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ブランドの拡大と強化 1.メーカブランドから、プロダクトブランド、サービスブランド、ショップブランドへ

欧米における「ブランド」は、商品の差異を明確化し、消費者に伝えることが主な役割である。「コカコーラ」「アリエール」「トロピカーナ」など、ブランドといえば、「プロダクトブランド」で語られることが多い。
それに対して、日本の場合は、「企業名」が、個々のプロダクトを包括する、消費者に選ばれる第一義の「ブランド」であることが多い。

企業規模が大きくなるに従い、異なる領域の商品にまで展開していく企業が多いが、日本では、全く異なる領域への拡大展開においても、プロダクトブランドではなく、企業名+商品分野という形での展開が多い。例えば、「カネボウ」という紡績メーカーが、食品、化粧品といった新しい分野に拡大する時のブランドも「カネボウの食品」「カネボウの化粧品」というようにである。(これらを、「ブランド拡張(brand extension)」と分けて「ブランド伸長(brand stretching)」とすることもある)

ところが、昨今、これらの「メーカーブランド」から、「プロダクトブランド」によるブランド確立をしていこうという動きが増えている。その背景は様々にあるが、消費者の選択行動の変化が、その1つにあげられる。これまでは、メーカー名で選んでいた消費者が、自分の選択眼を持ち、メーカー名だけでなく、いろいろな要素から、商品を選ぶようになってきている。

インターネットの普及により、商品選択の為の情報を、検索やBBSで得て、自分の基準で選ぶことが出来るようになったことも一因だ。
図表4
また、メーカーのブランド力よりも、流通のブランド力の方が強いという状況も出てきている。そこで、新たに「メーカーブランド」以外で、消費者に差別化を伝えていく為には、「プロダクトブランド」を強めていくことも重要になってきているのである。

更に「サービスを選び、商品はそれに付随して選ぶ」という消費者も増えている。「サービスブランド」も重要な「ブランド」の1つとなってきている。
「メーカーではなくショップで選ぶ」「メーカーではなく、ショップが開発した商品を選ぶ」「メーカーはどこでもよく、そのショップが選んで店に置いているものがいい」といったように、「ショップブランド」も重要な「ブランド」の1つとなってきている。

そこで、本特集では、「プロダクトブランド」「サービスブランド」「ショップブランド」に絞って考察をしていくこととする。「ブランドマーケティング」や「ブランディング」については、多くのことが語られているが、ここでは、企業側の「このようにブランディングをしたい」という思いとは別に、消費者にはどのようにそれらが届いているのか、という視点を加えていく。

ブランドの拡大は、そのブランドの持つ資産を活かし、1人の顧客に複数の同ブランド商品を購入する機会を拡げたり、そのブランドがそのカテゴリーでは取れなかった顧客を、同ブランドで異なる展開をすることで新規顧客を取る機会をつくることができる。
ブランド拡大による展開は、新規ブランドを創出するのに必要なコスト、そして育成するコストと時間を省くことが出来る。

そして、それら、拡大された複数の商品、サービス、ショップにおけるプロモーション活動は、冠ブランド(元ブランド)のプロモーションにもなり得る。消費者が目にする機会も増える。結果、そのブランド全体に「勢い」を感じさせる効果も期待できる。

鳥居(1996)が「ブランド力を測る力」として、
(1)広さ…どれだけ多くの人に支持をされているか
(2)深さ…どれだけ深く支持をされているか
(3)勢い…上り調子か

という3つの構成要素をあげているが、これらに照らし合わせてみても、ブランド拡大は、冠ブランドの資産を活かすことで、「広さ」「深さ」「勢い」を得やすくなり、結果的に高い「ブランド力」を創出できる可能性がある。

ところが、ブランド拡大には成功しているものと、していないものがある。成功する=消費者に届いていることでもあると考え、「消費者に認識されている拡大ブランド」を知ることで、ブランド拡大の成功のパターンを探索する。
探索の方法として、1つのプロダクトブランド、ショップブランド、サービスブランド(冠ブランド)が、異なるカテゴリーや異なるチャネルに拡大展開されているものを、消費者からあげてもらい、消費者へのブランド拡大到達度をはかった。(調査は弊社ネットアンケートopi-netモニター1000人)

