セキスイハイムのケースの見方

 

セキスイハイムの事例は、「環境」をマーケティングやブランディングにまで結びつけた先進事例と言っても過言ではない。

環境対応は、現在多くの企業が製品やサービス、経営を通じて積極的に推進している。しかし、その取り組みと比較して、マーケティングと有機的に連動しておらず、CSRや環境レポート、Webでの「開示」というレベルに止まっているのが現状ではないか。

環境への対応がブランドやコーポレートイメージ、さらには自社商品・サービスが消費者の選択に結びつくような「エコ(環境)マーケティング」が必要とされている。

◎お客様は省エネ技術で住宅は建てない?

「エコ(環境)マーケティング」で難しいのが、商品の省エネ技術をストレートに説明してもお客様には伝わらないことだ。“「実力不明の定性訴求」に単純な「実力定量表現」”は勝てない。

セキスイハイムはある意味で逆転の発想によってこの大きな壁を乗り越えた。それが「エコロジーはエコノミー」である。光熱費を削減することが結果として省エネにつながる。消費者への実利メリットを訴求したことが大きい。

◎見える化

消費者へのわかりやすい訴求は、光熱費にとどまるものではない。見込み客や顧客への様々なわかりやすい伝え方の工夫がある。ある意味で「見える化」ともいえよう。

例えば年間の光熱費(円)、CO2排出量(kg)、ライフサイクルコスト、光熱費シミュレーション、光熱費ナビ、さらには購入客の光熱費実績分析による省エネ生活個別提案にまで及んでいる。

◎「モノ」より「考え方」

「見える化」は検討客や購入客には有効であるが、マス広告、特にTVCMでは難しい。

セキスイハイムは「光熱費ゼロ住宅」をキーワードに、住宅という「モノ」ではなく、「考え方」をシリーズ化して伝えてきている。住宅メーカーのCMにもかかわらず、住宅そのものや生活が出てこない内容となっている。

これは、「光熱費ゼロ住宅」を一つの商品タイプに限定せずに、すべての商品をくくる統合コンセプトとしたことが、ブランドにまで高め得た要因といえよう。

◎一貫した、ブレのないマーケティング

セイスイハイムの「エコ(環境)マーケティング」の秀逸さは、単純な実利訴求という表層的な表現テクニックではないことである。

それは事業やマーケティングすべての活動に事業理念が一貫していることである。

事業理念は「地球環境にやさしく、60年以上安心して快適に住み続けることのできる住まいの提供」である。その理念を生産・生活・廃棄時全方位取り組み、住宅省エネ性能の追求、個々の商品を超えた統合コンセプト化、潜在顧客・検討顧客・購入顧客コミュニケーションなど、すべての活動に徹底されている。

◎技術屋マーケティング

このようなセキスイハイムの取り組みを可能とした大きな要素が「技術屋」発想にある。

環境や省エネという技術的要素が中心であったということはもちろんであるが、エコ(環境)マーケティングの一貫性は、技術屋の愚直さであったのではないだろうか。