2012年時でのデータではあるが、美容関連業界の市場規模を見ると、圧倒的に大きいのは化粧品市場で、
2兆2280億円である。そこにエステ市場の3700億円という規模が続く。それと比較すると美容家電は1405
億円弱と、市場規模としては、まだまだ小さい業界である。しかし、2010年から2013年で市場が300億円
も拡大で1.25倍となり、今後も毎年10%の伸びが予想され、大きな伸びしろが期待できる非常に楽しみな
市場と捉えられている。
■美容家電とは何か
美容家電とは基本性能として、スキンケア・ヘアケアができる家電である。美容といってもメイクをする商品
ではなく、ドライヤーやスチーマーのような、肌・髪そのものの良さを引き立てていくベースケアのための商
品である。ユーザーはほぼ女性であり、必需品ではなく、「必欲品」とも言える。洗濯機や冷蔵庫のように、
ないと生活に支障が出る家電ではなく、美容に価値を置かない人にとってはなくても不自由なく生活できる。
例えば、パナソニックではドライヤーも美容家電のカテゴリーに分類している。ドライヤーは市場平均価格が
約3000円の商品だが、美容家電のカテゴリーに入るものは2万円近い価格で販売されている。それは、放って
おいても買い換えが起こるような商品ではなく、常に需要創造が必要となってくるカテゴリーなのである。
■パナソニックの美容家電の歴史
パナソニックの美容家電の歴史をブランドコンセプトの変遷を中心に見てみたい。
パナソニックビューティの代表的な商品はドライヤーとスチーマーである。ドライヤーは77年前から、スチー
マーは家庭用のものは24年前から発売しており、共に長い歴史がある。ブランドコンセプトでは、ナショナル時
代の、「きれいなおねえさんは、好きですか。」というキャッチコピーが広く世間に浸透し、今も記憶している
人は多い。2008年に松下電器の社名変更に伴って、ナショナルもパナソニックに変更され、現在のパナソニック
ビューティも誕生する。当時、美を売る上で、パナソニックとして化粧品と差別化できるポイントをPRしようと
いう方針が掲げられた。それは家電である、電気製品であることだと定義され「美しいをつくる、テクノロジー。
」というコピーが採用されている。
■ナイトスチーマーの大ヒット
この年の徹底した女性の生活実態調査の結果から、忙しい女性は、美容を大切だと思っているけれど後回している
という実態が浮かび上がってきた。様々な調査の積み上げから、睡眠時間に着目し「寝ながらエステができる商品」
の期待に応えるべく「ナイトスチーマー」は発売される。基幹技術のナノイーの説明や肌効果よりも、まず寝ながら
使うという使用シーンをしっかり伝え、寝ている間にエステができるという驚きを感じていただくことに注力したと
いう。結果、ナイトスチーマーは大ヒット。初年度は15万台を突破し、2年目で累計35万台を達成するという、大き
なヒットを飛ばした。
■「忙しいひとを、美しいひとへ。」
そのヒットを受けて生まれたのが、2010年の「忙しいひとを、美しいひとへ。」というコンセプトである。エステに
通わなければ得ることができないようなスペシャルケアが自宅でできる。美容家電にしかできない美の提供、それを
機能軸から時間軸にシフトして、技術訴求からライフスタイル訴求へと変更していくのである。
ただ、この大ヒットをきっかけに美容家電市場全体が活性化した。相次ぐ競合の参入もあり、2012年と2013年で販売の
伸びは停滞する。パナソニックビューティでは、あらためて大規模な調査を実施し、2014年展開として、新規市場開拓、
すなわち新しいターゲットへ向けての施策を打ち出し、新たな一歩を踏み出している。
(詳細は講演録本編をご覧ください)