■購買を阻害する売場
売場には間違った常識や通念が多くある。分断された売場、カテゴリーの壁、地域特性を無視した画一的
な売場など、売る側の都合による売場が大きなチャンスロスを生んでいる。売場の過去の常識や通念を打
破するには様々で大きな壁が立ちはだかる。経営者の壁、本部の壁、部門の壁、現場の壁など認識と行動
を変えることは容易ではない。
■ショッパーベースの個解
ピップトウキョウ鰍フ購買動向調査研究所では、16年前からこの壁を乗り越える準備をしてきている。そ
の武器が「スパイダー分析」で、その主要な調査分析手法が実際の売場での購買動向調査だ。これは従来
の客動線調査ではない。来店客が売場をどのように回遊し、立ち止まり、実際に商品を手にしたのか、購
入したのかという、まさに購買動向を分析することによって売場の真実を発見する装置である。
いわゆるISMであるが、従来のISMと違うのは徹底した買物客視点だ。それは一般的な消費者視点ではない。
その商圏の、その店舗の、その売場の、買物客の、購買実態に焦点を当てていることだ。だから売場の課
題や解決策は個別であり、まさしく個解となる。
■なぜ買わないのか?
さらに大きく異なるのは「なぜ買わないのか」、「売れていない商品」に焦点を当てていることにある。
もちろん従来売れていないことに焦点をあてたのはPOSによる死に筋排除である。しかし、排除するのでは
なく、売れるための課題を発見し、その解決策を導き出すとことに購買動向調査の特徴がある。
この非購入者は150坪の店舗では平均9%という。来店客が1日1000人来るお店であれば、1ヶ月2700人のお
客さまが折角店舗に来ても何も購入せず帰ってしまっている。この認識は非常に重要である。
小売の売上げは客数×客単価。客単価は商品単価×買上点数だ。商品単価はこの不況で下がる一方である。
そうなると最後の拠り所は買上点数ということになる。せっかく来店されたお客さまをいかに「わかりや
すく」、「探しやすく」、さらに「気づき」のある売場をつくるかが、店頭の大きな課題をいえよう。
■非購買者への購買促進
では「わかりやすく」、「探しやすく」、さらに「気づき」のある売場をどのようにつくったらよいのか。
購買動向調査から分かったことのポイントの一部は以下の通りである。
・商圏にプラス年齢別MD
・直線させるか店舗構造
・鮮度と地域性のあるMDとプロモーション
・商品のくくりとゾーニング、レイアウト
・定番売場の強化
・心理的バリアを低くする店頭表現
・立ち止まらせるレジ前活性化
■事実は通念を超える
売場の課題は小売の現場で働いている人にとってはなんとなくわかっている場合が多いものだ。しかし、
わかっているが実行できない。わかることとできることの間には大きな壁がある。それを乗り越えるのが
「事実」だ。しかも一般的な「事実」ではない。自店のショッパー、買物客の具体的購買動向の「事実」
こそ、「経験」や「通念」を超えることになる。