよりよいものにするため、多くの読者諸氏よりさまざまな角度からのご指摘、ご意見をいただきたいと考えている。(Email:impact@marketing.co.jp)
 なお、この論文は、研究フォーラム担当の(株)JMRサイエンス取締役である川島隆志が執筆を担当した。

T.デジタルな時代の消費者行動研究

 インターネットの普及は確実に進展している。平成13年12月現在、インターネット利用者は5,593万人(対前年比18.8%増)と推計され、人口普及率は、対前年比6.9ポイント増の44.0%となった。世帯普及率も対前年比26.5ポイント増の60.5%と全世帯の6割を超え、各世帯でもインターネット利用が急進している(「平成14年版情報通信白書」総務省)。まさしく本格的な「情報ネットワーク社会」である「デジタルな時代」になったといえる。さらに、需要の低迷、市場の縮小など、われわれを取り巻く環境は、日々変化している。これら環境変化に伴い、マーケティングの対象である生活者の消費行動・ライフスタイルも変容してきているのは周知の事実である。この変容をいち早く捉え、マーケティング戦略の策定・実行を継続できる企業が、優れたビジネスモデルを生み出せるのであろう。
 このような問題意識のもと、JMRサイエンスでは、一昨年に「デジタルな時代の新しい消費者研究フォーラム」を関西学院大学の井上哲浩助教授と共に産学協同で立ち上げた。昨年の成果は、「営業力開発2001 Vol.3」に掲載されているのでそちらも併せて参考にしていただければ幸いである。その後さまざまな分野で昨年の成果をディスカッションあるいは実験させていただいた。ご協力いただいた方々に、この場を借りてお礼を申し上げたい。本稿では、その後のディスカッションや実験を踏まえての研究成果を紹介する。

■研究の経緯

 われわれの研究を初めて聞く方のために、現在までの研究の経緯を記しておく。
 われわれの研究のスタートは、過去のライフスタイルに関する研究成果をレビューすることから始めた。
@村田他(1979)「ライフスタイル全書」に代表されるライフスタイルそのものの学術研究AAIO尺度などライフスタイルを測定するための尺度研究B山田(1999)「パラサイトシングル」など現代のライフスタイルを論じたものCトフラーなどの社会動向・未来予測の研究である。
 それらレビューを通じて、消費者行動の根底に存在し、生活者の消費行動を大きく規定している「価値観」に焦点を当てて議論していく必要があるという結論に達した。われわれの研究フレームワークは、図1のように示すことができる。
 すなわち、20世紀までの「工業社会」においては、ライフスタイルが理解できれば、その消費者行動もある程度は予測できた。しかし、現代の「情報ネットワーク社会」においては、その予測ができなくなってきている。それは、その間に介在している価値観、すなわち、われわれの言う「デジタルな時代の価値観」が理解できていないからではないかと考えた。価値観が理解できていないとは、いわゆる「常識」が理解できていないということであり、従来の枠組みでは現代の消費者行動を理解しきれなくなってきたということである。
 後述される井上助教授の問題提起論文にも指摘されているように、われわれは現在、「デジタルな時代」に真に対応した価値を測定する手段を持ち合わせておらず、まず、これに着手すべきだと考えた。そして、昨年はその価値観尺度(JMR_e-Core Value Scales)を開発することにした。
 その結果、大きく3つの価値観を測定する尺度を開発することに成功した。3つの価値観とは、「購買・選択行動を規定する価値観」「口コミ・iコミ行動を規定する価値観」「インターネット・サイバー行動を規定する価値観」であり、それぞれいくつかの「志向性」尺度で測定した。
 昨年の提言論文では、これら尺度によって「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」「ブランドマネジメント」「eコマースマネジメント」がより効果的・効率的にできるのではないだろうかということを提言させていただいた。

研究のフレームワーク(図1)

■本年度の研究成果

■開発した尺度の検証

 まず、昨年度に開発した尺度について、時系列でみたときにそれが本当に尺度として成立しているのかどうかを検証した。具体的には、昨年度と同様の方にアンケートを答えていただき、昨年と本年で各人の志向性がどの程度一致しているのか、バラつきがあるのかを検定(テスト−再テスト)するものである。昨年と同じ対象者は532人集まり、その結果をテスト−再テストした。テスト−再テストの結果は非常に良く、時系列に耐えうる価値観尺度となっていることがわかった。