※ブランド拡大(エクステンション)の定義は様々にあるが、同カテゴリーにおける展開は、グループ展開の1つと考え、ここでは対象外とした。(例えば、「キリンラガークラッシック」と「キリンラガーブルーラベル」は対象外)
※市場にはここに示したもの以外にもブランド拡大の事例はあるが、消費者からあがったもの→消費者に到達しているもののみをあげた。但し、展開する会社名については、弊社で調べて加筆したものもある。また、現在は、展開をやめているものも中にはあるが、消費者に認識されている(到達している)ものとして、ここではあげた。
※メーカー名ブランド(一般カテゴリー名称)のみでプロダクトブランド名(呼称)がないものは、ここでは対象外とした。また、メーカー名が同じで異なるプロダクトブランド名のものも外した。(例えば、永谷園の「ふりかけ」と、永谷園の「すし太郎」等)
※ネット展開は、「異なるチャネル」という認識が低かった為、ここでは、「異なるチャネル」として含まなかった。
※キャラクターやデザイナーブランドによるカテゴリー拡大商品は含まなかった。(例えば、「ポケモンパン」と「ポケモンガム」、「バーバリのハンカチ」と「バーバリの食器」等)

【参考文献】 鳥居直隆 「ブランド・マーケティング」(1996)


2.プロダクトブランド、サービスブランド、ショップブランドの拡大(エクステンション) −顧客達成度からそのエクステンション力を測る−

プロダクトブランド

プロダクトブランドは、様々なパターンがあり、どれをプロダクトブランドと考えるのかは難しい。というのは、もともとのプロダクトブランドが拡大していって、様々な商品カテゴリーへの展開となっているメーカーが多いからだ。例えば、味の素という会社は、「味の素」という調味料素材から出発して、現在は冷凍食品、その他調味料など、様々な展開をしている。「味の素」という会社名=プロダクトブランド名の商品もあるし、「味の素の冷凍食品」がプロダクトブランド名の商品もある。また、プロダクトブランド名+メーカー名で1つのブランドとして打ち出している商品も多い。

図表4
プロダクトブランド表現 プロダクト例 傾向
(1)メーカー名+一般名称(プロダクトブランド名は無し) キューピーマヨネーズ、キッコーマン醤油、味の素冷凍食品、グンゼ靴下、トンボ鉛筆、YKKサッシ、オムロン体温計 ・商品間の差を顧客に伝えにくいもの・商品選択は一般名称、メーカー名が優先するもの
(2)メーカー名=プロダクトブランド名 味の素、コカコーラ、グリコ、ヤクルトカルピス、リーバイス、レゴ ・メーカー起業の最初のプロダクト名・単品ブランドメーカー
(3)メーカー名+プロダクトブランド名 ハウスフルーチェ、永谷園すし太郎、サントリーボス、オリンパスキャメディア、積水ハウスシャーウッド、資生堂エリクシール ・プロダクトブランド名だけでは商品が想像できないもの・商品選択はメーカー名が優先するが、シリーズとしての差を消費者に伝えたいもの
(4)メーカー名+プロダクトブランド ソーニーバイオ、ソニーヴェガ、トヨタカローラ、任天堂ゲームキューブ ・シリーズ名(上記B)だが、プロダクトの特徴・差別性が伝わるにつれ、プロダクト名だけになってくるもの
(5)プロダクトブランド名(メーカー名は表にあまり出ない) エコナ、ユンケル、サロンパス、ドクターグリップクリネックス、サランラップ、ムーニーマン、化粧惑星 ・原料・素材・効能に差別性のあるもの・顧客層が限定されるもの・メーカー名では商品イメージが逆に伝わらないもの

