トップページ
サービスメニュー
営業力開発誌
JMR戦略ケース研究会

→活動内容とサービス
→過去のテーマ(東京)
→過去のテーマ(大阪)
→顧客接点レポート
→お申し込み

セミナー
会社案内
リクルート
お問い合わせ
JMR生活総合研究所

店頭での「ブランド価値」訴求

 
 90年代半ばより、キャンペーンの大型化が話題となった。缶コーヒーのジョージアやボス、ファイア、さらにはビールのキリン、アサヒが、1回のキャンペーンで何千万という応募数を獲得した。  その原動力になったのが、TV広告によるキャンペーン告知であった。マス広告と、SPとの融合がメガキャペーンを生み出したのである。  「統合SP」という考え方によれば、「売場」との融合も重要である。「売場」では、マス広告で告知されたキャンペーンのPOPや応募ハガキが設置されている。一方で、マス広告では告知されていないプロモーションの案内も行われている。  06年のプロモーションについて、1年間の店頭告知SPについて整理をしてみよう。

06年のメガキャンペーン

これまで「大型キャンペーン」と言えば、応募者数1000万を超えるものを話題にしてきた。

その基準に従えば06年の「大型キャンペーン」のトップは「キリンビール・選ぼうニッポンのうまい!2006」である。応募口数は26,726,498口に達した。47都道府県での「ご当地グルメとビール」の展開である。プレミアムに対する応募数の多さばかりが目立つが、ご当地グルメとのクロスMDなど、店頭からの情報発信も強化している。

店頭での応募ハガキでは、47都道府県の「うまい(もの)」が掲載され、応募シールを添付できるようになっている。(資料1参照)

さらにこのキャンペーンコンセプト「ご当地グルメとビール」のコラボは、イオンのオリジナルキャンペーンへと発展している。イオン店頭でキリンビールを購入した人を対象に、レシート添付で、和歌山・石川・青森・千葉・鹿児島の名産品とキリンのチルドビールが500名に当たるというキャンペーンである。(資料2参照)

ご存知のように、今スーパーでの重点的な取組みテーマは「地産地消」である。特に生鮮・惣菜の強化策としてクローズアップされているが、同時に関連する食品との「クロスMD」も多用されている。

こうしたスーパーでの重点取組みテーマと連動して、あるいは支援する形で展開されていたのがキリンビールの「ご当地の『食材』とビールのクロスMD」、そして大幅なTV広告のバックアップであった。

GMS・スーパーのバイヤーも、この展開を好意的に迎えており、長年トップシェアを誇っていたアサヒをキャッチアップする「非価格競争手段」として継続されてきた。

メガブランドと店頭SP

店頭ではさらに、ヘアケア売場が、リッチな「メガブランド」に染められた。05年花王「アジエンス」の一大躍進から、06年資生堂の「TSUBAKI」、対抗するユニリーバジャパンが「Dove」「Lux」の新シリーズ追加、さらにカネボウが「ICHIKAMI」を上梓した。

「TSUBAKI」に投じられた50億円もの広告宣伝費ばかりが話題になるが、それを構成するイベント、パブリシティ、そして店頭でのビジュアルマーチャンダイジングなどの総合効果が「トップブランド」に引き上げた要因であろう。

「Lux」も、3月から6月に渡って、全国7大都市で長期間の「体験型サンプリング」を行った。一方の花王のアジエンスも「ソワレキャンペーン」で対抗した。

ヘアケアの中心チャネルであるドラッグストアでは、さらにオリジナルなキャンペーンが展開されている。

特にマツモトキヨシは、個別ブランドのオリジナルキャンペーンに熱心で、資生堂「TUBAKI」、カネボウ「ICHIKAMI」、ユニリーバ「Lux」「Dove」などとのコラボレーションが目立っている。(資料3参照)

店頭におけるブランドの熾烈な戦いは、人気の薄型テレビでも展開された。6月サッカーワールドカップを前に、4月松下電器産業が「ビエラリンク一夜城作戦」を展開した。04年のアテネオリンピックで成功した、春秋2回の新製品大量投入と、一晩で量販店の売場を新製品で埋め尽くす作戦である。

