洋風スパイスが日本の家庭の食卓に静かに浸透している。洋風スパイスの市場規模は約76億円。規模は決して大きいとは言えないが、食品市場が伸び悩んでいる中で、一貫して伸長している分野だ。
エスビー食品では積極的なマーケティング活動でこの洋風スパイス市場の拡大と活性化に取り組んでいる。
◎市場を拡大する多ブランド戦略
洋風スパイス市場は、明確に3極分化傾向にある。価格帯別構成比で見てみると「150円以下」31%、「151〜299円」44%、「300円以上」25%という構成比になっている。
この3極化に対応してエスビー食品は、「スマートスパイス」「フォション」「有機スパイス」「スパイス&ハーブ」などの多ブランド戦略に果敢に挑戦。アイテム数は434にも及ぶ。
「メガブランド戦略」と言われるように、一般的にはブランドやアイテム数は集約化が大きな流れである。
市場のパイを増やすためのエスビー食品の多ブランド戦略は注目に値する。
◎“食のIQ”の改善−マルチ接点
しかし一方で、洋風スパイスの日本市場は欧米と比べるとまだ10分の1以下に過ぎない。日本の主婦の3割が洋風スパイスを使ったことがない、約半分の世帯がスパイスを置いていないのが実態でもある。
この状況に対して、消費者への啓発活動を中心にした多元的なコミュニケーション活動が不可欠である。
エスビー食品は“食のIQ”の改善ともいうべきため地道なマルチな接点開発にも取り組んでいる。「ホームページ」はもちろん「スパイス&ハーブ総合研究所」「とっておきのハーブ生活」「スパイス&ハーブサポートデスク」さらには「パイロット店舗SUN’S COURT」など多元的である。
◎ブランド戦略としてのパッケージデザイン
エスビー食品の取り組みで特に注目したいのが、コミュニケーション戦略としての商品のパッケージデザインである。
このデザインへのこだわりは徹底している。キャップの丸型形状、キャップのカラーコントロール、天面印字、アイテムひとつひとつのボタニカルアート、グラデーションやミルの刃をイメージしたラベルデザイン、円錐形状のボトルデザインなど、機能性の追及と合いまってデザイン性を徹底して追及している。
単にビジュアルとしてのデザインだけでなく、企業のブランド戦略やマーケティング・コミュニケーション戦略としてデザインの重要性を再認識させられる。
◎統合組織−Corporate Design Office
このデザインマネジメントに大きな役割を果たしているのがCorporate Design Officeのメッセージデザインユニットで、その組織的な意味と役割は大きい。
その役割は、パッケージデザインに止まらない。広告、広報、ポスター等の各種販促物、ショップやレストランなどの店舗デザインまで、エスビー食品の情報発信、デザイン制作のすべてをメッセージデザインユニットが管理・担当している。
エスビー食品の事例はマーケティングにおけるデザイン戦略の重要性を示唆している。