先にも述べた様に、欧米に比べ、日本の場合は、メーカーブランドが強い為、メーカーブランド×プロダクトブランドという組み合わせでのブランド表現が存在する。それらをまとめたものが、図表2である。
これらを見てみると、独立したプロダクトブランドとして表現されている商品ほど(図表2-(5))特徴的で、差別力が高い商品である。逆に、プロダクトブランドがついていない商品ほど(図表2-(1))、他の競合商品との差がつけにくいものとなっている。但し、他の競合商品との差がつけにくく、メーカー名でも差がつけにくい場合は、逆に、プロダクトブランド訴求を積極的に進めるものもある。(図表2-(5)下段「クリネックス」等)
そこで、ここでは、図表2-(3)〜(5)(一部図表2-(2)の単品ブランド含む)のプロダクトブランドで、消費者に届いているブランド拡大は何かを見ていく。図表3(次頁)は、上記の定義に従い、複数の消費者から、「冠ブランド→ブランド拡大商品で思いつくもの」としてあがったものをまとめたものであり、これらを分析すると以下のようになる。

食品・飲料
最も多くの他カテゴリーへのブランド拡大があったジャンルである。但し、それらのブランド拡大商品は、あまり長く継続的な展開はされず(冠ブランドは継続的に販売されていても)、入れ代わりが激しい。
ブランド拡大パターンを見ると、その大半が、自社がすでに展開し、販売店におけるフェースを持っているジャンルである。例えば、グリコの「クレアおばさんシリーズ」。メインはカレーとシチューであるが、全く異なるジャンルであるクッキーへの展開をしている。但し、グリコは、カレーも菓子も、既にフェースを持つジャンルである。
逆に、フェースを持っていないジャンルへの展開については、商品としてはブランド拡大となっているが、実は製造メーカーは、既存フェースをそのジャンルで持っている他メーカーというケースが多い。特に、飲料が冠ブランドとなり、菓子(キャンディ、アイスクリーム)を展開している事例が多い。例えば、サントリーは、なっちゃん、ダカラといった多くの飲料のプロダクトブランドを持っており、それらブランドのキャンディへのブランド拡大展開がなされている。が、キャンディの製造発売元は、ロッテなどの菓子メーカーとなっている。過去には、サントリーから、キャンディを発売していたことも、あったが、現在は行っていない。

こういった傾向が多い中、「エコナ」は異なった展開を行っている。「エコナ」を製造している花王は、食品の分野でのフェースは持っていなかった。それを、「エコナ」という差別性のある素材と地道で継続的なブランド浸透活動により、食用油でフェースをとり、さらに、他社食用油メーカーがフェースを取っているドレッシング、そしてマヨネーズまでプロダクトブランドを拡大した。そして、「エコナを使ったサッポロ一番」のように、すでにプロダクトブランドが確立しているロングランのブランドに、「エコナ」を素材ブランドとして付与し、「エコナ」自体も、「エコナを使ったプロダクトブランド商品」の価値も高めるという、Wブランド効果を出している。実際、これら「エコナ」を使用した商品を購入している消費者に聞くと、Wブランド効果(コ・ブランド)で選んでいる人が多い。「インテルインサイド」や「ゴアテックス」のように、成功している事例はあるが、食品・飲料業界では、あまり例がなかったことであり、この業界においては、新しいブランド拡大のパターンである。
また、食品・飲料ではあるが、これまでにはなかった新しい「機能性食品」というジャンルにおいては、カテゴリーを超えたプロダクトブランド展開がされている。「カロリーメイト」「ウィダー」等、複数のメーカーが、カテゴリーを超えた商品へのブランド展開をしている。


