東京ガス・都市生活研究所は生活者をより深く長期的に捉える一つとして世代観の研究に取り組んでいる。
今回の世代研究では特に「食」に着目している。その理由として、食は生存に不可欠で人々の暮らしに密着
した行為であること、昭和から平成にかけて日本人の食生活が大きく変化していること、そして、食事づく
りは男女の役割意識に密接に関連していることである。
■「食」に基づく九つの世代
昭和生まれの全世代は九つの世代区分に分けることが出来る。それらは「粗食世代」「整食世代」「創食世代」
「街食世代」「宴食世代」「遊食世代」「選食世代」「装食世代」「ゆる食世代」と名付けられた。
世代を分ける一番大きな社会区分として、戦争を経験したかどうかということ。戦前・戦中生まれか、あるいは
戦後生まれかということある。次に、経済情勢に関しては成長の時代か、不況の時代か、またバブルの経験の有無
と体験時期。社会制度に関しては、男女雇用機会均等法や労働基準法の改正の影響を受けたかどうかで区分されている。
食に関連する区分は、戦争による深刻な食料不足を鮮明に記憶しているかどうか。それから、戦後の食糧難を経験
しているのか。その後の飛躍的な食生活の向上を経験したかどうか、カップラーメンやレトルト食品などの加工食品
をいつ経験したか。また、バブルの影響をいつ受けたのか。どの様な経済情勢下で社会人になったのか。そして、
最後の2世代は、高校の家庭科が男女必修かどうか、中学の家庭科が男女必修かどうかという項目で分けられている。
■九つの世代の特徴
粗食世代(78〜87歳)「もったいない」
食べられるだけで幸せ。幼少期に食べることに困窮した経験があり、根底に食べ物のありがたみを感じている世代。
整食世代(68〜77歳)「芋・麦・脱脂粉乳、学校給食」
ちゃんと食べる。子どもの頃に疎開を経験、給食が始まり、バランスの取れた食事を意識するようになった世代。
創食世代(63〜67歳)「コーラ初体験」
戦後の新たな食文化の創成。欧米文化に触れ、日本の新たな食文化を創りはじめた世代。
街食世代(56〜62歳)「ファストフードの始まり」
レトルトやインスタント食品などによる調理の省力化とともに、外食形態の多様化によって、
食のシーンの幅を拡げた世代
宴食世代(49〜55歳)「高級グルメ、ボジョレヌーボー」食の贅の極みを認知・経験しながら、
日常の食の簡便化も取り入れ、ハレとケの幅の拡大を進めた。
遊食世代(42〜48歳)「イタメシ・エスニック」
家庭での調理の省力化から外食の形態まで、様々なシーンで食をエンタメ化して選択肢を拡げた世代。
選食世代(37〜41歳)「低価格の始まり」
前の世代が創り出し、出揃った感のある食の選択肢から、自分の価値観に基づいて取捨選択をした世代。
装食世代(32〜36歳)「男子も家庭科」
男女ともにカフェやスイーツ、新食材に関心が高く、
日常の食をおしゃれ化して、楽しむ世代。
ゆる食世代(25〜31歳)「弁当男子」
料理に対する意識が男女フラットで、かまえることなくゆるやかに自分の食スタイルを模索する世代。
■特徴ある世代観
各世代の「思い出の味」には各世代の特徴がよく表れている。家庭の和食から洋食、家族での外食、
インスタント系食品、ファストフード、世代が下がると、はやりのスーツなどもある。もう一つは
「男性の料理意識」これも世代間で大きな変化が見て取れる。世代観は生まれ育った時代を反映す
るもので、世代固有の特徴は各世代の生活者の嗜好に影響を与え続けると考えられる。世代観の研究
は生活者をより深く長期的に捉えることが可能である。