行動観察手法のビジネスへの応用

 

行動観察手法のビジネスへの応用

「行動観察」という方法は古くからある手法である。過去のものは、 観察する人の経験や知識、はたまた性格などに大きく影響されてしま う欠点があった。この欠点を体系だてた手法で補ったのが、今回の 「行動観察」である。体系づくりには様々なノウハウが注ぎ込まれた ものと推察できるが、それによって偏りの無い情報が収集できるよう なった事は大きい。

■データの質を重んじる

「行動観察」は基本的には定型リサーチである。そして注目すべき点は、 検証型リサーチよりも発見型、データの質を重んじている点である。一般 的なリサーチは、仮説検証型リサーチで仮説の出来の善し悪しがリサーチ 結果に大きく影響する。 一般的なリサーチの限界がそこにある。例えば消費者調査を行う場合、商 品の良い悪いは答えられるが、では、どんなモノが欲しいか?といった抽 象的な質問への回答は難しい。いわゆる「知覚しないニーズ」というもの だ。これはユーザーが全く気づいていないニーズの事を言う。今回のお話 しの中で、高齢者の方の歯磨きの事例が紹介されているが、まさにそれが 「知覚しないニーズ」である。この「知覚しないニーズ」の発見に「行動 観察」は大きな武器となる。さらに、定量データを組み合わせることで、 いままでの調査とは違うより具体的で精度の高い調査が実施できると思わ れる。

■効果検証でさらに精度アップ

「行動観察」で得られたデータは、「ファインディング」と呼ばれる検証が 実施されている。「知覚しないニーズ」の発見はこれが大変重要になる。観 察で得られた何気ない行動が大きなヒントとなるのである。この「検証」を 行うにも様々なノウハウが駆使されていると思う。また調査対象の業界や商 品に必ずしも精通していないケースも多々あろう。この「検証」がリサーチ の結果の善し悪しを左右する。 実は仮説検証型ではない発見型調査であると言われているが、この「検証」 は仮説を構築する作業だ。何のための調査なのか?と言う点をよく理解し、 そのために何がポイントかと言うことを理解していないとこの作業は進まな い。ここでは、「仮説」そのものの作り込みが歳代のポイントである。

■応用範囲の広さ

「行動観察」は、商品開発、サービス改善、人材教育など応用できる範囲が 非常に広いことがポイントである。また、一般の調査がやりにくいシーンで も有効な方法である。事例で紹介頂いた、飲食チェーンの事例や優秀営業マ ンの事例は、アンケート調査やインタビュー等では難しい事例である。本人 が意識せずに行っている行動は、「知覚しないニーズ」同様、当事者は答え ることができない。このようなシーンは非常に多くあるように思う。応用範 囲の広さが「行動観察」のポイントである。

■今後の展開

「行動観察」にも苦手な分野はある。それは行動が観察できないものや、行動 に表れない事実は観察できない。また、ある特定にシチュエーションだけで発 生する行動など、再現性が乏しい事実は発見が難しいという事はあるだろう。 しかしながら、豊富な経験がそれら苦手分野を克服する手立てを提供してくれ るものと期待される。今後の展開とまたノウハウの蓄積に大きな期待がもたれ る。ぜひ、活用していきたい調査手法である。