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デフレ不況下での消費者マインドを読む

 世界の経済を引っ張ってきたアメリカ経済の翳りがここに来て公然となってきた。アメリカ経済、それを最も力強く支えてきたのは「個人消費」とされている。
 国民性とも言われる高い消費性向、この消費を支えている消費者信用(アメリカの現在の消費者信用残高は約200兆円、日本は2001年度で65兆円)。
 IT、株、そして住宅・不動産が牽引車とされていたが、その前二者は既に息切れし、最後の一つにも暗雲が寄せている。
 アメリカでは1995年以降急増していた個人破産が、1999年以降治まりかけていたが、再び増勢に転じ、2002年会計年度には150万件を突破した。(日本の個人破産は2001年度で16万件)伴っての住宅売却が50万件を超えたと言われている。個人資産の減少・目減り、雇用の崩壊、アメリカの個人消費はどこへ行くのか。その影響はそのまま日本にもやってくる。
 規制緩和は進まず、構造改革は手つかず、深刻なデフレ不況が5年続き、治まる気配を見せない日本。日本の消費者。わが国の経済を支えるのも、個人消費である。
 バブル崩壊以降も緩やかではあるが、個人消費は伸びていた。しかし1997年の消費税率引き上げ前の仮需とその反動、それと軌を一にした消費の冷え込み。伸びない消費、減少する生産、縮小する企業活動、不安定な雇用と所得、負の連鎖が続いている。
 所得の伸び悩み〜減少、雇用不安を抱え、一向に好転しそうにないといわれる消費マインド。
 この我慢はいつまで続けることができるのだろうか。いや、我慢を本当にしているのだろうか。
 家計調査によると、2002年の単身者世帯での平均消費支出は210万円、2人以上世帯でのそれは367万円(特に単身世帯については調査標本の問題もあるがそれは無視して)。これを日本の世帯数、単身1300万世帯、2人以上3400万世帯に乗じると、単身世帯での消費支出は27兆円、2人以上世帯は125兆円となる。
 平均値で言えば縮む経済・消費だが、一律にどこも同じと言うわけではない。伸びている企業もあれば、売れている商品も数多くある。お客様の気持ち(意識)を読むことから始めたい。当たり前すぎるかもしれないが、基本視点にたっての消費構造を最新のデータから俯瞰してみた。

T.消費はどこまで縮むのか

■縮み続ける日本の経済

 日本の国内総支出は、緩やかではあったがバブル崩壊の1990年以降も伸び続けたが、1997年をピ−クにその後は減少に転じた。
 雇用者報酬も全く軌を同じくしている。当然ではあるが、1996年までは伸びていた家計現実最終消費も、1997年以降は、ほぼ横ばいとなる。(実世帯における消費支出は1998年以降減少に転じている。国内総支出の三分の二を占める家計現実最終消費は、世帯での総支出がベースとなり、消費支出とはやや異なる。国内総支出に占める家計現実最終消費の割合は、1990年では60%、2001年では67%である。)
 世帯での所得の減少、伴っての消費の減少、言い換えると総支出が伸びないために総生産が伸びない、今日の日本経済の縮図がある。


■消費はどこまで縮むの

 総務省の家計調査はいくつかの限界があるものの、変化をみる上では欠かせない資料である。
 世帯単位でみると、1世帯あたりの人員が減少し続けている結果影響なども表れるため、下図・表では、2人以上の勤労者世帯の1人当りの収入と支出の推移をみている。1998年以降、収入,支出とも減少に転じ、今のところ下げ止まる気配をみせていない。
 また可処分所得に対する消費の割合を示す平均消費性向は、一貫して減少し続けていたのだが、1998年には下げ止まり、2002年には1ポイントではあるが増加に転じた。所得が増えない時代の消費、この春5000人の声を聞いてみた。


II.暮らしと消費に関する意識調査 2003年春、全国5000人の声が集まりました

 2003年3月、全国5000人のWeb会員を対象に、『2003春・暮らしと消費のアンケート調査』を実施した。
 代表的な声は、以下のようだ。
 ・2〜3年は、景気は良くならない、10年くらい先を期待するしかない。
 ・規制緩和や構造改革の遅れが、大きな原因だ。
 ・時間的なゆとりは増えたが、経済面は苦しくなる一方。
 ・将来不安に備えて消費をガマンしているが、それ以上に所得減がきいている。
 ・男女別では、やや男性の方が消費を減らしている。また高齢層ほど消費を抑えている。
 ・品目では、衣料品の減少が最も多く、次いで家庭用品などとなる。
 この他、消費(買物)の仕方については、価格やブランドの重視・影響度、日本の企業や消費者に対する評価などを聞いている。
 以下は、その調査結果の報告である。
 (お断り)
 回答者の分布は、女性58%にみられるように、一般的な分布とはやや差がある。
 また、ライフスタイルや価値観などに関しても、 Web会員という性格上、標準性においてもその分を鑑みる必要性がある。
 このような点から、総標本数を全体結果として判断するには限界があり、以下ページでの結果紹介においても、全体値ベースの掲載は、一部で控えている。



