「リカちゃん」は今年で誕生から40年目を迎えるロングセラー商品だ。40周年を機に今年春から「リカちゃん」の
リブランディング(ブランドの再生)への挑戦が始まっている。
「リカちゃん」は、1967年に女の子の夢とあこがれをかたちにする着せ替え人形として誕生して以来、その時代の文化・流行を
取り入れて変化しつつ、累計約5300万体を出荷販売。今や着せ替え人形の代名詞ともいうべき存在であり、日本を代表するロングセラー
のひとつといえる。しかし、85年に年間53億円を売り上げた「リカちゃん」も昨年度は18億円にまで落ち込んでいた。
■「オシャレじゃない」
「リカちゃん」は何故売上の減少をきたしていたのだろうか。一般的には少子化やエンターテイメントとし
て選択肢の増加などにその原因を求めることができる。
しかし、本質的な問題は「オシャレじゃない」と思うママが約76%という調査結果に見られるように「現代的」
ではないというブランドの陳腐化がその要因といえる。
■カンフル注射が低落を促進
この「リカちゃん」の低落傾向を止めようと周年事業による活性化が何度も試みられてきた。しかし、
周年事業の年は売上が戻るが、翌年には必ず落ち込みがあり、長期低落傾向に歯止めがかからない。
周年事業は、とにかく話題、記事かされやすい商品やマーケティングに終始して、単年度展開になり、
翌年以降に繋がらない結果となっていた。もっと言えば、歯止めをかけるための施策が逆に作用していたといえよう。
■変えるもの、変えないもの
ロングセラー商品で一番難しいのが変えるものと変えないものの見極めだ。「リカちゃん」も変えなればならな
いものを変えきれずに残し、変えてはいけないものを変えてしまっていた。
40周年にあたり、変えるもの、変えないものを明確にしたことがリブランディングの前提として重要なポイント
であったと思われる。その変えないものが「かわいい」「ごっこ遊び」である。
■リブランディング・トライアングル
リブランディングの具体的課題は「リカちゃん」の“現代化”であった。そのマーケティング施策が
「リカちゃん旅立ちコンセプトワールドツアー」である。2007年4月から開始され、その成果は上期の昨対160%と
いう実績が示している。
しかし、「リカちゃん」の取り組みは、単にプロモーションに止まるものではなかった。マーケティング、
商品、営業・販売ロケーションの3つのトライアングルがリンクすることによって相乗効果発揮したことが「リカちゃん」
のリブランディングの大きなポイントである。
■合成の誤謬
社内の各部門が部分最適を求めるがゆえに全体最適に至らないという部門間のズレや歪みがブランド再生にとって
の最大の壁といえないだろうか。「リカちゃん」のケースはそのことを示唆しているように思われる。
ロングセラーブランドの再生は新ブランドの開発・導入よりも困難が伴う。社内の各部門は一生懸命にブランド
再生にそれぞれが取り組む。しかし、それが全体になったときに好ましくない結果となる、合成の誤謬というパラドックス
を超えなければならない。