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政府が「景気回復」を宣言しながらも、日本の「消費」は依然として振るわない。ヒット商品こそ、「脱デフレ・脱低価格」のトレンドが見られるものの、「特売価格・新店オープン価格」は、底なしの状態である。
家計調査・全世帯平均消費支出では、6月・8月・11月と、名目で昨年を上回る状況であったが、通年では前年を下回る見通し。勤労者世帯では、実収入が1年8ケ月連続で減少している。今後の「負担増の時代」を巡っての消費抑制は、とても「回復」といえる状態ではない。
当然、この影響を小売業は受けている。日本チェーンストア協会での「スーパー既存店売上高では、11月に6.8%のマイナスと大幅な減少となっている。CVS既存店においても、11月まで9ケ月連続のマイナスである。
各チェーンは新規出店の力によって、通年で増収見込みのところが多いが、それでもダイエー、西友、東急、いなげやは減収見込みである。
唯一、「回復基調」なのが「薄型TV、DVDレコーダー、デジタルカメラ」の恩恵を受けた「家電量販」で、NEBAでも8・9・10月と3ケ月増収に転じた。
こうした継続する「厳しい時代」にあって、小売業の様相は「生き残り」をかけて大きく転換してきている。表面的には、「規模の経済」をもとめての、「メガ戦略」である。




もとより日本の小売り構造は、欧米に比べ、群雄割拠の状態で、寡占化度合いは極めて低い。「商店街」を構成する業種小売業の数は、減少しているとはいえ膨大であり、「チェーン小売業」も上位500社が、全小売販売額に占める割合は46%である。(日経新聞社.02年「日本の小売業調査」)
例外的なのはCVSと家電量販で、ビックチェーンの寡占化が、ヒト桁台の企業で進行している。
2000年に入って、こうした構造に大きな変化がでてきた。「合併・提携」という形で、グループを構成し、一挙に「メガグループ」を構成しようとする動きである。(詳しくは各業態別動向参照)
特にイオングループの動きは、多くの業態にまたがっている。
ドラッグでは、ツルハ、スギ薬局などと「ウエルシアグループ」を形成し、スーパーではマイカル、ヤオハン、寿屋の支援をはじめ、いなげや、カスミに資本参加している。さらにホームセンターでもサンデー、ホーマックに資本参加し、特にサンデーとはスーパーセンター構想で協調している。
イオンの視野に「外資系小売業」、特にウォルマートがあるのは確かであろう。「一人勝ち」のパワーと同時に、徹底したローコストオペレーションで収益率を上げるというモデルを見習い、グローバルな戦いを勝ち抜く戦略である。その戦略は「グローバル10(世界の10位以内に入る)」である。
イオンの他にも「メガグループ化」を巡る動きは激しい。家電量販ではデオデオ・エイデンをはじめとする「5社連合」、ドラッグでは「マツキヨ連合」「カワチ・サンドラ連合」、ホームセンターでは「ホーマック・カーマ・ダイキ連合」等々である。
こうしたグループ化の進展は、当然「規模の経済」メリットを追求している。どちらかと言えば「メーカーの販促費」で勝負している日本の小売業にあっては、メーカーからのコスト支援の多寡は「規模」によるところが大きい。
さらに、スクラップ&ビルドの投資においても「資本の巨大化」がモノをいうであろう。
いずれにしても、日本の小売業において欧米並みとはいかないまでも「資本の寡占化」が徐々に進行している。