■景気に対する期待(予想)は

   『日本の景気は良くなりそうか』との質問に対しては、来年良くなると答えているのが、ほぼ20人に1人、それが3年後では6人に1人、そして10年後で3人に1人強となる。
 総じて男性に比べ女性のほうが良くなるとの答が多い。世帯年収別では、来年については差がそれほどみられないものの、3年後・10年後となると、低い層ほど厳しくみている。
 また、3年後では中部以西の西日本で厳しめの見方がより多い。
 これは言い換えると、三分の二にあたる人たちは、10年経っても日本の景気が良くなるとは思っていない(期待していない)ことになる。これは、従来の経済成長を前提としたインフレヘッジ期待の消費が相当に冷やされているということである。
 また、今の日本に対しての不況感の認識、そしてその要因としての、「規制緩和や構造改革の遅れ」、「消費マインドの冷え込み」、「資産価値減少による影響」などの指摘は、女性よりも男性の方が、そして高齢層ほど目立っている。

 

■これからの日本 一言で言うと

  『2003〜2005年はこんな年になるをキーワード一言で表すなら』、という質問に対して、50人以上から挙げられたのは、右記のことばであった。  圧倒的に多かったのが、「忍・耐・試練」で、7人に1人(15%)の人から挙げられている。人数ではその後は差があるが、「乱・迷・低・底・暗・不安(合わせると567人)」が続く。
 そして、これらのややネガティブなキーワードとトーンの変わるポジティブなものとして、「変化・転機・改革・再生・復活・上向き・前向き・進む・努力(合わせると427人)が登場してくる。
 挙げられたキーワードを総合して、今の消費者の気持ちを表すなら、次のように言えるのではないだろうか。『今は時代の大きな変わり目、早く変わって欲しい、でもその変わり目がとても長い、改革や努力もするけど、試練に耐えていかねばならない』と。


■デフレは続く

 土地やマンションの価格や物価、銀行の金利や利子に関しても、高くなるとの答は少なく、3年後で1割強、10年後でも3割弱しかない。
 (低くなる・安くなるとの回答は土地や物価だと、3年後で34%、10年後で20%,金利や利子は3年後で39%、10年後で26%)

■暮らし振りは

 「来年暮らし振りが良くなりそう」とした人はわずかに8%、それに対し「悪くなりそう」は30%、3年後では良くが16%、悪くが27%、10年後では良くが25%、悪くが21%であった。
 また層別では男性よりも女性、より高齢層ほど、良くなるとの評価(期待)が少ない。

■今の暮らし「暮らしのゆとり」は

 『2〜3年前に比べて、今は・・・』に対する回答をみると、「時間的なゆとりは増えたが、経済面はゆとりがなくなり、収入減や将来に備えて消費を抑えようとはしているが、結果的な消費支出は少し増えている」となる。
 2〜3年前と比べた場合の生活実感で、全体としてのゆとり感で良くなったとした人(少しを含む)は21%、悪くなったとした人は57%、経済面のゆとり感だと、良くなった人は17%、悪くなった人は59%と、悪くなったとする人が多い。時間観念だけは比較的拮抗しており、良くなった人は34%、悪くなった人は40%であった。
 
 層別にみると、全体としてのゆとり感では、40歳代、50歳代で、経済面では高齢層になるほど悪くなったの多さが目立っている。


■2〜3年前に比べて収入と支出は


 20歳代は、年収が減ったが38%に対して増えたが35%と、何とか拮抗しているが、高齢層になるほど減ったとする人が多くなる。(全体では減ったが45%、増えたが28%、50歳代では減ったが66%、増えたが12%。)
 それに対して、総支出は減ったが26%、増えたが54%。但し、 50歳代では減ったが38%、増えたが33%と逆転する。
 支出(消費)の中身では、食料品・食費は減らないで増えている人が多いが、衣料品と住居関連の支出を減らしている人が多い。なお、50歳代・60歳代の人では食費関連も減っている人が多い。また趣味や娯楽関連は、高齢層ほど支出を減らしている。
 今の消費姿勢・態度としては、買いたいものはあっても、収入減なので買えない、将来に備えてガマンしているとしている人が多いが、50歳代・60歳代では買いたいと思うようなものがないので、結果的に買物が減っているとする人も一定みられる。

※ 本提言は、「営業力開発」誌 2003・No179号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:マーケティング・コミュニケーションズ)に掲載されております。掲載文はUの続稿および以下のIII〜Wに続いております。

V.新商品・話題商品モニタリングに見る、食品・日用品の消費性向
W.消費構造の変化を読む


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