食品業界を取り巻く環境は大きく変化している。高齢化社会が現実になってきた今、
胃袋総量の減少に伴う市場の減少という大変な事態を迎えている。市場がシュリンクすれば当
然売上は減少する。これまで以上限られたパイを巡って競争環境は激化していく。そのような
中での消費者との接点である「店頭」の重要性は言うまでも無い。さらには、流通チャネルが
多様化している。食品はドラッグや家電量販でも扱われている。さらにはAmazonなどネット通
販も拡大している。競争が激しくなり、価格競争はさらに激化する。そういう時代になってき
たという事をまず頭において考えていかなければならない。
■価格競争のもたらすもの
スーパーの利益は乱暴に言えばお客さんが増えれば増えるほど利益がでるという構造である。
そのため顧客の獲得競争のために、値下げをして集客するという構造である。しかし価格を下
げれば下げるほど収益は下がる訳でこれも限界がある。結果、人件費を削ることになり、それ
は店頭が荒れることにつながる。店頭が荒れればお客さんも減るという“負のスパイラル”に
なる訳だ。値下げではなく他の手法で集客を図る方法はないのか。ひとつの方法として、店頭
での情報量を豊富にしていくというのが同社の考え方である。店頭での情報は“20字が限界”
という説があるそうだ。POPをチラッと見て理解できる情報量である。この壁を越えるため
に同社では様々な取り組みを行っている。しかし、単純に情報量を増やすだけでは意味はない。
同社の強みはその情報量を増やす取り組みをきちんと順を追って課題解決しながら追求している
点である。実際に実験を数々行いながら実績を積んでいく。その実績に裏付けられ手法の強み同
社の最大の強みである。
■徹底した現場主義
スーパービジョンは同社の主力販促策のひとつである。一時期店頭で多数の映像が出現した。
しかしながら、実際には“五月蠅い”だけのモノになってしまっていた感がある。その多くは
広告として延々と映像を流すモノが中心だった。極端に言えばテレビで見るCMがそのまま店
頭で流れている訳である。もちろん、記憶を呼び出す効果はあるのかもしれないが、多くは気
にも留めなかったと思う。しかし、販促策としてスーパービジョンを位置づけた事によって、
全く違ったものとなった。単純なテレビから情報発信の場として機能したことが成功の要因で
ある。さらに強みとして、バイヤーや生産者までを巻き込んだ、その運営システムである。ひ
とつの販促システムとして構築された事によって大きな効果を生み出すシステムとなった訳であ
■“おためしください”
“試食”というお馴染みの手段を追求したのが“おためしください”だ。顧客にとって“買わさ
れる恐怖”は試食にある。その買わされる恐怖を殆ど無くした仕組みである。この販促策は可能
性を秘めた販促策である。生産者がダイレクトに情報発信する仕組みとして機能するし、メーカ
ーが情報発信する仕組みとしても機能させられる。このように使い方によって情報発信の場とし
てさらに拡大する可能性を秘めている。メーカー単独で実施したり、同じカテゴリーのものを食
べ比べたり、新商品のお試しとして利用したりと、その使い方は様々に考えられる。さらには、
いわゆるデモンストレーション販売の問題点をカバーする機能も持っている。同じ商品情報の提
供という目的だが、デジタルやPOPなどでは出来ない機能である。今後の展開に大きな期待を
したいと思う。