「メガグループ化」の狙いに、ナショナルブランドに依拠しない、「専用商品」の獲得があることも間違いではない。
イオンウエルシアグループでは、既に薬品メーカーにPBの要請を強化しており、食品・雑貨メーカーに対しても「オリジナルな企画品」の要請を行っている。「マツキヨ連合」でもPBの開発要請が出されている。
また、「ホーマック・カーマ・ダイキ連合」も三井物産と共同で「DCM」を設置、PB商品の開発・調達を進めている。
「オリジナル商品」で最も進んでいるのはCVS、特にセブンイレブンである。既に売上げの半分以上が「脱NB」、つまり「専用商品」である。さらに家電量販でも「専用商品」の比率が20%近くになっており、今後その比率を4割強に上げようとしている。
メーカーにとって驚異になるのは、先に述べた「資本の寡占化・規模の圧力」だけではない。小売業が「専用商品・PB商品」の構成比を上げることによる「NB」の地位低下、同時に「商品開発」の主導権を小売りに握られることにある。
所詮「PB」の場合は、何度も、その挫折を見ているだけに、それに、これまではPB要請を、受ける・受けないという判断が、メーカーにあっただけに、静観することもできた。
しかし、昨今の「専用商品」は、大手メーカーに、場合によっては「ブランド」を借用されてのオリジナル化である。
この領域に積極的に参画するかどうかで、そのチェーン・グループに対する自社(メーカー)の売上げは大きく異なってくる。
今、数多くのメーカーが積極的に「専用商品」の開発に参画し、むしろそのことをバネにして、新たな価値を顧客に提供しようとしている。CVSの「専用ブランド」は、化粧品・サプリメント・飲料・ビール等に拡大してきている。
逆に言えば、小売りは大手メーカーに「NB」と同じ価値を顧客に提供するにふさわしい「規模」を狙っているとしても間違いではない。
家電量販では1挑円がそのハードルと言われ、「5社連合」も、その規模を求めている。家電・PCで「1兆円」といえば、全マーケットの10%強に当たる。



家電のヤマダ電機は今3月期でほぼ「1兆円」近くに達すると思われる。
家電量販に習って「1兆円」というハードルを基準にすれば、それを超えているのは、イトーヨーカ堂、イオン、ダイエー、高島屋、ユニー、西友グループしかない。
今後について、「1兆円」を超えるメガグループが相次ぐかどうかであるが、例えば「マツキヨ連合」は、合計して1000店、4000億のレベルである。
「ホーマック・カーマ・ダイキ連合」は3社で、業界1位のカインズの2倍となり4000億である。
数字的に積み重ねれば「1兆円」も見えてくるかもしれないが、同業態での競争もあり、素直に右肩上がりを予測できない。
そこで、各業態グループは、異なる業態のチェーン企業との提携を進め、特に「業態集積」の高い商業施設の開発を強化している。
この方向、イオングループの戦略をトレースしているとしても言い過ぎではない。「スーパーセンター」構想もその一環である。カインズはグループ会社であるベイシアとスーパーセンターを開設している。
もちろん、異業態連合での商品開発・調達も進むであろう。マツモトキヨシは、イズミと、共同仕入れで提携した。「メガグループ化」は、業態の壁を超えて広く、しかも急速に進行している。



03年の小売業の不振について、「冷夏・暖冬」がその要因と言われている。ところが、昨年は不思議な天候であった。真夏の8月まで冷夏であったが、9月の平均気温は例年を大きく超えた。冬も12月中旬まで「暖冬」であったが、その後、冷え込む日が続いた。
その結果、8月に殺虫剤など季節商品が返品の山となりながら、9月に「欠品」になるという現象があちこちでおきた。冬は、生産調整に入った暖房機・ストーブが12月後半から欠品状態になった。
「冷夏・暖冬」が不振の要因ではない。気候の変化に対応できない「在庫ロス」と「機会ロス」の2重のロスが、不振を生んだのである。
これは、「規模の経済」とは違い、オペレーションの欠陥である。日本の商談は、準備がよいと言えばそれまでであるが、かなり先々に物事を決めている。特売・セールの商談は遅くても2ケ月前である。新製品の導入となると3−4ヶ月前である。それに「専用商品」がからむと、もう半年前から準備がなされている。これに対して先のような、リアルタイムなオペレーションは、実に脆弱である。商談はできても商品がない、ということがすぐ起きる。
何も、瞬時のオペレーションだけではない。本部商談こそ、先のように「準備のよい」結論がだせるのだが、各店配荷となると心許ないチェーンが一杯ある。商品を店頭化するというだけのオペレーションでも不十分な「チェーン・オペレーション」が日本の小売業の実態でもある。
効率を測るひとつの物差しになる「人時生産性」では、「従業員1人当たり営業利益」でいうと、トップはセブンイレブンである。1人当たり1761万円の営業利益がある。次いでヨドバシカメラ、サークルケイ、サンクスと続き、5位に紳士服のワークマン、さらにファミリーマート、ローソンとなる。
生産性の高い上位をCVSが占めている。そして、この生産性で動かしている店舗は、セブンイレブンで1万店である。ちなみにドラッグで一番人時生産性の高いチェーンは、サンドラッグで14位、金額にしてセブンイレブンの1/4である。そして店舗数は200店弱である。ホームセンターではカインズが55位で、店舗数130店である。(04年日経新聞「日本の小売業調査」)
ローソンやファミリーマートを含め、6000〜1万の店舗をオペレーションして、効率を上げているCVS、それに比較し数百店舗のレベルでの他の業態BIG、同一には比較できないにしても、オペレーション効率の差は歴然としている。
問題は、こうしたCVS以外の業態BIGが、合従連衡でメガグループを構成したとして、それに見合ったオペレーション能力は十分なのか、という点である。
情報システム、物流・配送に留まらず、先に述べた商品開発においても、CVSの専用商品のように改廃スピードが、やたら短い期間で行われることについていけるのかどうかである。小売グループも、また、メーカーも、である。