ジャンル カテゴリ メーカー名 冠プロダクトブランド名 拡大ブランド名(異なるカテゴリー) 拡大チャネル(異なるチャネル)
食品 調味料加工食品 花王 健康エコナ(健康油) 健康エコナ(ドレッシング・マヨネーズ)[健康エコナを使ったブランドマークがつく]サッポロ一番 おいしいラーメン (サンヨー食品) 、ネオソフトEブレンド(雪印乳業)、シーチキンL・Lフレーク・シーチキンマイルド(はごろもフーズ) 、カレー吟味(ハウス食品)  
味の素 Cook Do(中華調味料) Cook Do Korea!(韓国調味料)、Pasta Do(パスタ調味料)  
グリコ クレアおばさんシリーズ(カレー、シチュー) クレアおばさんシリーズ(インスタントスープ、クッキー)  
日清製粉 青の洞窟(パスタ) 青の洞窟(パスタソース、リゾット)  
菓子 森永製菓 MARIE(ビスケット) マリービスケットサンド(アイスクリーム)  
森永製菓 小枝(チョコレート) 小枝アイス(アイスクリーム)  
森永製菓 チョコボール(チョコレート) チョコボール(アイスクリーム)  
森永製菓 ミルクココア ミルクココアバー(アイスクリーム)  
森永製菓 ミルクキャラメル ミルクキャラメルモナカ(アイスクリーム、プリン)  
不二家 ミルキー(キャンディ) ミルキー(チョコレート、パン、アイスクリーム) 不二家ケーキショップ、レストラン(直営、FC)
ロッテ ガーナ(チョコレート) ガーナ(ミルクココア)、ガーナ(アイスクリーム)  
乳製品 明治乳業 ブルガリアヨーグルト(ヨーグルト) ブルガリアヨーグルト(飲料)、ブルガリアヨーグルトキャンディー(菓子:明治製菓)  
機能性食品 大塚製薬 カロリーメイト(健康食品) カロリーメイト(飲料、ゼリー)  
森永製菓 ウィダー(健康食品) ウィダー(プロテイン、飲料、ゼリー、タブレット)  
飲料 清涼飲料 タケダ食品工業 C1000タケダ(健康飲料) C1000タケダ(キャンディ:味覚糖、ロッテ)  
サントリー なっちゃん、ダカラ、デカビタ、はちみつレモン、CCレモン(飲料) なっちゃん、ダカラ、デカビタ、はちみつレモン、CCレモン(キャンディ:ロッテ等)  
カルピス カルピス(飲料) カルピスアイスバー(アイスクリーム:ロッテ)  
茶飲料 サントリーと福寿園 伊右衛門(茶飲料) 伊右衛門(茶葉ティーバック)  
キリンビバレッジ 午後の紅茶(紅茶飲料) 午後の紅茶 (菓子:カバヤ食品等)  
医薬品 武田薬品工業 アリナミン(ビタミン剤) アリナミンVドリンク(栄養ドリンク)  
日用品 オーラルケア サンスター Ora2(ハミガキ剤) Ora2(マウスウォッシュ・マウススプレー)  
サンスター GUM(ハミガキ剤) GUM(歯ブラシ、電動ハブラシ、歯間クリーナー)  
男性ケア用品 花王 サクセス(男性用育毛剤) サクセス(シェイビング、ヘアケア、カラーリング)  
資生堂 uno(男性用ヘアスタイリング剤) uno(洗顔剤、シェイビング)  
資生堂 ジェレイド(男性用ヘアスタイリング剤) ジェレイド(スキンケア、フレグランス、ケアキット)  
マンダム ギャッツビー(男性用ヘアスタイリング剤) ギャッツビー(スキンケア、フレグランス、シェイビング)  
女性ケア用品 日本盛 米ぬか美人(スキンケアローション) 米ぬか美人(シャンプー、リンス、トリートメント、入浴剤)  
日本リーバ PONDS(洗顔メイク落とし) PONDS(美白ローション・エッセンス)  
日本リーバ ダヴ(洗顔石鹸) ダヴ(シャンプー、リンス、ハンドソープ)  
花王 ビオレ(洗顔石鹸) キュレル(入浴剤、制汗剤、ファンデーショシート(制汗剤)  
花王 キュレル(洗顔石鹸) 植物物語(洗顔石鹸、シャンプー、リンス、化粧水・乳液)  
石鹸 ライオン 植物物語(石鹸) 植物物語(洗顔石鹸、シャンプー、リンス、化粧水・乳液)  
ライオン キレイキレイ(ハンドソープ) キレイキレイ(除菌スプレー、生ゴミ消臭スプレー)  
消臭芳香剤 P&G ファブリーズ(消臭+除菌剤) クルマ用ファブリーズ(カー用品)、ファブリーズハウスダストクリア(掃除用品)  
家電・PC 家電 トヨタ自動車、コクヨ、松下電器産業、江崎グリコ、近畿日本ツーリスト WiLL(車、文具、家電製品、菓子、旅行パック)   『WiLL SQUARE ARiAKE』 (直営店)
三洋電機 it's(一人暮らしに必要な家電製品のブランド) it's(冷蔵庫、洗濯機、コーヒーメーカー…)  
東芝 あてはか(ライフスタイルとの調和の追求をコンセプトとした新しい家製品) あてはか(レンジ、コーヒーメーカー、ポット、オーブントースター、IH釜) 家電店とは異なるインテリアショップ
PC アップルコンピューター iMac(PC) iPod(デジタルミュージックプレーヤー)  
カメラ 富士写真フィルム チェキ(インスタントカメラ) チェキプリンター NP-1(「カメラ付き携帯電話用インスタントプリンター)  
その他用品 玩具 レゴジャパン レゴ(ブロック) レゴマインドストーム(ロボット)、ゲームレゴ(ゲーム)、コカコーラレゴ(食玩)、レゴグッズ(雑貨)  
タカラ チョロQ(ミニカー) チョロQグッズ(雑貨)、チョロQカー(電気自動車) チョロQモータース(ネット、専門直営店)


