「トマーテ」の販売が好調だ。2007年9月発売以来、1カ月強で年内目標の24万箱を販売、12月までに50万箱という勢いだ。
低アルコール飲料カテゴリーはここ数年堅調に推移しているが、各社がしのぎを削る激戦区でもある。「トマーテ」は、
カゴメとの初の共同開発商品で、缶入りの低アルコール飲料では初めてトマトを素材に使った業界初の商品である。
“野菜を使用した低アルコール飲料”という新しいカテゴリーを作り出そうとしている。
■新カテゴリー開発
「トマーテ」好調の要因は、ひとえに“野菜を使用した低アルコール飲料”という新たなカテゴリーを創造したことにある。
酒類市場全体がシュリンクする中で、単なる新製品による需要の拡大には限界がある。
さらに低アルコール飲料カテゴリーの中をみても95%がレモン、グレープフルーツ中心の果汁で構成されていた。その中で
“いままでにない”フレーバーを作り出すのは至難の業であった。新たなカテゴリーをつくる新製品開発こそ、現代の市場環境の中
でのマーケティングの焦点といえよう。
■“引き算”から“足し算”
「トマーテ」のキーワードは“健康”である。健康へのアプローチは、これまではもともと含有している余分なものを取り除
くという“引き算”の発想であった。「トマーテ」は、健康に良いものをプラスオンするという“足し算”の発想から生まれている。
“引き算”の発想では、既存商品にネガティブなイメージを作り出していますことにつながりかねない。“足し算”の発想は
既存商品との兼ね合いからみても重要な発想である。
■「トマト」からのカテゴリー開発
野菜使用の低アルコール飲料というカテゴリーを開発するにあたって、「トマト」を尖兵にしたことの意義は大きいように思う。
野菜系のソフトドリンク市場は、「トマト」は200億円、「野菜100%」が500億円、「野菜と果汁ミックス」は1,000億円強で、
「トマト」は市場規模は小さく、伸張率は横ばいであった。もちろんカゴメとの提携という背景があったにせよ、「トマト」
から導入したことに意味は大きいのではないか。
■カゴメとの協働で接点拡大
「トマーテ」の成功要因を縷々述べたが、最大の要因はカゴメとの協働であることは言うまでもない。カゴメ独自の素材と技術に
裏打ちさた果汁を使用することができたことが「トマーテ」開発の最大のポイントであった。
しかし、カゴメとの協働の成果は、商品開発だけではない。売場はもちろん顧客との新しい出会いの場がつくれたことも大きな
相乗効果といえる。
それはイタリアンフェアやカゴメ大陳への陳列に加え、生鮮食品のトマト売場に並べるなど、いままでのチューハイやカクテルに
はない売場に並べることができている。
また、カゴメと共同で、「トマーテ」を使ったレシピのホームページでの提供やカゴメの料理教室で、「トマーテ」を使った料理の
提供など、飲むということだけでなく、他の用途提案による需要の拡大への取り組みなど、いままでにないプロモーションが実現できている。
「トマーテ」は新カテゴリー開発という挑戦に止まらず、他業種メーカーとの協働という新たなマーケティングの地平を切り開く先駆的事例といえよう。