規模に対するオペレーションの遅れは、情報技術の遅れでもある。SCMの構築、自動発注・補充においても、一番肝心な「需要予測」のシステムが不十分であれば、物流は過剰と欠品の繰り返しとなる。ハイ&ローの政策が、こうした「需要の予測」の障害になっているとしてEDLP政策を強調するチェーンは多いが、瞬時の「競争価格」によって、それは反故にされる。
ポイントセールの導入で、一挙に進んだ「顧客情報」についても、それを活用しているというケースまだまだ少ない。
インターネット、バーチャルショップなど、あれほど騒がれた「顧客とのITコミュニケーション」についても、まだ、大きな成果とはなっていない。
99〜03年で2.5倍の成長を遂げ1200億に達したアスクルと比較すると、本当に「小売業」は、顧客の満足と支持を得られるのかどうか、そのための情報技術について、どれだけ集中的に、真剣に取り組むのか、その疑問が残る。



先に、メガグループの狙いに商品開発・調達があるとした。しかし、問題は、それを顧客にどう届けるのかという政策である。
各チェーンのオペレーションにおいて、最も重要で、かつ欠落しているのが、この「顧客価値の提供」のオペレーションであり、そのための情報技術である。
その意味では、各チェーンが「売場の活性化策」や、「顧客とのコミュニケーション」を強化し始めている点は注目して良い。例え情報技術の進化が伴わなくとも、「仮説と検証」を繰り返すというスタンスに立ってきているということだけは間違いないようだ。(具体的には各業態動向参照)
実は、この試みは、メーカー・卸にとっても、競争優位を生み出す機会にも成る。
規模の「メガ化」と、「専用商品」の攻勢という、メーカー・卸にとっては利益を危うくする環境が進む時代に、メーカー・卸にとって小売企業の課題・弱点を協働して補いつつ、顧客からの支持を得る競争が始まっている。それがメーカーの大きな飛躍に繋がる。





2003年のGMS、SMの中間期決算は、冷夏の影響もあり、各社とも非常に厳しいものとなっている。
特に大手GMS4社はイオンがかろうじて増収となったものの、他3社は減収減益、イトーヨーカ堂でさえも39.3%の減益と大きな痛手を負った。ダイエーは売上で1割、利益で4割を超える落ち込みとなっており、単体売上でイトーヨーカ堂を下回る予測になっている。西友も厳しい状況が続き、経常赤字におちいっている。
一方、地方のGMSは好調。イズミヤ、平和堂、フジが増収増益となっている。
SMは食品部門を中心とすることで不況下にも増収増益を続けてきたが、ここに来てオーバーストア化が如実に現れてきた。大手で中間期増収増益はマルエツとオークワ。GMSに比べると数字は悪くないが、転換期に差し掛かっている。
ロヂャースなどのDSが最寄率を高めるために生鮮・日配品を導入。ドラッグストアも酒免許自由化にともない、日配品や加工食品の品揃えを強化している。こうした異業態との競争が価格勝負となっている一方で、SM内では、生鮮の加工サービスや惣菜など高コストなサービスが差別化ポイントとなっている。こうした売上と利益のバランスをどう考えていくかがSMの生き残り戦略で重要になっている。
部門別にみると食品部門が牽引する構造はますます顕著になっている。
右の商品分類別売上高伸び率を見ると、GMS4社、SM7社の衣料部門は全てマイナスとなっている。
食品はヨークベニマルが8%増、イオンが5%増、マルエツが4%増と中間決算での増収企業3社が大きな伸びを示している。西友、ライフにしても、衣料、住関連に比べれば、落ち込み幅は小さい。





