■CVSに低価格の波
世の中、実感なき好況の中で、高級品が売れているというニュースばかりが注目されるが、「低価格」が治まっている訳ではない。階層社会からすれば、低所得層も増えており「低価格」を志向している。
さらに、年金生活に入る高齢者は、いつでも使い慣れている、買い慣れている商品については価格敏感性を増していると言われている。ローソンでは「ローソン100」を「主婦層・中高年齢層からの支持が高い」として、商圏全体での「客層拡大」の重要な業態であると位置付けている。
さらに、昨今の原料高騰に伴う商品価格の値上げ圧力も加わり、及び「安さ」を求める勢いがついている。
こうした状態の中で、コンビニエンスストアの巨頭、セブンイレブンが、05年9月一部飲料の値下げに始まり、06年11月500ml・98円のPBを発売した。それまでのコンビニエンスで500ml・148円となっていた飲料が、PBとはいえ一挙に98円に下がったのである。
同じ時期、セブンイレブンは調味料も値下げに走ったが、パーソナル需要の業態として売上の大きなペットボトル飲料の低価格路線には、大きな衝撃が走った。
しかし、この500ml・98円という価格は微妙な価格であった。今でもそうだが、スーパーでは88円のPBがあり、「ローソン100」でも900mlを103円で販売している。
「98円プライスの不思議さ」が注目されたが、飲料売価の低下は一挙に進んだ。ローソンでは、NBの「生茶」「お〜いお茶」「十六茶」の値下げに走った。ミニストップは、イオンの「トップバリュ」の飲料を98円で扱い始めた。
当初静観していたファミリーマートも、07年3月、500ml・100円の緑茶・麦茶・烏龍茶を発売した。
サークルKサンクスも、調味料・日用品23品を最大22%値下げし、さらに紙パックで500ml・84円、1g103円の専用商品を投入した。(図表1参照)
コンビニエンスストアは、90年代後半から小売業の成長業態として右肩上がりを続けてきた。しかし、50000店を突破して、オーバーストアの現象が明らかになると、新興のドラッグストアとは小商圏フォーマットを争い、「食のサービス化」をめぐってはスーパー惣菜との競争に入った。
その結果、9年連続で既存店はマイナスであり、客単価減少も止まっていない。(チェーンストア協会)
昨今では、CVSを廃業し、代わりにドラッグストアに転換しているという店舗が多くなっているとも言われている。
ドラッグストア、スーパーとの価格競争に、耐えきれなくなっているとも言える。当初、オーナーの「値下げの忌避」で取扱いが少ないのではと思われた低価格飲料も、多くの店が取扱いを進めている。
日経新聞の調査によれば、コンビニエンスストア29社の内、3社は「NBの値下げを増やす」とし、9社が「PBの値下げを増やす」としている。NBの値下げより、PBの値下げの方が重視されている。
今後とも、PB、専用商品による「価格競争」は続くのであろう。
■PBを求める小売のグループ化
小売企業のPBは、消費者からは決して好意をもって迎えられているとはいいがたい。価格が安い上に、店舗の注力度があからさまなボリューム陳列があっても、さほどシェアは上がっていない。
特に、変化・改良が少ないPBは、消費者からは飽きられているとも思われる。
しかし、それを扱う側の小売業・店舗からすると、とても無視できない「商材」である。昨今の業績の厳しさが、よりPBへの注力を促進している。
06年度の決算が、PB強化の背景をよく語っている。
コンビニエンスストアは、先に述べたように既存店がマイナスで客数、客単価ともふるわない。なによりも営業利益率が揃って落ちている。
GMS、スーパーも既存店マイナスがほとんどである。特に、客数減少が響いている。
ドラッグストアにも、陰りが見られる。スギ薬局を除き、営業利益率はマイナスである。
さらに、詳細に見れば、粗利益率が安定しているコンビニエンスストアは、販管費が増加し、営業利益率が落ちている。これは、本部の実績だが、加盟店既存店で推測すれば、売上は落ちるのに、人件費は高まり、利益が出ない構造的な不振に陥っているといえよう。
スーパーやドラッグストアは、粗利益率が落ち、販管費、特に人件費を抑えることで、かろうじて営業利益を維持しようとしている。しかし、ドラッグストアの営業利益率はかっての勢いはない。(図表2参照)