■尺度の豊富化

 つぎに、取り組んだのが尺度の豊富化である。昨年までは、上記の3つの価値観「購買・選択行動の価値観」「口コミ・iコミ行動の価値観」「インターネット・サイバー行動の価値観」を6つの志向性によって測定していた。
 しかし、それだけでは現代の消費者行動を説明するのには十分ではなく不足感があった。それで測定項目の充実が必要であると考え、JMR社内でブレスト、ディスカッションを通じて、消費者の購買・選択行動の価値観を測定する項目として、「ステイタス性向」と称し、「ブランド追求志向」「エモーション感性追求志向」「自己実現追求志向」の尺度を追加開発した。また、インターネット・サイバー行動の価値観として「ネットとの関係維持志向」という尺度も追加した。
 衣・食・住生活について、それぞれの分野の消費者行動を明確にするセグメンテーションを抽出可能にする質問項目も開発した。

デジタルな時代の価値観(図2)

■尺度の実用アプリケーション研究

 最後に、われわれは、さまざまな尺度を手にすることができたが、それをどのように活用すればよいのか、そのアプリケーション開発が課題であったが、今回の研究でいくつかの実用例をつくることができた。
 ひとつは、ブランド戦略策定に関するものである。企業のブランドイメージを維持・形成するためには、ターゲット顧客にどう評価されたいかが重要なキーのはずである。これら尺度からそれがより明確になり、ブランドイメージを維持・形成するための活動計画に落とすことが可能となった。
 いまひとつは、STP→4P戦略デザインの設計に関するものである。これら尺度によってターゲットの購買・選択行動が予測可能となり、何にキーをおいて4Pを設計すればよいのかが分かる。つまり、4Pのデザインを効率的にサポートするツールにまで仕上がっているということだ。また、これは、新製品開発においてよりいっそうの機能を発揮し、さらには、これらの特徴を最大限に活用すれば、今まで以上にCRMを基本としたマーケティング・インテリジェントシステムが構築できるであろう。これについては、本稿の最後にご提案させていただく。

「デジタルな時代の消費者理解⇒4P策定の法則」フレームワーク

II.価値ベースのマーケティング戦略 マーケティング研究者からの問題提起

■変化するマーケティング環境

 マーケティング環境は大きく変化している。顧客サイドのみならずマーケターのサプライサイドも大きく変化している。マーケティング環境は、通常、法律に関する環境、社会・文化的環境、技術的環境、人口動態的環境、経済的環境、物的環境に大別される。これら全てのマーケティング環境に大きな影響を与えているのが、インターネットである。
 プロバイダー責任法や個人情報保護法などは、ヴァーチャル・コミュニティのあり方のみならず、インターネット・マーケティングとリアル・マーケティングの区別なく、ともにそれらのあり方を変えようとしている。ADSL、FTTHなどのブロード・バンドと呼ばれる高速通信回線に関するインフラ整備は、着実に普及している。オタクではない一般的なユーザーがインターネットのヘビー・ユーザーとしてかなりの割合を占める社会的な環境へと、マーケティング環境はシフトしている。動画のプログラムや広告がインターネットで配信されるといったマーケティング手段が、ブロード・バンドという技術に基づき徐々に試みられている。
 インターネットは、マーケティング環境の変化を引き起こしている。これに気づいていないマーケターはほとんどいないであろう。この変化しているマクロ的なマーケティング環境を変化させるのは、マーケターではなく、社会である。むしろマーケターは、マーケティング環境の変化を正しく認識し、競争戦略的に効果的に対応する必要性があるのである。
 この見地から、本論では、インターネット・マーケティングという意味ではなく、インターネットがマーケティング環境に与えた影響を価値という視点から整理し、これからのあるべきマーケティング戦略としての「価値ベースのマーケティング戦略」の重要性を紹介する。

