日本の伝統食品、漬物。その市場で「きゅうりのキューちゃん」はブランド確立した稀有の商品である。
しかも発売は1962年で、46年にも及ぶロングセラー商品でもある。漬物という伝統的食品でなぜ、
どのようにブランドを確立しえたのか。発売当時は業界の常識を覆す様々な革新に挑戦している。
しかし、商品の革新性だけではブランドを確立する保証にはなりえない。不断の革新がともなわなければ、
ロングセラーブランドとして消費者に支持されることはない。
40年以上に渡って「きゅうりのキューちゃん」がロングセラー商品であり続けた理由はなにか。
伝統的食品である漬物でブランドを確立できた要因は何か。
■消費者ニーズへの“同期化”
「きゅうりのキューちゃん」のブランド構築を可能にした根本的要因は、消費者ニーズへのたゆまざる
“同期化”といっても過言ではない。1962年発売以来、ほぼ3〜5年ごとのモデルチェンジによって消費者の価値観
や嗜好性の変化に対応した商品に進化させてきている。その進化の中身は品質であり、パッケージである。特に
パッケージの改良は規格品をそのまま利用するのでなく、資材開発から行っていることが特筆すべきことといえる。
■マーケティングコミュニケーションの“継続”
「きゅうりのキューちゃん」のブランド構築を可能にしたもう一つの要因が様々な接点での継続的なコミュ
ニケ−ションである。もちろん発売当初では珍しかった擬人化したネーミングとキャラクターの使用や革新的なパッ
ケージデザイン、積極的なTVCMなどのマーケティング活動は画期的であったが、それ以上に重要なことがコミュニケ
ーションの“継続”である。それは消費者キャンペーンによる訴求、広告キャンペーンによる訴求、販売店店頭活性
化支援などの立体的なコミュニケーション策を継続して展開していることだ。
■客観化と見える化の“オーディット”
「きゅうりのキューちゃん」をはじめとした東海漬物の基本にあるのがマーケティング・オーディット
(監査)という考え方ではないか。
そのために企業や商品のブランド力や消費者支持構造、店頭カバー率など、数値化して自社のブランドの
位置づけやポジショニングを常に確認している調査徹底の原則がある。しかもライフサイクル、ポジショニング、
イノベーター普及理論、競争地位戦略など、マーケティング基礎理論にも忠実である。この当たり前を当たり前に
できることこそ、東海漬物のマーケティング力の源泉である。
■製造工程の“独自化”
「きゅうりのキューちゃん」のブランド構築は以上のような要因が大きく寄与しているが、
もっと重要な要因がベースにある。それは技術開発力と製造工程の“独自化”である。
競争優位の条件は差別化された他社の真似のできない商品である。しかし、ある商品が売れれば、
類似商品がすぐに追随してくることはどの業界も宿命といえる。しかし、外見は似せても技術と製造工程
までは真似ができない。この技術開発力をさらに強化しようとするのが「漬物機能研究所」である。
縷々述べたマーケティング活動と独自技術を生み出す研究開発活動の両輪が、東海漬物の高付
加価値商品の創出と強いブランドを構築を可能とする、まさしく本質的な源泉といえよう。