要するに「儲からない」のである。売価は安くとも、粗利益率の高いPBに利益の補完を期待しているのである。小売都合寄りの施策とも言える。
こうした状態は、今が初めてではない。GMSも、スーパーもバブル崩壊後に経験している。その時も「PB戦略」は強化されたが、とても救世主と期待を持てるような「商材」ではなかった。「強化方針」の割に、消費者の冷ややかな目線があった。なんといっても、ボランタリーのPBは、「これどこのメーカー?大丈夫?」と思われても仕方がないような「ブランド力」でしかなかった。
近年、再度PBが注目されるのは、小売業自体が「再編成」の波にさらされており、「グループ」という枠組でPB=「プライベートブランド」が検討されているからである。
4兆8000億を誇るイオングループは、2003年以降カスミ、いなげや、ベルクと立て続けに資本提携し、今年に入ってマルエツとの提携で首都圏は900店舗を超えた。
さらに、ダイエーの支援で資本提携を進め、一挙にスーパーでの巨大なグループを構築した。
さらに、ドラッグストアではイオンウエルシアグループが、スギ薬局の脱退があったとはいえ、2000店7000億にのぼる。
一方、セブン&アイHDは、イトーヨーカ堂、セブンイレブン、ヨークベニマル、ヨークマート、シェルガーデンの他、西武・そうごうを含むミレニアムグループ、さらにロフト、赤ちゃん本舗を傘下に入れて、グループ全体で13000店舗、5兆8000億である。
この枠組にPBがある。
■セブン&アイHD VS イオン
グループPBを鮮烈に打ち出したのは、これまで比較的PBに冷静であったセブン&アイHDであった。
セブン&アイは、06年11月にグループ横断の商品開発「セブン&アイグループMD改革プロジェクト」を設立した。セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、ヨークベニマル、ヨークマート、シェルガーデンの計5社を貫くPBの開発である。
このプロジェクトの目標は、単に商品開発だけではなく、品質管理、物流計画までも具体化する。その名が「セブンプレミアム」である。
開発体制は、セブンイレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂などコンビニエンスストア、スーパー5社から11人が専任担当に就任。飲料や菓子など加工食品や、牛乳や豆腐など日配品合わせて46チーム、計76人が商品企画に携わったとされている。さらに、原料メーカー、製造メーカー、パッケージメーカーなどの協力を得ている。
販売する店舗は、スーパー4社約400店で、セブンイレブンはコンビニエンス業態に適合するアイテムを選定し12000店で扱う。
目標はセブン&アイ5社で販売される加工食品売上1兆8000億の2割・3600億を2010年に達成するというものである。
07年5月に第一弾が発売され、飲料、調味料、カップ麺など加工食品40品目が、スーパー388店舗の店頭に並んだ。その後、アイテムを増やしながら年度内に250アイテムまで増やし、500億円を目標としている。
第一弾導入後の販売状況では売上はやや計画未達であるものの、今後の強化施策を打ちながら商品を見直していく。アイテムでは「グループで一番売ったのはプレーンヨーグルト、次がゼリー、カップ麺、厚切りバウムと続く。思わしくないのは南部せんべい」「イトーヨーカ堂ではヨーグルトが1番、ベニマルではカップ麺が一番よく売れている」という。(食糧新聞・ヨークベニマル大竹常務談)
セブンイレブンでは、8月に「セブンプレミアム」の内、「まろやか味のり」「味わい花かつお」「じゃがいものポタージュ」「粒入りコーンポタージュ」の4品を販売した。
セブン&アイHDにおける共同は、「セブンプレミアム」に留まらない。
「畑丸ごと買い」「豚・牛一頭丸ごと買い」「漁船丸ごと買い」を行い、各部位をグループで分け合い、品質を向上させると同時に、無駄をなくしコストを下げるという。
例えば、「豚一頭丸ごと買い」は、国内業者から良質な豚を買い付け、「ヒレ・肩ロースはイトーヨーカ堂やヨークベニマルなどの販売用、バラはセブンイレブンのカルビ焼き肉弁当用、ロースはデニーズのトンカツやショウガ焼き用に。さらに、骨と脂身はスープ用に、ウデ・モモはハム・ソーセージ用にと、余すところなく使い尽くす。そうすることで調達コストは2〜3割も安くなり、国産だから日本人の嗜好にも合う。セブン&アイでは、いずれグループ全体の仕入総量(現時点では約80万頭)すべてを国内調達する」(食糧新聞)という。