アメリカの本来のGMSと日本型GMSとでは、「食品を扱っている」「PB商品比率が低い」という決定的な違いがあり、別業態とすべきだという意見もある。だが、今、日本型GMSが抱えている脅威は、実はアメリカのGMS業態が崩壊した時の外的要因とほぼ一致する。
アメリカのGMS崩壊の要因は、(1) GMSの中道業態化(価格)、(2) 小商圏業態による商圏侵食、(3) カテゴリーキラーによる切り崩しといわれているが、ようは、「高級感も無く低価格でもなく、日常的に必要なものを買いに行くには広すぎて利便性が良くなく、いざ欲しいものを買いに行こうと思うと、専門チェーンの方が品揃えが充実しているので、GMSに魅力を感じない」ということである。「何でもあるけど何もないのがGMS」という言葉は、まさにGMSの弱点をついている。

GMSの生き残りを先の課題から考えると
(1) 脱中道業態化
(2) 商圏設定にあわせた店舗戦略
(3) カテゴリーキラーとの競争回避
ということになる。

(1) の脱中道化であるが、ウォルマート、イオンの目指すスーパーセンターはローコスト経営で、大きな意味でのDS化の道を進む。イトーヨーカ堂の「量から質」への転換は高級志向へのシフトが読み取れる。

(2) の商圏設定であるが、西友、ダイエーは、これまで小商圏対応しかできないフォーマットの店舗も無理やりGMSとしての品揃えを重視してきた。その結果、食品SMに最も商圏を切り崩されたのもこの2社である。ここにきて、2社ともがSM業態の強化を明確に打ち出してきている。ダイエーはマルエツのノウハウを借りながら小型GMSの4割をSMに転換すると発表した。
イオンの商圏戦略は大商圏と小商圏の2本柱。ひとつが、これまで増えていた大商圏のショッピングセンター内GMSである。集客力のある専門店をテナント化し、その核店舗となることで大商圏を維持する。もう一つ、今後のフォーマットとして位置付けているスーパーセンターは通常、小商圏でその需要を全て刈り取るという戦略をとる。ただ、品揃えから見ると、小商圏では成立し得ない紳士フォーマルなどの品揃えがいくつか見られ、今後のMDが注目される。また、東雲店は、食品売り場とマンション急増というエリア特性に合わせたベビー・子供用品への特化という小商圏都心型店舗としての実験を行っている。
イトーヨーカ堂の出店戦略はドミナント出店であり、エリア基幹店は大商圏を見据えた品揃え(八千代店のフォーマル強化など)を行い、エリア内の各店舗では、日常利用を意識した食品強化を図っている。

(3) のカテゴリーキラーとの競争回避は明確に表れている。
最近の新店で家電を自社で大きく扱っているところはほとんどない。ダイエーは自社のパレックスを廃止、家電量販のベスト電器に売場を引き継ぎ内包化した。住み分けMDとしては、季節家電や小物家電中心でPB商品を展開する。GMSに来る主婦が買えるものを品揃えするというのがポイントだ。
ショッピングセンター型のGMS出店の場合、価格帯をずらしたMDを行う。最近ではイトーヨーカ堂の八千代店で、ニトリの低価格ホームファニシングに対し、中高級MDで差別化を図っている。
ドラッグに対しては、イオンがイオンウェルシアというドラッグストアグループを作り、既存ドラッグストアと共同でMDを行い、ノウハウを吸収するという新しい展開を見せている。