■マーケティングの基本戦略:STPからポジショニング

 マーケティングとは、社会的・管理的過程であり、個人・集団が他者と製品や価値、物を創造し交換することにより必要としているものや欲しているものを満たす過程である、というのが一般的なマーケティングの定義である。このマーケティングの定義に基づき、マーケティング戦略マネジメントが行われている。通常、企業戦略を最上位に、そして事業戦略をその下位に置き、これら二つの戦略のもとに製品やブランドなどを管理対象とするマーケティング・マネジメントが行われている。マーケティング・マネジメント過程は、SWOTと呼ばれる強み・弱み・機会・脅威分析などの市場機会に関する分析から始まり、マーケティングの基本戦略であるSTP、すなわちセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングが行われ、4Pからなるマーケティング・ミックスのデザインへと続き、計画・組織化・執行・統制という管理過程を経る、というのが一般的である。
 マーケティング・マネジメントの基本戦略であるSTPに注目しよう。セグメンテーションは、市場の選好に関する異質性を考慮し、市場をいくつかの同質的なセグメントに区切ろうとする。その際の規準として、地域、人口密度などの地理的変数、年齢、性別、所得、世帯規模などの人口動態的変数、社会階層、ライフスタイルなどの心理的変数、ロイヤリティ、便益などの行動変数が用いられることが一般である。
 セグメンテーションにより市場がいくつかの同質的なセグメントに区分されたならば、次は標的市場の選択というターゲティングである。ターゲティングにおいて、三つの意思決定を必要とする。
 いくつのセグメントをターゲティングするかという標的セグメント数に関する意思決定が、第一である。
第二は、複数セグメントをターゲティングする場合に、同じマーケティング戦略を適用するかセグメントごとに異なるマーケティング戦略を適用するかという、市場に対する差別化対応に関する意思決定である。
 そして、競合企業のマーケティング戦略を考慮し、同じ手を打つ真っ向勝負の戦略でも、異なる手で自社の差別的優位性を活かすべく差別化戦略でも構築することができる。これが、競争企業に対する差別化戦略に関する意思決定である。
 そして、ポジショニングが行われる。ポジショニングとは、標的市場の心の中に独自の位置を占めるために、企業の提供物とイメージをデザインすることである。
 Ries and Trout (1982)の表現を用いれば、『ポジショニングは、製品から始まる。製品とはつまり、商品、サービス、企業、機関などで、人の場合さえある。・・・(略)・・・しかし、ポジショニングは製品に対して行うものではない。見込み客の心に対して行うものである。つまり、見込み客の心の中に製品をポジショニングするのである。』となる。つまり標的市場の顧客の心の中に、提供物の価値を埋め込むことがポジショニングなのである。
 STPはマーケティング・マネジメントの基本戦略であるが、このS→T→Pというやり方でよいのだろうか。有効なセグメンテーションのための規準は、特徴を測定できるかという測定可能性、収益を生むに十分な規模があるかという実質性、接近できるかという接近可能性、あるセグメントは他のセグメントと十分に異質的であるかという差別性、効果的なマーケティング計画を構築できるセグメントかという実行可能性からなる五つである。
 しかしながら、これら五つの規準全てポジショニングに依存している。ニーズの異質性を明確に簡潔に区別し測定する規準が望ましく、これはニーズの本源である価値に他ならない。価値に基づくセグメンテーションが可能ならば、価値に基づき接近可能となる。収益性や効果性は、価値の埋め込みそのものの結果である。つまりセグメンテーションを効果的に行おうとすれば、まずポジショニングを徹底的に検討しなければならないのである。
 ターゲティングにおける三つの意思決定に関しても、同様に、まずポジショニングである。市場に対して同質的なマーケティング戦略を考えるか異質的なものを考えるか、これこそポジショニングである。競合に対する差別化戦略の構築も、まさにポジショニングである。
 要するに、今、顧客の心の中に価値を埋め込むというポジショニングを中心とするマーケティング基本戦略の思考が要求されているのである(図1)。
 図1は、戦略事業単位がまず意思決定しなければならないのは、ターゲット・セグメントに対するポジショニングであることを示している。そしてマーケターが考えた、ターゲット・セグメントの心の中に埋め込む価値に対する反応を反映させるマーケット・アウトの思想によりマーケティング・ミックスがデザインされ、具体的なマーケティング戦略がターゲット・セグメントに対してなされなければならないのである。