一方、イオンではもともと「トップバリュ」でPB強化の方針を設定していた。現行でも衣食住で約3600アイテムを持ち、売上も年間2200億に達し、07年度は7.9%伸びている。(図表3参照)
07年5月の株主総会で、岡田社長は2010年に「トップバリュ」を5000〜6000品目で、現在の売上の3.4倍・7500億、11年には単体ベースで売上の20%弱をPBで占める計画を発表している。商品構成は食品で5000億、衣料・住居で2500億を目指すとしている。
さらに、この開発のために07年5月、「セブンプレミアム」の発売の二日前に、7500億を担う商品開発会社「トップバリュ」が設立された。次いで、原料調達を担う「イオン商品調達」、物流センターを管理する「イオングローバルSCM」の設立をもって、イオンはまさに「メーカー」になった。
「トップバリュ」は94年から開発されている。この間一貫して強化され続けたが、07年2月に健康志向の「トップバリュヘルシーアイ」を発売、野菜ジュースやヨーグルト、デザートなどを発売している。さらに、「トップバリュ」の高品質商品として産地や原料にこだわった「トップバリュセレクト」を10月までの100品目投入するとしている。「スペシャルティーコーヒー」や「天然手摘み岩もずく黒酢仕立て」などである。
イオン系のコンビニエンスストアのミニストップは、「トップバリュ」の売上を、現在の5倍の70億円に3年以内に引き上げるとしている。つまり、現在は14億程度で、セブンイレブンの飲料での価格攻勢などに対応する商材として採用されてきたにすぎなかったが、今後は積極的に取り入れ、ミニストップ向け商品の開発も意識する。
イオングループでのPBを拡大する場合、大きな売上規模になると期待されるのがダイエーである。
ダイエーのPB、「セービング」が開発されたのが1980年である。25年強、積み上げてきた数字が760億である。この間、「セービング」以外に、「すこやか育ち」「おいしく食べたい」などのシリーズを開発している。
07年5月、発表されたダイエーの中期計画では、イオンとのPBの共同開発には触れているが、「トップバリュ」の導入についてはまだ、発表されていない。当面は、「セービング」を続けるものと思われるが、イオンのPB開発会社「トップバリュ」と、ダイエー、丸紅との共同開発商品は、08年度には出てくると言われている。
いずれにせよ、7500億の中身として、ダイエーの750億が意識されていることは間違いがないであろう。
世界のウォルマートと提携している西友は、これまでの「西友ファインセレクト」に代わって、加工食品・日用雑貨のプライベートブランド「グレートバリュー」を強化している。これはウォルマート独自ブランドで、同様にファッション性を加味したウォルマートの衣料品「ジョージ」の取扱いも強化する。世界規模でのグループPBである。
GMS4社の店頭におけるPBの露出と価格をチェックしてみた。(図表4参照)
各店舗は、売場面積、売上とも差がある店舗であり、単純な比較はできないが、なんといっても「トップバリュ」のアイテムの多さが目立つ。
価格では、500mlペットは、各社とも88円で統一されている。2gペットでは、一番安いのが「トップバリュ」で148円、次いで「セブン&アイ」の158円、「セービング」と「グレートバリュー」は168円である。
中身に差があれば、単純に価格を比較することは意味がないが、それでもコンビニエンスストアで98円に落ちた500mlペットが、GMS4社とも88円で、統一されている点が注目される。特に、同じ「トップバリュ」が、ジャスコでは88円で、ミニストップで98円であることは、「グループPB」といっても、業態によって価格を変えなくてはならない点があることを示唆している。物流、受注システムなど情報、ハンドリングなどオペレーションコストの差であろう。
■競争力を左右する「専用商品」
飲料と同じように広義の意味でのPB商品が多いのが菓子、特につまみ・豆・米菓である。CVS・GMSのPB商品をチェックしたが、大きくふたつのPBがあることが分かる。つまり、「セービング」や「トップバリュ」というブランドで、製造者がそれぞれ「ダイエー」や「イオン」となっているようなPBと、そのチェーンの固有の商品(であろうと推測するが)でありながら、製造社・あるいは販売社が明記されているPBである。