  2003年中間期決算 2003通期予想
営業収益 増収率 経常利益 増益率 営業収益 増収率 経常利益 増益率
GMS イオン 853,572 3.8 9,045 -32.1 1,770,000 4.0 29,500 -12.8
イトーヨーカ堂 737,789 -2.0 15,312 -39.3 1,540,000 0.8 42,000 -14.7
ダイエー 708,943 -12.7 5,135 -43.7 1,430,000 -8.2 16,000 10.1
西友 381,829 -3.9 -3,436 - 650,000 -17.0 500 -50.7
イズミヤ 161,591 0.6 1,924 0.5 331,000 4.3 13,000 2.8
平和堂 155,662 0.7 4,158 17.5 322,000 2.7 3,800 17.8
フジ 149,677 2.9 1,276 10.5 310,000 1.4 10,000 22.9
SM ライフコーポレーション 189,386 -0.3 1,811 -21.9 379,000 0.7 4,100 1.2
マルエツ 167,391 2.7 2,572 2.4 338,000 3.6 5,300 5.3
ヨークベニマル 140,935 5.2 5,072 -2.0 282,900 5.4 11,100 4.9
東急ストア 131,327 -2.6 1,797 17.0 266,000 -1.7 3,800 15.6
オークワ 106,699 0.1 3,004 18.0 218,000 0.9 6,700 11.3
いなげや 91,531 -4.3 883 -31.8 183,500 -2.7 3,350 -10.0
マックスバリュ西日本 85,358 3.6 1,318 -30.7 176,000 4.4 4,500 0.3
カスミ
81,719 3.2 2,354 -20.8 164,000 2.5 4,100 -21.6
(Chain Store Age 03年12月1日号より作成)




GMSに比べ、SMは食品を中心に小商圏の生活密着型の運営を行ってきたため、好不況の影響も少なく、昨年まで業態として安定した成長を見せてきた。が、この2003年上期の中間決算を見ても、転換期を迎えているといえる。
その理由の第一は、SMがオーバーストア化していることにある。これまで業績好調だったスーパーは、各社が積極的な出店計画を組んでいる。また、高級スーパーもさらなる積極的な出店姿勢をみせている。成城石井は大阪進出に加え、ラクーアなど駅前好立地への出店を強めている。クイーンズ伊勢丹も郊外型店舗を出店してきた。
一方で、GMS小型店のSM化はダイエー、西友を中心に今後も進んでくることが予想され、イオン東雲店にみる都市型イオン新フォーマットもSMと直接競合してくる。
もうひとつは、他業態からの進入である。酒類免許の自由化に伴い、非食品チャネルであったドラッグストア、ホームセンター、ディスカウントストアが次々と食品の強化を打ち出してきている。ミールソリューションでは一日の長があるとはいえ、最寄率の高いドラッグストアが食品強化をもくろむことは非常に脅威となってくる。
こうした状況の下で、SMがその優位性を保つには、従来の生鮮3品+惣菜、日配という生鮮5品を中心にした食品部門の再活性化が軸となってくる。
次に掲げる項目は、SMだけでなくGMSも含めた最近の食品部門の再活性化のための施策である。

(1) 対面販売の強化
精肉、鮮魚コーナーでは壁面をガラス張りにし、中の加工の状況が見えるようになっている。売り場の中央に店員がいて、かつての肉屋や魚屋のような威勢のいい声が店内に響いている。イトーヨーカ堂の新店錦町店では青果の対面販売も始まった。

(2) 加工サービス
サミットでは、鮮魚のほかに野菜類の前処理も行っている。鮮魚での加工サービスが消費者の加工技術の不足をサポートするものであるのに比べ、野菜は作業手間のサポートである。例えば、「小芋の皮むき」といった大した技術がいるわけではないサービスでも要望があれば受けてくれる。

(3) バラ売り、箱売り、丸売り
消費者のニーズに合わせて、野菜は1個から箱売りまで品揃えされる。鮮魚コーナーでは魚の丸売りが増えてきた。店頭の鮮度感を高める効果は高い。

(4) 惣菜売り場の強化
スーパーの惣菜売り場と言えば、前日の売れ残りで作ったものというのが数年前までの常識だった。が、CVSをはじめとする中食市場の急成長を受けて、より積極的な惣菜の品揃えをするチェーンが増えてきた。

