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■「積極的な平穏」という豊かさ
1980年代のアメリカでは、「カウチポテト(Couch Potato)」という言葉が広く使われた。ソファに座り、テレビを見ながら「何もせずに過ごす」人をジャガイモになぞらえた表現である。家庭で気楽に過ごすライフスタイルを象徴する言葉だった。その豊かさは、外の刺激から離れ、受け身でくつろぐことにあった。
その後、人々が求める豊かさは、モノの所有や特別な体験へと広がっていく。より多くを持つこと、より多くを経験することが価値とされてきた。しかし近年、その価値観に変化が見られる。
Pinterestは毎年「Pinterest Predicts」というトレンド予測レポートを発表している。2026年版では、「消費者は世の中やSNSの絶え間ない情報の波に疲れ、安心感や信頼できるもの、そして前向きな気持ちを求めるようになる」と分析し、「Comfort(心地よさ)」「Self-preservation(自分を守る)」
「Everyday Rituals(日常の儀式)」「Escapism(過度な刺激からの離脱)」を重要なテーマとして挙げている。
人々の関心は、より刺激的な体験を求めることから、日々の暮らしの中で安心感や充足感を得ることへと向かい始めている。
それは、かつてのカウチポテトのように「何もせずに休む」ことではない。散歩をする、部屋を整える、ゆっくりコーヒーを淹れる、自然に触れる。暮らしの中で自ら心身を整え、心地よい状態をつくることに価値が見出され始めている。
私共は、このような日々の暮らしの中に穏やかさや充足感を見出し、自ら育んでいく価値観を「積極的な平穏(Active Calm)」という豊かさとして捉えたい。
豊かさの重心は、「何を持つか」「何をするか」から、「どのような状態でありたいか」へと移りつつあると考える。本稿では、このことについて読み解いていきたい。
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26年 VOL2(No.252)
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