後者を「専用商品」、「オリジナル商品」と呼んでいる。少し前の言い方では「ダブルチョップ」と呼んだ。(図表5参照)
「共同開発」しているメーカーの名前を見ると、どのチェーンでもほとんど同じ名前が並んでいる。それぞれはNBを持ってはいるが、アイテムを広げられない苦しさがあった。それを、コンセプト(多くは価格であるが)で括り、ゴンドラ1本・2本に数多くのメーカー商品を集めることによって目立つようにしている。消費者も慣れたメーカー名が表示されているので安心感もある。
特に、この菓子のカテゴリーでは菓子卸がプロデュースすることが多く、某チェーンでは「サンエス」が販売社としてすべての商品に明示されていた。
しかし、いずれにしても「おつまみ・豆・米菓」のカテゴリーは、PBによって席捲されているといっても言い過ぎではない。
飲料、菓子など、PB・専用商品が多いカテゴリーを検討してきたが、本質的には「加工食品」のジャンルはPB・専用商品のウエイトはさほど高くはない。
ちょっと古いがヨークベニマルの05年度決算資料では、各商品領域での「開発商品」について報告している。
それによれば「加工食品」の「開発商品」の売上は10%にしかすぎない。さらに「住居関連」も10%である。さすがに粗利益額では少し構成比が高まるが、このふたつのジャンルはなんといってもNB主導である。
一方、「デイリー食品」では、「開発商品」の売上構成比は35%に近く、粗利益額では40%を超える。最後は利益が残ればよいと考えるなら、「デイリー」で「開発商品」だけ注力せよ!と、言いたくなる。(図表6・7参照)
先に、「トップバリュ」を日本で一番大きな「PB」としたが、実は、セブンイレブンの「売上高に占めるPBの比率は今年55%に達し、食品だけで見ると80%前後に達する。」とすら言われている。セブンイレブンは2兆5000億であるから、その半分として1兆2500億の「PB」メーカーなのである。食品だけで言えば「惣菜=FF・お弁当」は全て「開発商品」であり、「日配=特に焼きたてパン」も「専用商品」である。このふたつだけでセブンイレブンは食品売上の40%を超え、7500億に達する。
同じようにローソンは27%で3000億である。コンビニエンスストアでは、ファーストフード、お弁当、おにぎり、菓子パンなどの差別性が重視されており、「PB・開発商品」こそ、小売業の競争力といえる状況を示している。(図表8参照)
コンビニエンスストアの「惣菜・日配」には「ベンダー」と称せられる協力会社が存在する。一番有名な会社が、セブンイレブンのおにぎり、お弁当を手がけて大きくなった「わらべや日洋」で、連結売上は約1400億円である。食品メーカーとして1000億円を超えていれば大手と言われる。セブンイレブン1社との取引だけで、ここまで大きくなれるのである。
一方、GMS・スーパーの「惣菜・日配」比率は、まだ高くはない。「惣菜」では、ミニスーパー的なセイコーマートを別にすれば、ヤオコーが食品売上の12%を「惣菜」が占めているのが目立つくらいである。
イオンの岡田社長は、「惣菜はPBである」として、惣菜売上げ構成比を現在の10%程度から20%へと引き上げるという中期的目標を発表した。「デリカ事業改革チーム」がすぐに設立され、まず、デリカの定義づくりからスタートした。現在は米飯・温惣菜・冷惣菜・寿司・サラダなどというように、主に食材で区分されている。ただ、惣菜パンや菓子パンも「デリカ」ではないかとか、「和・洋・中」で括った方が消費者には分かりやすいとか、開発後の売場計画も視野に入れながら検討するとしている。
さらに、生産から販売まで一貫した自社責任による独自の商品づくりの仕組み開発が課題である。
グループ戦略という意味では、子会社化した惣菜専門店オリジン東秀のノウハウを改革のテコとして活用する。さらに、オリジン東秀の集中加工センターで下ごしらえをした食材キットをジャスコなど92店舗(07年2月現在)に供給し、最終調理は店内厨房で実施するというオペレーションの開発にもとり組む。
こうした外部協力企業との取組、「ベンダー」の起用は、今流行の「スィーツ」の領域でも取り入れられている。コンビニエンスストアには、各チェーンにそれぞれ密着した「スィーツ・ベンダー」が存在する。
GMSでも、モンテールというスィーツのNBメーカーの商品も多いが、各社とも独自性を発揮するために、協力ベンダーとの取組を進めている。
