無印良品が住宅事業に参入して10年、凱UJI HOUSEは、無印良品を展開している株式会社良品計画と
株式会社エヌ・シー・エヌとの合弁事業である。現在、売上が約35億円、年間約300棟の住宅を販売する。
黒字転換した後は、毎年2桁成長を続けている。
商品は主に二つ。一つは、間取りがなく、大きな空間がつくれるシステムとして考えた「木の家」、
もう一つは、子どもが家の絵を描くとこんな感じになりますというスケッチからスタートした「窓の家」。
この二つの商品を当初より継続して販売している。現在、木の家が売上全体の約8割、窓の家が約2割を占
めている。
■「無印良品の家」は住宅業界へのアンチテーゼ
無印良品の住宅事業のスタートにあたり、「今までの住宅メーカーとは違うポジションで
ビジネスをしよう。」住宅業界へのアンチテーゼを作っていくことが提案された。
@木造住宅は26年ほどのサイクルで建て替えられる。
A家を提案するより間取りを作っての提案が一般的。
B商品サイクルが短い。ほぼ毎年新商品が出てくる。
C価格と性能がよく分からない。
D営業マンがノルマで住宅を販売している。
営業マンがノルマで販売するのをアウトバウンドとすると、お客さまに買いにきて
いただけるインバウンドのマーケティングに変えなければ、儲からないし、お客さま
のためにならない。そういうテーマで、集客と単価の仕組みをつくることになっていく。
■「永く使える、変えられる」
2000年当時、日本の木造住宅は20〜26年で建て替えられていた。最近は少し延びて30年
ぐらいになったが、概ね日本の家は短寿命である。なぜ資産価値がなくなるのか、その原因
を追究する。一つ目は、地震で壊れてしまった等。二つ目が、間取りが古くて住みづらい。
三つ目が、デザインが古くなってくる。この三つのことで住宅が建て替えられてしまうので
あれば、それをどのように解消すべきかを、「無印良品の家」事業を始めるときのテーマと
したのである。全ての構造計算をして、絶対に壊れないことを保証して売る、すなわち良品
である理由を付ける。間取りの問題は、ずっと使える間取りにするにはどうしたらいいか。
デザインの問題は、古くてもかっこ悪くならないようにするにはどうするべきか。言うならば
「永く使える、変えられる」これをどのように実現させるのかである。
MUJI HOUSEは「お客さまの資産を減らさないこと」を考えている。だから同じカテゴリーの
ものを新商品で代替しないというポリシーがある。
■違うポジションでのマーケティング
こういった考えは必ずお客さまのためになることだと信じ、このポリシーを曲げずに販売して
いくには、ハウスメーカーとは違うポジションで住宅をマーケティングしなくてはならない。
当時の営業トップは、ハウスメーカーのPUSH型営業からPULL型に変化させていかなければ、
MUJI HOUSEの商品は買っていただけないと考えた。
マーケティングの4Pである、Price、Place、Product、Promotionのうち、MUJI HOUSEの場合、
Placeは単独展示場であり。Priceは1物1価を宣言しているので変えられない。Productも出したら、
基本的には変化させない。Promotionを変化させることしか許されていないのである。
顧客と商品を育てる為のMUJI HOUSEの取り組みには、クラウドソーシングによる創客、
「初めての家つくり講座」による集客、ファン化の仕組みとして「家に会いに」企画、家が欲しい
人を集客する「ぜんぶ、無印良品で暮らそう。」キャンペーン、何度も見に来ていただいてファンに
なる仕組み作り、そしてグループ一体で顧客を育てる、最後は継続する仕組みを作る、など様々な取
り組みが展開されていくのである。