シャープ、日立も鮮度の高い新製品を年2回投入することで対抗し、ソニーも薄型テレビの売場にDVDレコーダーとの関連陳列を徹底した。この結果、家電量販店の旗艦店では、「メーカー別展示」が一挙に広がった。

ブランド価値認識への試み

06年のプロモーションでは、こうした「メガブランド」の戦いの一方で、ブランドの関心・認識を高めるコミュニケーション手法が話題となった。

ボーダフォン(現SoftBank)は、「LOVE定額」という、特定の人との通話やメールがし放題というプランを促進するキャンペーンを展開した。3000人の恋愛に関するアンケート結果を「ケータイと恋愛10の法則」に掲載誌、同時にソーシャルネットワークのMIXI内に「ケータイと恋愛の法則」コミュニティを立ち上げた。現在では閉鎖されているが、それを惜しむ参加者の「★オトコとオンナの恋愛法則★」という独自のコミュニティに引き継がれている。

このコミュニケーションによって得られたケータイのコスト認識が、SoftBankでの参入時の「ゼロ円:ゴールドプラン」への関心に繋がったとも言える。

ハーレーダビッドソンは、「敷居が高い」という認識を変える努力をずっと続けている。HPには、「販売店にいってみませんか」というサイトがあり、全国のすべてのハーレーショップが紹介され、「ショップからのコメント」、「CS向上宣言」が掲載されている。

さらに、“ハーレーグランマルシェ”というイベントでは、単に展示だけではなく、パーツの取り付け体験や、バイクの引き起こし体験等様々な体験イベントが用意されている。また、大型自動二輪免許が無くても体験試乗ができる、自動車教習所内での体験試乗会など、様々なイベントが行われている。さらには、HOG(ハーレー・オーナーズ・グループ)によるイベントの開催など、オーナー(使う人)・販売店(伝える人・届ける人)・ハーレー(作る人・伝える人)の三者で感動とブランドを創造する絆づくりを進めている。

顧客の「好意」の獲得

マーケティングの目的とは「顧客の好意と購買を巡る競争に勝つこと」にある。売価の低下に悩んだこの十数年、プロモーションによる「購買動機」の獲得は、プレミアムのオリジナリティ・魅力や、「値引き」をトリガーとしてきた。

果たしてその方法が、継続的な「好意」を獲得してきたかというと、やや疑わしい。また、「持続的な購買」を確保するという課題においても、キャンペーン後の反動に見舞われた例もあった。

「キリンビール」、一連のヘアケアメガブランド、薄型テレビでの松下、シャープ、ソニーのプロモーションは、「売場」という「購買」接点に繋がるクロスメディア、プロモーションミックスの総合戦略の重要性を物語っている。これまでの、ブランドコンセプトを無視した「山積・売価訴求の売場つくり」とは全く異なっている。ブランドの差別性、そのオリジナリティ、さらに、その価値を表現するための売場つくりとなっている。

さらに、顧客の「好意」を巡る戦いでは、ネットコミュニケーションが重要な役割を担うようになった。

ソーシャルネットワークは、プロモーションメディアとして注目を浴びた。キャンペーンの一応募メディアとしての位置づけや、サイトへの集客だけを考えていたHPから大きく進化し、ブランド・商品の価値を、顧客自らがメッセージするようなメディアに発展してきた。

ブランドとは、「顧客のその商品に対する価値認識・購買の手がかり」である。「価値認識」のメディアとして、一方的に発信されている情報よりは、「シェア(共有)」することによって構築されるという説も説得力がある。

「ブランド価値認識の共有」メディアとしてネットワークのSP活用がさらに進化していくであろう。

店頭での「ブランド認識」

ブランドの価値を、正しく認識していただく作業は、店頭でも実施されている。先に触れたキリンビールの「ご当地グルメとビール」のキャンペーン、さらにクロスMDや、ヘアケアのメガブランドのビジュアルマーチャンダイジングやチェーンとのオリジナルキャンペーンなどもその典型である。