■マーケティング戦略のベースとしての価値測定

 以上のように価値に基づくポジショニングを発想起点とするマーケティング戦略の構築において、鍵となるのが価値をどのように測定するかという問題である。
 価値測定に関する端緒的研究は、 Wells and Tigert (1971)やPlummer (1974)によるAIO尺度である。AIO尺度では、どのような活動 (activities)を行い、どのような興味 (interests)を持ち、どのような意見 (opinions)を持っているかに関する非常に多数の質問項目から、価値システムやライフスタイルを導出しようとする。
 AIO尺度の問題点は、尺度構成が非常にad hocなことである。すなわち、統一された尺度集合が用意されているわけではなく、またデータを収集した後にそれらをどう分析してどのような価値システムやライフスタイルを導出するかという統一化された分析手順が確立されていないのが問題である。つまり、研究者や調査者によって導出される価値に差があり、調査間や研究間で比較ができない。さらには同じ研究者による異時点間の調査でさえ、異なる価値が導出されるのが普通であり、一般性一般性に欠けるという致命的な欠点を保有しているのである。

ポジショニング・ベースのマーケティング基本戦略(図1)

 この問題点を克服する価値尺度として、三つあげることができる。第一のものは、VALS (SRI International, Mitchell 1983)尺度であり、第二のものは価値リスト (List of Values)と呼ばれるLOV(U. MI Survey Research Center, Kahle 1983; Veroff, Douvan, and Kulka 1981)尺度であり、最後のものはRokeach's (1973) Value Surveyと呼ばれるRVS (Rokeach and Ball-Rokeach 1989)である。
 これらを順に簡述しよう。これらの内、日本において最も活用されている尺度はVALSであろう。
 VALSはValue And Life-Style researchと呼ばれるものであり、あのMaslow (1954)の欲求5段階説と社会特性概念に基づいて開発された。元々の調査は、1635名の成人アメリカ人および彼・彼女の配偶者・同居者1078名により行われている。VALSは知名度が高いだけでなく、VALSIIに示されるように改良の努力もなされ、さらには日本語化され日本語を第一言語とする被験者を対象とした尺度であるJapan-VALSも開発されている。
 そしてインターネットのマーケティングへの多大な影響に対応するものとして、上記のVALSをInternet上での調査に適用したi-VALS(http://future-net.sric.sri.com/VALS/ques-nt.html)をあげることができる。しかしながらi-VALSは、VALSに包含される質問をインターネット上で容易に回答できるようにした程度の改良しかされていないといっても過言ではない。すなわち、VALSの結果抽出される9つの価値 (survivor、sustainers、belongers、emulators、achievers、I-am-me、experiential、societally conscious、integrated)に、インターネットを通じて調査対象となった被験者を単に類型化しようというものである。インターネット時代に特に変化が予測される消費者行動の側面に焦点をあてたというものではないことに留意すべきである。
 つまり、価値をベースとしたマーケティング戦略を構築することが重要であるにもかかわらず、マーケティング環境に大きな変化をもたらしたインターネットに真に対応する価値を測定する手段を、今、我々は持ち合わせておらず、早急に開発する必要があるのである。ここに、JMR e-Core Value Scalesの開発意義がある。

