オムロンヘルスケアの代表商品「カラダスキャン」は、体組成計という新たなカテゴリーを創造した。商品はもちろんだが、親しみやすい広告戦略や体脂肪率というダイエ
ットの新しい指標を消費者に認知させたコミュニケーション戦略も注目された。また、最近では家電量販やドラッグでの売り場づくりや店頭でのビジュアルマーチェンダイジン
グ(VMD)など、インストアマーケティングの取り組みも見逃せない。
高齢化や生活習慣病予防意識の高まりからヘルスケアへ市場にさまざまな業種から参入が相次いでいる。オムロンヘルスケアの事例は、ヘルスケア市場へのマーケティングを考
える上で、見逃せない先行事例といえる。
■市場創造−マーケティングミックス
オムロンヘルスケアは血圧計、体組成計、体温計などいずれも50%以上のシェアをもつ。高いシェ
ア故に毎年の成長を達成しようとすると市場のパイ自体を拡大しなければならない。オムロンヘル
スケアは必然的に市場創造のマーケティングを宿命づけられているともいえよう。
市場創造と拡大のためには多様化・高度化という商品進化が大前提だ。しかし、商品の機能が高
度になればなるほど消費者へのコミュニケーションが難しくなる。そこで商品進化とマスコミュ
ニケーション、さらに店頭コミュニケーションが一体となったマーケティングが不可欠となる。
■定番売場の活性化−自社商品をまとめる
健康機器のような機能商品は、多くの商品から自分に合った商品がどれなのかを検討する比較購買
が特徴である。だからこそエンド売場以上に定番売場が重要となる。
体組成計では多様なニーズを2つに統合した切り口で売場を再構築、血圧計ではキーカラー「ホワイ
ト」を採用したVMDなど斬新な手法で定番売場の再構築を行っている。
しかもオムロンヘルスケアの売場再構築の出色なのが自社商品を「かたまりとしてまとめている」
ことだ。これはオムロンであることが一目でわかること以上に、自社商品の特徴やベネフィットで
売場を構成し、なおかつ来店者に選びやすい売場になっていることだ。
■認知と購買のギャップを埋める−コラボ
血圧計と心電計には共通するマーケティング課題があった。血圧計はブランド認知率70%前後にも関わ
らずシェアが対応していない状況であった。一方、心電計は購入客やお医者様の非常に高い評価に反して全く売れない状況が続いていた。
これらの「乖離」を埋める一つの手法が、店頭連動である。しかし、注目すべきは自社だけではなく、
流通や専門家(医者や医療機関)とのコラボレーションが様々に仕組まれていることである。それは認
知レベル、集客レベル、購入後レベルなど、一歩進んだ領域に及んでいる。
■地域連携モデル
このコラボをさらに一歩進めたのが、心電計で紹介されている医療機関とドラッグストアによる
「地域連携モデル」だ。単なる機器というレベルを超えて地域医療の仕組みの中に組み込まれた
ビジネスモデルである。
まさしくオムロンヘルスケアの事業コンセプトである「ホームメディカルケア」を具体化する試みである。
また、このモデルは多様化するドラッグストア業態のドラッグストアの使命であり、他の業態と差別化する「らしさのサービス」として、一つの方向性を示しているともいえる。