店頭で告知されているキャンペーンの中には、こうしたメガキャンペーン以外にも、ブランドの価値、他のブランドと識別する「らしさ」の展開が見られる。

「受験生の必須アイテム」となった、「きっと勝つ」のゴロ合わせで有名なネスレの「KITKAT」は、受験シーズンの期間限定、さらに地域限定、そのうえで展開企業限定商品を含む「きっとサクラサクよ」キャンペーンを展開している。東京限定の「KIT KAT エキゾチックTOKYO」で「オリジナルKIT KAT KIOSK」を開店し、「オリジナル親子バックが当たる」キャンペーンを展開している。(資料4参照)

花王エコナは、「体に脂肪がつきにくい」を表現するために、「オリンピック」オリジナルの「エコナ・おいしくヘルシーキャンペーン」を実施、そのコンセプトを表現する「オムロン・カラダスキャン」を20名にプレゼントした。(資料5参照)

飲料メーカーの中でも、野菜・健康を重視していると定評があるのは「カゴメ」である。数多くのチェーンで「野菜」をキーワードにオリジナルキャンペーンを展開している。西友とは「8月31日(ヤサイ)」の「野菜の日」にちなんで、「西友の選べるギフト・こころ結び」と「カゴメ野菜ジュース詰合わせ」が各400名に当たるキャンペーンを展開した。(資料6参照)

同じく「野菜」と関連深いのがキューピーである。いなげやとのタイアップで、「日本ベジタブル&フルーツマイスター協会 」が設定した「野菜ソムリエ」が選んだ「旬のこだわり野菜」が当たるキャンペーンを実施した。

また、「たらこ・たらこ・たらこ」で一挙に著名になった「たらこキューピー」をキャラクターとして、西友と「たらこキューピーmp3が当たる!」を企画した。これも、他にない「キューピーの価値」である。(資料7参照)

「食のこだわり」に関しては、「地域のこだわりの食材の生産を支援しつつ、顧客にその食材を提供する」、まさに「地産地消」に各チェーンが取組んでいる。

イオンは、それを「フードアルチザン(食の匠)」と称した活動を展開している。サントリーはその活動とタイアップし、「食の匠プレゼントキャンペーン」を企画した。飲料メーカーとして「食文化を守るサントリー」とのメッセージであろう。(資料8参照)

ここに挙げたケースはメガキャンペーンのように派手ではない。また、このキャンペーンでどれだけの「売上が増えたか」と問うほど「売上至上主義」の企画ではない。

各メーカーの「ブランド」、そのコンセプトを、「(展開する)時期・催事に合わせて」、場合によっては「このエリアの」「このチェーンだけの」メッセージに翻訳して提供している。まさに、「ブランド価値の(顧客の)認識」を向上させるプロモーションとして企画されているのである。

そして、その展開のほとんどが「(個別)チェーンとの共同企画」である。「ブランド価値」を「共有」していただける「チェーン」に限定し、そのチェーンだけのオリジナルなキャンペーンとして「差別化」されている。

チェーンのプロモーション

店頭を軸としたキャンペーンは「メーカー」主体に展開されるケースがほとんどであるが、最近では「チェーン主導」のキャンペーンも目立っている。

特にコンビニエンスストアでは各社ともチェーンオリジナルのキャンペーンを定期的に実行するようになっている。

サークルKサンクスは、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」とのタイアップで、「アステカ金貨をかたどったゴールドメダル」100名を始め、全5000名が当たる「デッドマンズ・チェストフェア」を展開した。(資料9参照)

マツモトキヨシでは、店頭で配布されている「digimaga」で、各メーカーとのタイアップキャンペーンを掲載している。5月には「口臭ケア」を統一テーマにして、各社のオーラルケアアイテムを紹介し、対象商品を購入したお客から、「バケツプリン」が100名に当たるキャンペーンを企画した。一般的な「オーラルケア」ではなく、客層を意識して「口臭」をテーマにし、口臭の5大要素、つまり虫歯、歯周病、ドライマウス、舌苔、入れ歯をケアする商品を紹介している。(資料10参照)