この中でも、グループ協働が発揮され、イトーヨーカ堂には、セブンイレブンで開発されたスィーツが導入されており、また、ミニストップ、ジャスコには同じ「スィーツメーカー」が開発に参加している。(図表9参照)
■オンリー商品とNB
これまで、セブン&アイHDと、イオングループの「PB・専用商品」の強化について検討を進めてきたが、この両社は「PB・専用商品」を作り出す仕組みにおいて、大きな違いがある。 イオンはどちらかといえば「自前主義」で、開発会社も、調達も。物流も「自前」の会社を設立して拡大を進めている。
セブン&アイは、極端に「協働主義」である。開発・生産も、各メーカーとの協働の元で行い、物流・調達もそれぞれに協力企業を置いている。また、PB商品には必ず「製造メーカー」を明示しており、協働姿勢を明確にしている。
「セブンプレミアム」に、参加しているメーカーはミツカン、キッコーマン、サンヨー食品、キユーピー、ハウス食品など、NBメーカーとして一流の会社が加わっている。(図表10参照)
先に見た菓子における「ダブルチョップ」では、ある意味でチェーン優位の構造が垣間見られるが、こうした有名メーカーの「ダブルチョップ」は、小売業とメーカーとの協調というスタンスが重要であろう。
ドラッグストアでも「ダブルチョップ」が進んでいる。特に注力しているのは、先に「自前主義」としたイオンで、ドラッグストア連合を構成しているイオンウエルシアストアーズである。ここでは風邪クスリや、胃腸薬、ドリンクなどを、OTCメーカーと協働で開発し、メーカー名を表示して、グループ加盟会社に提供している。
そのイオンウエルシアグループと競合するマツモトキヨシも、「MKカスタマー」というPBを開発している。これもメーカー名を表示している。商品が「薬」だけに、製造会社を明示しなくてはならないが、メーカーからすれば、食品とは違い、NBと全く別の薬を作ることは出来ない。所詮、NBのリメーク、ないし「止め型」が「専用商品」となっている。(図表11参照)
ドラッグストアにおけるPBの強化は、09年を目処に実施される予定である薬事法の改正で、スーパーやコンビニエンスストアでもOTCを扱えるようになるということとも関連している。少なくとも一定程度のOTCが、ドラッグから他の業態に流れる訳で、その失った売上、特に粗利益額を補填するものとして、粗利益率の高いPBが注目されている。
イオン連合のツルハは、決算報告資料でPB売上を報告している。参加している「ウエルシアPB」と、自前の「ツルハPB」で、1450品目に達しており、売上に対して12%、粗利益額では19%をPBが占めている。(図表12参照)
マツモトキヨシの「MKカスタマー」はNB商品に比べて売上高粗利益率が10ポイントも高いため、収益面での貢献が非常に大きい。
現在、「MKカスタマー」の売上高比率は8.8%で、07年度中に取扱品目数を現在の1.3倍の2000品目に増やし、PB比率を1.2ポイント増の10まで高める。さらに、5年以内に現在の約2倍の15%まで高めるという。
全体の売上成長、特に粗利率が落ちてきたドラッグストアにとって、「専用商品・PB」は、利益効率を改善する救世主のようでもある。
それだけに、NBと「専用商品・PB」の扱いが気になる。マツモトキヨシの多くの店舗で、あるいはイオン連合のチェーンで、「専用商品」と、それと同等のNBが並んで陳列され、大きく売価が明示されている。当たり前だが、PBの方が安い。場合によっては「○○(NB)と同じ成分を使っています」などというPOPが掲載されている。何か、NBは、「専用商品PB」の売価の引き立て役のようで、これではNBの将来が危うい。
日本のチェーンストアは、NBによって多店舗化を可能にしてきた。どこに店舗を出しても、扱っている商品がTVで広告され、どこにでも扱っている安心できる「ブランド」であるため、どこで買っても安心できたからである。NBが、売上規模さえ多ければ、メーカーの方で「安く売る原資」をくれたからである。
その構造が逆転しようとしている。
NBが冷遇されていった後に、どんな「ストアマネジメント」が可能になるのか? いったい、かつて検討した「カテゴリーマネジメント」では、この現象をどう説明したらよいのか。
PBと専用商品・ダブルチョップ、そしてナショナルブランド、このポジショニングを、早急に整理しなくてはならない。 |