日用品
「ハミガキ関係」はハミガキ、ハブラシ、歯間クリーナー等、オーラルケア全体に展開した「GUM」がブランド拡大の先駆者であり、「GUM」以外でもこれらの展開をしているブランドはあるが、消費者にはあまりそのイメージがなかった。また、「Ora2」も、歯のクリーン剤、器具に加え、マウスウォッシュまで展開が広がり、消費者にも認知がなされていた。
「男性ケア用品」は、「スキンケア剤」「シェイビング剤」「ヘアケア剤」まで、ブランドを拡大展開しているものが多かった。

それに対し、「女性ケア用品」の場合は、「洗顔剤」「スキンケア剤(ローション等)」「ヘアケア剤」は、別のブランド展開をしており、各々、カテゴリーで独立したプロダクトブランドとなっている。選択行動において、女性の方が、1つ1つのカテゴリーを細かく検討する傾向が強いことにも起因するのだろう(但し、冠ブランドが「洗顔石鹸」の場合は、「化粧水」「シャンプー・リンス」にも拡大ブランド展開しているものが多い)。
その他の「日用洗剤類」は、ブランド拡大をしているものが少なく、例えば、「漂白剤」「洗濯石鹸」「食器用洗剤」…と洗剤の種類別に殆どプロダクトブランドが異なっている。
その中で、少し、他社と異なる展開をしているのが、「花王」の洗顔石鹸「ビオレ」「キュレル」。両方とも、制汗剤まで(キュレルは更に入浴剤まで)展開をしている。
また、新しい展開を見せているのが、P&Gの「ファブリーズ」。さっとひとかけの手軽で安全な消臭剤・除菌剤として、好調な販売の伸びをしている。目的は同じだが、ジャンルがカー用品という異なる棚(売場)でのブランド拡大商品として、「車用ファブリーズ」がある。そして、つい最近、掃除用品という異なる棚を狙う「ファブリーズハウスダストクリア」という商品を発売した。これらの展開により、例えば、普通のファブリーズでもカー用品店で数多くフェースを取るといったように、チャネル開拓までも、これらのブランド拡大によって成している部分もある。