■JMR e-Core Value Scales

 インターネット環境下での顧客がもつ価値を、マーケティング環境変化を考慮し、より正確に測定するために、井上(文)、井上(和)、小野、西垣 (1995)が示す厳密な手順に従い、2000年8月にJMR e-Core Value Scalesを開発した。それらは、本格追求志向、コスト追求志向、時間効率追求志向、エンターテイメント志向、情報収集志向、情報発信志向であった。注目すべきは、全ての尺度がCronbackαによる信頼性係数において、0.7以上であり、十分な使用に耐える。言い換えれば、十分な信頼性を持って、変化したインターネット環境化において、顧客の価値を測定することができることを保証するものであった。
 今回2002年度に新たに調査した目的は、大きく二つある。
 第一に、2000年度に開発した六つの価値尺度のCronbackのα信頼性係数のみならず、テスト−再テストという更に厳格で補完的視点からの信頼性を確認し、開発尺度の頑健性を検討することである。
 第二に、2000年度に開発されたもの以外で、更にインターネット時代に必要であろう価値を測定する尺度を厳密な手順に従い開発することである。
 その結果、テストー再テストの信頼性係数である相関係数は、以下のとおりであった。
 ・本格追求志向は0.630
 ・コスト追求志向は0.628
 ・時間効率追及志向は0.642
 ・エンターテイメント志向は0.610
 ・情報収集志向は0.668
 ・情報発信志向は0.652
 αの場合0.7以上が経験的に高い信頼性があるとされる規準であるのに対して、テスト−再テストの信頼性係数の場合は0.6である。この経験基準を全ての六つの尺度は上回っており、十分な信頼性を持って、変化したインターネット環境化において、顧客の価値を測定することができることを改めて保証する結果となった。
 また今回新たに厳密な手順に従い、ブランド追求志向、エモーション感性追求志向、自己実現追求志向、ネットとの関係維持志向などの尺度が開発された。これら全ての尺度に関して。Cronbackのα信頼性係数は、0.8以上であり、新たに開発された尺度も十分な信頼性を持って、変化したインターネット環境化において、顧客の価値を測定することができることを改めて保証する結果となった。

■問題提起

 これからのマーケティング戦略は、顧客価値を起点とするポジショニングを中心としたものでなければならない。そのためには、インターネットにより大きく変化したマーケティング環境を反映した、厳密に正確に価値を測定できる尺度を持たなければならない。誤った尺度で誤った価値を測定しては、誤ったマーケティング戦略しか導出できない。厳密な手順に従い、厳密な信頼性を保有した価値尺度であるJMR e-Core Value Scalesは、今、必要とされるマーケティング戦略の基礎をなすものである。

井上哲浩
<経歴>
1996年 Anderson School of Management,UCLA,Ph.D. (Marketing)
1999年 関西学院大学 商学部 助教授
<主要論文>
「ヴァーチャル・コミュニティのマーケティング・マネジメント可能性」
商学論究49巻4号2002年
「An Approach to the Synthesis and Analysis of Incomplete Marketing Data」
International Review of Business, Number 5、2001年
その他多数

【参考文献】
・井上文夫、井上和子、小野能文、西垣悦代 (1995)、
『よりよい社会調査をめざして』、創元社
・Kahle, Lynn R., ed. (1983), Social Values and Social Change: Adaptation to Life in America. New York: Praeger.
・Kotler, Philip (2000), Marketing Management: Analysis, Planning, Implementation, and Control, Millennium ed. New Jersey: Prentice-Hall.
・Maslow, Abraham H. (1954), Motivation and Personality. NY: Harper.
・Mitchell, Arnold (1983), The Nine American Life Styles. New York: Warner.
・Plummer, Joseph T. (1974), "The Concept and Application of Life Style Segmentation," Journal of Marketing, 38 (January), 33-7.
・Ries, Al, and Jack Trout (1982), Positioning: The Battle for Your Mind. New York: Warner.
・Rokeach, Milton (1973), The Nature of Human Values. New York: Free Press.
・Veroff, Joseph, Elizabeth Douvan, and Richard A. Kulka (1981), The Inner American. New York: Basic Books.
・Wells, William D., and Douglas J. Tigert (1971), "Activities, Interests, and Opinions," Journal of Advertising Research, 11 (August), 27-35.

※ 本提言は、「営業力開発」誌 2002・No177号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:JMRサイエンス)に掲載されております。掲載文は以下のV〜Yに続いております。

III.消費者価値観を測定する新たな指標  「JMR_e-Core Value Scales」
IV.デジタルな時代の衣生活・食生活・住生活・情報生活
V.マーケティングと環境問題 −リサイクル行動促進に向けて−
(玉川大学経営学部 助教授 青木道代)
VI.デジタルな時代の新しいマーケティング戦略構築システム
 


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