サークルKサンクスでも、ケアをテーマにしたプロモーション「THINK BODY」を展開している。

サークルKサンクスのHPサイトでは、体によいメニュー、アイテムを紹介する「バランス食堂」「フードメニュー」「THINKBODYショップ」や、「エクササイズメニュー」、「生活習慣情報の入力コーナー」「モニターレポート・ダイエットに挑戦」などの情報が掲載されている。

店頭では、適時プレゼントキャンペーンが実施され、7月では「チャレンジカード」、「その場でクーポンが当たる」「応募してバランスボールなど2000名が当たる」企画が展開された。(資料11参照)

CVSやスーパーで「予約販売」が強化されていることを、前号で紹介しているが、この「予約」にも、チェーン独自のプロモーションテーマになっている。

11月のボジョレーヌーヴォーはすっかり、チェーン独自の調達力が発揮され、百貨店を含め「大手小売企業」の催事となっている。

サークルKサンクスでは、予約1本につき1個のロゴ入りワイングラスをベタ付けしている。さらに、「ヌーヴォー通信」を発行し、解禁日までのカウントダウンムードを煽っている。(資料12参照)

サミットでは、ボジョレーヌーヴォーにちなみ、「ワイン教室・ボジョレーヌーヴォー篇」をキリンビールとの共同企画で実施した。(資料13参照)

メーカーの小売りチェーンとの取組みテーマとして、こうした「教室・勉強会」が人気となっている。

「予約販売」では、ヌーヴォーに続く「クリスマスのデコレーションケーキ」も強化催事となっている。

ミニストップでは、「早期予約」を促進する目的で、12月5日までの予約に対して、もれなくサンタランドからのクリスマスカードが送られ、さらに抽選で110名に絵本やクリスタルツリーが当たるプレゼントを実施した。(資料14参照)

チェーンの「予約販売」は、「おせち」や「恵方巻」など催事に留まらず、オリジナル商品にまで、「予約プロモーション」が拡大されている。

サンクスでは、東京・市ヶ谷の「麺処・くるり」監修の限定数量販売の「くるり」を「予約セール」として、「各店先着10名」に「くるりのオリジナル手ぬぐい」をプレゼントした。(資料15参照)

ブランド共同:メーカータイアップ

チェーン主導のプロモーションが目立ってきている反面、「ブランド共同」:メーカータイアップケースは驚くほど少ない。

カルビーは、サントリーとタイアップし、「Wでおいしいグッズプレゼント」を実施した。アウトドアグッズが抽選で500名に当り、外れた方から及び抽選で1000人にカルビーとサントリーのなっちゃんのセットが当たるキャンペーンである。商品のパッケージにその告知を掲載するほどの注力度であった。(資料16参照)

この他、メーカー間タイアップは「シマダヤ・ミツカン」「明治乳業・サッポロビール」「カルロ・ロッシ・雪国まいたけ」が見られた程度である。

メーカー間ではないが、コカコーラ・茶系飲料「一」「爽健美茶」「からだ巡茶」のボトルネックに「マクドナルドハンバーガーの無料クーポン」が添付されていたケースは注目される。コカコーラとマクドナルドという馴染み深いタイアップのイメージも、両社の「らしさ」の発揮のひとつかも知れない。(資料17参照)

「ブランド価値の認識」、このテーマに対するアプローチの方法はますます多様になっていくだろう。

共同を求められる企業

店頭で告知されているプロモーションをデータ化してみると、意外な発見がある。その実施チェーン・メーカーに偏りがあるという点である。特に、メーカー・チェーンの共同企画では、よりその傾向が顕著になる。
(資料:次項よりの一覧表参照)

チェーンでは「イオン」「ダイエー」「マルエツ」「いなげや」「サミット」「マツモトキヨシ」、メーカーでは「花王」「資生堂」「ユニリーバ」「カゴメ」「キューピー」「キリンビール」「サントリー」「ミツカン」「コカコーラ」などである。これらのメーカー、「企業名:ファミリーネーム」だけではなく、「ブランド」として、他と識別される商品をもっているメーカーで、しかもチェーンのバイヤー受けの良いメーカーである。

店頭でも「ブランド価値認識」において、「ブランドの格差」が進行していきそうな感じである。