家電・PC
「家電・PC」は、他ジャンルと比べ、プロダクトブランドを確立することに非常に注力されているが、他カテゴリーへブランド拡大をしているものは殆どなく、各カテゴリーで明確に分かれている。
少ないながら、ブランド拡大の事例として、「iMac(PC)とiPod(デジタルミュージックプレーヤー)」や「チェキ(インスタントカメラ)とチェキプリンター NP-1(「カメラ付き携帯電話用インスタントプリンター」)があがった。これらは、両方とも、使う顧客層幅が狭く、特徴的な商品であり、また、ブランド拡大の商品カテゴリーもこれまでにない新しいものである。従来型商品は、消費者も選択基準を持ち、個々のスペック比較で購入する為に、ブランド拡大は難しい部分もあるが、この2例のような新カテゴリー商品であれば、消費者に浸透している冠ブランドをつける方が、まず認知のハードルが低くなり、狭いターゲット顧客層の注視率を高める効果が出せる。
また、冠ブランドを使って他カテゴリーにもブランド拡大するということではなく、「デザインシリーズとして共通ブランドをつける」形がある。サンヨーの「it's」シリースをはじめ、最近では、東芝の「あてはか」シリーズがある。

その他用品
玩具では、教育玩具・ブロックの「LEGO」が、ゲーム、ロボット、食玩、グッズなど、様々な拡大展開をしている。また、タカラの「チョロQ」も同様に、食玩、グッズ、そして電気自動車まで、ユニークな展開も行っている。
玩具はジャンルを超えても、「遊び心」という共通のつながりで、ブランド拡大の展開が出来、消費者も、その展開を自然に受容することができるのであろう。
ちなみに、その他用品には、「文房具」「スポーツ用品」などがあるが、プロダクトブランドを他カテゴリーにまで拡大しているものは、あがらなかった。
更に、この中から、新製品や特徴的なものについて、その評価をアンケートにて聞いた結果が図表4、5である。

ブランド認知率(図表4)
冠ブランド商品と拡大ブランド商品の両方の認知が高かったのは、「エコナ」「C1000タケダ」。どちらも差別性のある機能性素材によるブランド拡大商品である。
次に高かったのが、「ビオレ」「ファブリーズ」。どちらも、それらのカテゴリーにおける先駆者ブランドであり、積極的な広告活動のもとに展開がなされているブランド拡大商品である。
図表4

エクステンション力の高さ(図表5)
「冠ブランドがつくことで、よい商品と思う」人が多かったものは、「エコナとエコナマヨネーズ」「ガーナチョコレートとガーナアイス」。「エコナ」「ガーナ」ともに食品。冠ブランドが、安心やおいしさの印象の向上に貢献している。一方、「Ora2」「ビオレ」「ファブリーズ」のような日用品は、それらの食品より少し低くなる。また、「子供用レゴ」と「レゴゲーム」は、両方のプロダクトブランド認知者は少ないが、知っている人には、ブランド拡大は効果が高いと思われている。そこで、ケーススタディとしてレゴを取りあげ、詳しく分析をした。(13頁)

図表5

※本提言論文は、「営業力開発」誌 2004・No183号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:マーケティング・コミュニケーションズ)に掲載されております。掲載文は以下のU(サービスブランドおよびショップブランドの項)〜Wに続いております。

U.プロダクトブランド、サービスブランド、ショップブランドの拡大(エクステンション)
−顧客到達度からそのエクステンション力を測る−
V.ケーススタディ
  1.プロダクトブランド  単品ブランドでの拡大事例 「レゴ」
  2.サービスブランド   コアブランド価値を結んだ拡大事例 「セコム」
  3.サービスブランド   流通とサービスの複合展開事例 「ダイヤモンドシティ」
  4.ショップブランド    多形態ショップによる拡大事例 「靴下屋」
  5.ショップブランド    多店舗展開の複合ショップ事例 「アフタヌーンティ」

W.考察
ブランドの拡大 〜「顧客」と「ブランド」の一体観〜

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「情報差別化で売る 」
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コラボレーションによる売場活性化
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顧客とのリレーションショップの再構築
流通激変期のアクセスマーケティング




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