(5) メニュー提案
メニュー提案ではヤオコーがやはり圧倒的に強い。素材・材料と調味料とメニューでの提案がいたるところで実施されている。また、お勧めメニューはキッチンサポートコーナーで実演してくれる。イオンのクッキングサポートでは実演を栄養士が行っており、栄養面でのアドバイス(一緒に食べると良いもの)をその場で行ってくれる。

(6) クロスMDの強化
クロスMDは各食品メーカーから条件に頼らない企画ということで、数多く実践されている。最近の新店では主通路の幅を大きく取り、主通路内で上述のキッチンサポートコーナーと冷ケースで島を作り、ひとつの売り場として完結させているケースが増えてきた。

(7) 地産地消
SM、GMSにおいて今、もっとも関心があるのが地場の野菜であり、肉であり魚である。また、日配品でも地元の有名店とのタイアップが増えてきている。

これらの7つのサービスに共通するのは、生活ソリューションである。これを政策の主軸におくと、地元密着がより求められ、個店経営が必要になってくる。こうした政策をとるチェーンでは店舗の権限を強化していくのだが、一方で、チェーンとしての強み、優位性をどのように発揮するかという戦略が重要になってくる。

企業名 注目される戦略
イオン (1) スーパーセンター、都市型フォーマットによる首都圏侵攻
(2) ODBMS(オープンデータベース・マーチャンダイジングシステム)を利用した自動補充システムとメーカー直取引による中間物流コストの低減B
(3) グローバル10(世界のトップ10入り)を視野に入れた合従連衡戦略
イトーヨーカ堂 (1) 生鮮、日配、惣菜での対面販売の強化A
(2) 「Made in Japan」「美味百撰」などの高価格PBの開発
(3)04年度からの年10店程度の積極的な出店計画
ダイエー (1) マルエツとの人材交流、仕入・物流・販促の共同化、店舗オペレーション、出店・改装他の戦略的連携による小型GMSの構造改革
(2) 自前主義から決別し、外部テナント(電気・衣料・サービス等)を積極的導入
西友 (1) ウォルマート流経営〜実務に向いた組織体制の変更
(2) ロールバックをはじめとする販促先の徹底とウォールマート型陳列
マルエツ (1) 首都圏の10%の市場を獲得する「リージョン10」構想
(2) 都市型24時間店舗(CVS+生鮮・惣菜)のフーデックス
ライフコーポレーション (1) 250店舗5000億企業を目指す拡大路線
(2) 地域の暮らしに合わせた5業態での店舗展開
ヨークベニマル (1) 商圏特性に合わせた個店経営の推進
(2) 単なる値引きとなるポイントカードの否定(お金ではなく知恵をだす)
ヤオコー (1) エブリディ ライフスタイルアソートメント型スーパーマーケット
(2) 小商圏高頻度来店の店づくり




2004年の流通業における注目は次の2強の対決である。

(1) ウォルマート VS イオン
(2) イオン VS イトーヨーカ堂

ウォルマートの戦略がすぐに結果に結びついてはいないことは西友の決算報告にみえる。今後、ウォルマートは得意のスーパーセンター業態で東北、九州といった地方での出店を強化すると見られているが、オペレーションをどう構築していくかが焦点となる。迎え撃つイオンも、東北でサンデーと九州でホームワイドと組み、スーパーセンターでの攻略を目指す。
もうひとつの国内2強対決は、EDLP VS高付加価値・対面販売というGMSの脱中道化における2つの方向性の戦いである。04年度から10店舗ずつの大量出店を計画するイトーヨーカ堂の出店フォーマットには、対面販売強化という方向性が示されており、これに沿って出店エリアにあった売り場作りを目指している。今後のポイントとなるのが高付加価値PBの定着。昨年末より発売された「美味百撰」は、まだ過渡期にある。
対するイオンは都心型GMSとして衣服を大幅に縮小した東雲店をオープンさせた。加工食品、酒、飲料などEDLPの単品大量陳列による買い得感と生鮮3品・惣菜強化による店頭のにぎわいで、集客力を高める。
イオンのODBMS(オープンデータベース・マーチャンダイジングシステム)もカテゴリーを広げて稼働し始めた。自動発注方式は、本部が販売情報や天候・催事情報などをベースにあらかじめ設定した店舗ごと・SKUごとの基準在庫量を基に、日々の変化要因を織り込みながら発注を行うもので、先行したアパレルでは、在庫高が13%減少・ロス率が0.4ポイント低下し、粗利益は、0.2ポイント上昇した。在庫日数が長いアパレルでは、日々の販売量の予測がしやすい。これを加工食品や日用雑貨でも展開できるかが鍵を握る。ただ、この展開、まだまだ成果をあげるには至っていない。むしろ混乱の様子が店頭から見て取れる。



