自動掃除機「ルンバ」は2002年にアメリカのアイロボット社で誕生した製品である。
ルンバは10年前と比較すると大きく改良され進化しており、そこには日本のお客様か
らから頂いたご要望も数多く使われている。
■アイロボット社のコンセプト
ルンバが誕生したアイロボット社はロボット技術で世界を変えていこうと1990年に
設立された会社である。アイロボットが志向するロボットには「自立」と「モビリテ
ィ」がコンセプトの一つになっている。また、3D(Dull、Dirty、Dangerous:単調、
汚い、危険)な作業は人間がやるべきことではないと考えていて、自分達のロボット
で代替し、それらの作業から人々を開放し、世界を変えていこうとしている。
■セールス・オンデマンド社の競争力
海外ブランドの作る製品を、そのまま日本で販売してもうまくいかないことが多い。
それは、戦略とマーケティングとセールスが分断され、一貫したサービスを提供できて
いないからだ。セールス・オンデマンド社はこれらの一気通貫のサービスを海外のメー
カーやブランドに供給することがひとつの競争力になると考え、2004年に設立された。
日本の消費者の期待値は非常に高い為、製品自体を日本向けに改良すること、サービス
面での改善も必要だと考えている。商社であっても、あたかも海外企業の子会社のよう
なフルファンクションでサービスを提供することを大切にしている。
■ルンバ普及へのハードル
最初の課題は、製品の認知が全くなかったということ。ルンバの認知度というより、
掃除用ロボットというカテゴリー自体の認知も全くない。まずは徹底的にデモンストレ
ーション販売である。白物家電売り場には、そもそも目的のある人しか来場しない。
「ルンバを置くと掃除機売り場が活性化する」と提案。掃除機に目的がない人は素通
りしてしまう場所でルンバが動いていると、「何これ?」「こんなの見たことない」
と多くの人が足を止める。5〜7年リプレースの需要の中での売上ではなく、ルンバの
売上プラス、それ以外の掃除機の売上も上がり、売上増が達成できるというストーリ
ーを提案してきた。
次の壁が製品理解である。日本では掃除機は吸引力が強いものが良いという吸引力神
話が出来上がっている。ロボット技術で、部屋中を掃除することを理解しても、最終的
に吸引力はどれぐらいかという話になりそこで終了となってしまうことがある。そこで、
人が行う掃除は1回で済ますには、吸引力が必要かもしれないが、人は見えているところ
しか掃除せず、簡単に済ませ、掃除した気になるので、実はきれいになっていない。人
には限界があり、掃除はしたくなく、飽き、すぐに終わってしまうが、ロボットは与え
られたミッションをとことんやる。
ルンバは部屋の大きさに応じ15分から1時間まで掃除時間を自動で変え、きれいになるま
で実行。自分でやる掃除よりもずっときれいになる、この事実を証明するエビデンスデー
タを出していくことである。
最後の壁は、都市では随分なくなったが、地方にはまだ残っている日本人気質である。
日本人は真面目で、楽をしたら罰が当たるという気持ちが根強く、勤勉のメンタリティは
引き継がれている。この壁を乗り越える為の提案とは、「家庭内にも3D作業はあります。
掃除や洗濯はマイナスになったものをゼロに戻すだけです。お皿を一生懸命洗ってもあく
まできれいな白いお皿に戻るだけです。それに対して、料理はゼロからプラスを生み出す
クリエイティブな作業なので、こういうものにこそ人間は時間を使うべきです。掃除はロ
ボットに任せて、空いた時間にお料理や趣味に手をかけてください。二つの家事が同時に
できます」。
時短にも貢献する、一歩先の生活創造への提案こそがルンバの持つ本来の価値である。