2011年度の小売業の決算は「減収増益」である。「増収増益」で無いところがポイントである。
3.11以降、チラシが印刷できないという状況が続いた。さらに、価格訴求は陰を潜め、大々的な
キャンペーンも殆ど姿を消してしまった。このことが、決算数字に大きな影響を与えたことは言
うまでもない。広告・キャンペーンを打たなければ利益が出る。この構造こそが実はいびつな構
造なのである。
■節電効果
関西地方は原発再稼働で、最悪の事態は脱したように見える。昨年の夏、関東はほんとうにどうな
るのかという不安でいっぱいだった。それが原発や震災から遠く離れた関西で、関東よりも電力供
給が悪くなるとは誰が予想しただろうか。節電という言葉は以前から言われていた。もう、猛暑が
普通の夏になってしまった感のある日本で毎年電力供給がピンチを迎えていた。しかし、震災によ
って、他人事で済ませていた感のある節電が無視しできない事態となってしまった。それが、小売
業の決算数字にも大きな影響を与える結果となった。言葉は悪いが「節電」というスローガンは今
まで顧客に遠慮して、実行を見合わせてきた事も実行できるようになったのである。
ただ、広告費の減少も節電効果も、震災という特別な事情の元で起きたことである。節電はともか
く広告費の抑制は続くものでは無い。今年度の決算がどうなるか。それが、今後の小売業に将来を
占う事になると思われる。
■顧客接点の再構築
「専門店集積」が曲がり角に来ている。郊外型の大きなショッピングセンターが乱立に近い状態とな
った。“何でもある”というのはもはや通用しなくなっている。百貨店業界がそうであったように。
郊外型のショッピングセンターに行くと、専門店としてテナントに入っている店はどこも同じような
ものばかり。それが日本中何処へ行っても金太郎飴のように代わり映えしないのだ。それがそろそろ
限界に来ている。そこにいち早く手を売ったのがイオンである。それは業績にも既に表れている。今
後のイオンの展開は小売業全体の顧客接点の再構築を進めるものになるだろう。
■客層の拡大
これまでも、高齢化社会の到来によるシニア対応はずっと言われてきた。しかしながら、本当に意味で
のシニア対応ができていた所は少ない。商品を単にシニア向けに品揃えしただけに留まっていたのであ
る。コンビニでもシニア層は大きなターゲットだ。遠くに買い物行けない、夫婦二人、もしくは単身で
量がいらないとい言うことでコンビニは利用しやすかった。ここに来て、大手GMSによる小型店出店
競争は、このシニア層の取り込競争が激烈になることを物語っている。イオンのシニア対応は単に商品
だけでなく、サービス対応まで意識したものになっている。GG(グランド・ジェネレーション)。とて
も気になる戦略である。
■小売業に応える
小売業の悩みに「人材開発」ということが言われている。店頭開発が個店毎に展開する必要になってきて
いる今、いかに的確に情報を収集し、分析するかが勝負である。この点はメーカーにとって大きなポイン
トとなる。調査能力、情報収集能力、分析力など今までの商品開発や流通開発に対応してきたノウハウが
活きるポイントである。この部分を強化すべきである。そのためには社内の精鋭を揃えなければならない。
そして専門部隊化し、小売りのニーズに応えていく。必要であれば様々な専門機関との連携も必要だ。それ
が出来るのはメーカーなのである。