GMSとSMの今後の戦略上の争点とそれに対するメーカーの動きを次ページの表にまとめている。これらは大きく次の4つに分解される。
まず、チェーン間の合従連衡がどう進むか。イオンや西友-ウォルマートのEDLPはグループ企業の参加を前提に動いている。各メーカーは地域密着とチェーンオペレーションの徹底の中で、各企業の意思決定構造を把握しなければならない。また、中心となるチェーンでの本部との共同取組体制が組めるかどうかが全国の傘下企業との取組を左右する。
2つめに、物流改革、売場のIT化といった、商品が消費者に渡るまでのコスト削減をどういう優先順位で行うかがチェーンの競争力を高める。メーカーの物流、システム担当者も後方支援部隊としてではなく、得意先の課題解決をミッションに前線に出て行く必要がある。パートの社会保険枠の拡大については、人事部同士の接点という新たな取組の可能性もある。
3つめは、こうしたコスト削減とは逆に消費者の満足を高めるためにコスト増になる取組が店頭での差別化を生むということである。生鮮5品の売場拡大、対面販売などの人的営業力の強化、24時間営業を各チェーンが志向している。メーカーの販促活動もこうしたチェーンの差別化ポイントを理解し、生鮮連動できる売場提案やマネキンのレベルアップ、夜間MDなどに取り組んでいかなければならない。
顧客戦略は単なるポイントカードから優良顧客作りのFSPへの転換が求められる。いまや取組商談には、FSPの進捗や今後の方針確認は欠かせない。
4つめに店頭に並んだ商品の品質を高める活動として、PB商品開発、トレーサビリティ、地産地消商品がある。メーカーからの提案には、カテゴリー内でカテマネを行うカテゴリーインカテゴリーも増えてきている。トレーサビリティは全メーカーの基本姿勢として求められるようになってきた。
このようにSM・GMSの課題は広がっており、単に担当営業がバイヤーと商談する、自社商品の露出を最大化するという活動では、売上確保はままならない。メーカーは、営業部門、本社商品開発、物流、システムという全関与者が得意先課題解決のために行動していく時期に来ている。

