「ヒット商品番付」は、日経MJが創刊した1971年からの目玉企画である。その番付は単なる売れ行きではなく、
新規性や生活者に与えた影響等を総合評価。当然、横綱を見ればその年が分かるのである。
■東の横綱「インバウンド消費」
2014年の東の横綱は、「インバウンド消費」となった。インバウンド消費は、少なくとも2020年の東京五輪
まで間違いなく増え続ける。中国人旅行客がさらに増え、今後5年間、安定的に訪日外国人が増え続けることは、
日本に大きなインパクトを与える。訪日外国人は、2003年当時の約500万人から10年経過し、2013年1000万人を少
し超えた。それが今年は30%増の1300万人を超えると予想されている。この1300万の人たちは1人当たり15万8000円
使うという。特に中国人の1人当たりの消費額は23万円、中国人を中心に「爆買い」している。日本人の年間の消費
支出額は134〜135万円。外国人が8人弱来れば1人の日本人の年間消費額に匹敵する。いうならば、今年は日本の消費
者が160万人増えた計算となる。このままのペースで増加すると、約3年後には2000万人を超え、さらなる増加も予想
されている。1〜9月の訪日外国人消費額の1兆2800億円は、三越伊勢丹ホールディングスの年間売上高とほぼ同じである。
それほどのインパクトなのである。今年の「インバウンド消費」は年間推定で約2兆300億円に達した。
■西の横綱「妖怪ウォッチ」
今年もエンタメが非常に流行し、「妖怪ウォッチ」が西の横綱、「アナと雪の女王」「ハリー・ポッター」が大関となった。
「妖怪ウォッチ」は第2のポケモンといわれ、今やそれ以上の社会現象である。ソフト販売数が1カ月で100万本、シリーズだけ
で300万本を突破している。その背景には、三世代消費がある。60〜70代の1300人のアンケート結果から、自由に使えるお金を
孫のために使いたい人が、60〜64歳は約10%、65歳以上は約23%に上昇、70〜74歳も同様に上昇することが判明。要するに、
余裕ができてくると、自分のためよりも、かわいい孫にお金を出したくなるのである。この三世代消費が「妖怪ウォッチ」や
「レット・イット・ゴー」のヒットを支えている。
■増税の年のヒット商品
増税の年は、実はヒット商品の宝庫である。97年の東の横綱が「もののけ姫」、増税の年はエンターテインメントがはやる
という説がある。これを裏付ける様に97年の番付には、今もヒットしているPlayStation、ポケットモンスター、プリウス、
キシリトールガムが入っている。17年間も第一線にいる人気商品が97年に出たということで、消費税の増税時に息の長いメガヒット
商品が生まれるという傾向が見てとれる。財布のひもが締まるときには当然、ヒット商品はでにくい環境だが、その中から既成概念
を壊した商品が誕生し、それら商品はその後、長い間、消費者にインパクトを与え、支持される商品に育つ、とも考えられる。
■ヒット商品のキーワードとは
商品開発からの視点では、ストーリー性を大事にしようと言われている。開発に至るまでの理由付を消費者が理解してくれる
と買う理由につながり、愛用して何度も使ってくれると、教科書としてはその通りである。しかし、今の消費者は、すぐにそこ
まで理解しない。今どきのヒット商品のキーワードは、「突き抜け感」「一目瞭然」である。何だか分からないけれども非常に
突き抜けたものや、分かりやすいもの、楽しさみたいなものが入ってないと、ヒットしない。ネットを通じた口コミの破壊力が
ますます拡大し「いいね消費」「ネタ消費」も非常に増えている。長いストーリー性のあるものはやはり難しく、それ以上に差
別化が難しい。つまり話題力に乏しい日用品は、価格競争をせざるを得ない時代であり、今は「ワンフレーズ・マーケティング」
の時代だ。