香りを使ったプロモーションが注目されている。その利用領域は多様だ。
食品スーパーでカレーの香りを流したり、ボジョレー解禁前にワイングッズ売り場
でぶどう畑の香りを流して売上げを伸ばすことに一役かっている。さらには、チョ
コレートショップやスイーツショップ、あるいはコンビニエンスストアなどで利用
されて売上げを倍増させている事例もある
■「芳」香ではなく「放」香
この「香りで販促・演出」 事業を手がけているのがプロモツールだ。香りを販促・演出に限定してビジネスを展開している日本で唯一のユニークな企業といえよう。
このプロモツールの特徴を表しているのが「放香」の「放」という文字だ。一般的には「芳香」というように「芳」と表示するが、芳しくない香りも扱うことから、
「放香」という文字をあえて使っているという。
2005年9月に、映画「チャーリーとチョコレート工場」で、映画館内でチョコレートの香りを出して話題をさらったことを契機に、最近でも一昨年の「ガイアの夜明け」
を皮切りに、今年に入って朝日新聞、NHK「ゆうどきネットワーク」、フジテレビの「めざましテレビ」など、かなりの頻度でマスコミに取り上げられている。
■販促からブランド戦略へ
香りで販促・演出の導入実績をみてみると、イベントや展示会の演出と商品やカテゴリーの販売促進という用途がほとんどを占めている。
日本の場合は販促用途に偏った注目のされ方をされているが、欧米では事情がかなり異なる。香りの利用として
「企業を象徴する固有の香り(匂い)」を意味する「コーポレート・セント(CS)」が企業のイメージ戦略としてかなりポピュラー
になりつつあるという。かつて20年以上前にCI(Corporate Identity)がアメリカから導入され今ではすっかり定着しているが、
このCS(Corporate Scent)戦略も日本で当たり前になる時代が来るのではないか。
■記憶と感情を呼び起こす
香りはなぜ販促に利用されるのだろうか。人間の嗅覚は五感の中でも特異な性質をもているといわれている。
例えばスポーツにおいてメンタルトレーニングに香りが利用されている。かぐことで、集中力を高める脳波のアルファ
波を強くできるという。また、ワサビのニオイは熟睡している人を起こす作用があり、火災発生時に聴覚障害者に火災
を知らせる補助警報装置に使われている。人間が感じる「味」も、舌だけでなくにおいでも左右されることが最近の研
究で分かってきている。
このように香りは五感の中でも、記憶と感情と強い結びつきがある。記憶や感情を呼び覚ますことが店頭で衝動
買いを誘うことになるのだろう。
香りの販促への利用は単に話題だけでなく、売上げアップという効果がともなっているからこそ注目されて
いるといえる。しかし、日本では欧米とは違って香りをプロモーションに使う試みはようやく緒についた段階であり
課題も多い。特に香りに対する日本の保守性から、商品の香りを人工的に出すことの“後ろめたさ”が日本での普及・定着
に大きな壁となっている。
一方で、消費者の香りに対する嗜好の変化やデジタルサイネージ、ショッパーマーケティングなどへの注目から、
今後さらに香りのプロモーションへの活用に対する期待も大きい。