競争上の争点
注目されるチェーンの動向
求められるメーカー対応
(1) SM間の合従連衡救済、グループ内統合から大手同士の連携へ
イオン:ポスフール、カスミ、いなげやとリージョナルSMへの出資増やす
マルエツ・丸紅:リージョナル10構想の下、首都圏SMの連携強める
住友商事:西友―ウォルマート、サミット、マミーマートと川下志向
吸収合併などに伴う意思決定権の移動のチェックと中心のチェーンとの共同取組体制の構築
(2) 物流改革卸介在型流通と小売主導流通 イオン:ODBMSによるチェーン主導の自動発注システム
平和堂:卸のセンター運営とメーカー直結の連続自動補充システム
菱食:三菱商事と連携するCPFRを活用した需要予測システム
物流、システムまで含めた総合営業力が問われる。メーカー販促費の削減は、製販間のトータル物流コスト削減が課題となる
(3) PB商品強化低価格PB一辺倒ではなく、高付加価値商品開発 イトーヨーカ堂:産地・原料・製法にこだわった美味百撰77アイテム
イオン:トップバリューにおいしさ・素材・製法にこだわったセレクト登場
他店との差別化を追求したこだわり商品の提案や、こだわり商品コーナー(カテゴリー・イン・カテゴリー)づくり提案が重要になる
(4) 生鮮5品(日配・惣菜)価格訴求でなく差別化できるフィールドとして重視 生鮮部門の拡大により、相対的に加工食品、日用雑貨の売場は縮小。スパイス部門など生鮮コーナーに定番棚が導入されるケースも目立ってきた 生鮮部門の関係を深め、商品を生鮮売場に出していく、あるいは、元の縮小する定番売場の省力化貢献取組を進める必要がある
(5) 地産地消地元生鮮の強化 地域密着のリージョナルSMはもちろん、大手GMSも地元取れたて野菜やエリアの銘柄肉、近海産の海産物を店頭に並べ始めている。 地元JA、漁港、日配メーカーと取り組んだエリア密着の販促テーマ発掘
(6) 社会保険適用枠拡大週20時間を超えるパートの活用方法 パートタイマーへの社会保険枠拡大により、厳選したメンバーで準社員化し社員同様の仕事を任せる層と週20時間以内の労働集約型パートの2層に分かれる 準社員化するパートへの商品情報、販促上のポイント、陳列方法などの教育売場提案から山積までのカテマネサポート
(7) 人的営業力強化消費者に情報を咀嚼し伝達するコンシェルジュ イオン:鮮魚士、惣菜士など13の社内職人制度の導入
イトーヨーカ堂:生鮮、日配、惣菜での対面販売の強化
試食・試飲販売も単に味を確かめてもらうことから、機能面の説明や生活提案要素を重視した人材が必要
(8) 深夜営業・24時間営業夜間需要の取り込み マルエツ:24時間営業の都市型店舗フーデックスの出店増
イズミヤ:深夜営業店を4店から27店に7倍増
時間帯別の顧客特性に応じた、夜間のマーチャンダイジング、クロスMDの視点
(9) FSP対応有料顧客囲い込みのための オギノ:個客の購買履歴データ分析を行い、キメ細かな販促を行う
サボイ:固定客の来店頻度アップを目的としたまねき屋システム
会員データ分析を伴うFSP取組、固定客増、再来店増などの優良顧客を増やすための販促提案はより重要なテーマになってくる
(10) 売場のIT化電子棚札、ICタグ、無人レジ、液晶モニター イトーヨーカ堂、カスミ他:電子棚札導入により定番POP削減マルエツ:産地、メーカーからレジまで管理するICタグ実験
イオン:柏市のマックスバリュ松ヶ崎にセルフレジ導入
サミット:サミットビジョンによる市場情報や販促提案
紙媒体の販促ツールから、ITを活用した販促が増えていく。店頭での動画配信もこれまでのCMの連続放映から消費者の課題解決へと変化が要望される
(11) トレーサビリティ安全・安心を追求するために必須の要素に 生鮮売場では、パソコンを使ったトレーサビリティシステムが導入される
イトーヨーカ堂:顔の見える野菜 自宅で生産履歴をみることができる
東急ストア:店頭の生産者履歴検索システム「トレースナビ」
原料、資材すべてにおけるトレーサビリティが必要となる。原料メーカー、産地への定期的なチェック機能も欠かせない


※本提言論文は、「営業力開発」誌 2004・No182号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:チャネルマネジメント)に掲載されております。掲載文は以下のU〜Xに続いております。

U.CVS 寡占化構造の進展と、オリジナル商品の拡大
−生活サービス産業としての「事業構築力」競争−
V.ドラッグストア 10兆円市場に向けた、ソリューションビジネスへの拡大
−グループ化による他業態との差別化進行−
W.家電量販 単品集積の寡占から顧客アクセスの強化へ
−商品選択支援のための都市型MDの戦い−
X.ホームセンター 厳しい経済環境下でも力強く成長
−ホームセンターの熾烈な業界盟主取り競争−

過去の提言論文バックナンバー
・価値ベースのマーケティング戦略構築」
「情報差別化で売る 」
・デフレ不況下での消費者マインドを読む
コラボレーションによる売場活性化
デジタルな時代の新しいマーケティング戦略構築
東京都心からのマーケティング革新
「商品育成」をミッションとする営業の「売場つくり機能」
流通生産性を向上するメーカー戦略
デフレ時代の付加価値マーケティング
デジタルな時代の新しい消費者を理解する法則
競争優位のマーケティング
営業支援システムが目指す顧客とのBPR
顧客仕様を超える商品戦略
e流通革命への対応戦略
IT技術の活用と展望
店頭活性化への機能再編成
顧客とのリレーションショップの再構築
流通激変期のアクセスマーケティング




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