2011年はなんと言っても大震災が最大のキーワードである。商品を語る上でも「震災」は
大きなキーワードであった。しかし、実際には、それだけではなく、新商品を考える上で
の新しいヒントが様々あった。
■キーワード 「絆」
北村氏は、「絆」がヒット商品のキーワードというのは本当かというと、半分が本当で半分
がうそだと思います。ということからスタートした。よくよく考えると、どうやら「絆」は
マスコミが好んで使った事の方が多いことが分かった。国内旅行、アナログゲームといった
ものは確かに伸びているようだが、他の多くの商品ではそうでは無かったというのが結論だ。
「絆」を言うなら結婚は増えていそうなものだが、婚姻率は過去最低という結果も出ている。
■日常と非日常の垣根
「絆」がそれほどでも無かった訳だが、むしろ日常と非日常の垣根そのものが低くなったのだ
と言うことが述べられている。「LEDレス球」「温めずにおいしいカレー」といった商品がそれ
である。こういう具合に見ていくと他にも日常と非日常の垣根を乗り越えた商品が見えてくる。
今年も節電が言われる中、電力需要のピーク時はバッテリーで稼働する扇風機が発売されている。
バッテリーで動かすなんて言うことは今までは電気が無い場所や停電といった非常時だけという
のが一般的だ。それが昼はバッテリーで動かして、夜充電するという発想が家電製品に出てきた
事は、まさに、日常と非日常の垣根を乗り越えた商品開発の典型事例であろう。
■消費者に対する考え方
消費者におもねってはいけないし、みくびってもいけない。さらに、消費者は非合理なことばか
り言いがちだし、消費者に何が欲しいかと聞いても大体移ろいやすいので、マーケット調査など
も上手にやらなければいけないと思っていると北村氏は言う。消費者ニーズを考える上で需要な
示唆である。さらに、消費者がどこにいるか、作り手側が消費者の居場所を探してさまよっても
いけませんとも言う。その解決策が「消費者をびっくりさせる」とい事であると言う。面白い考
え方である。では実際に「びっくりさせる」と言うことは並大抵の事ではない。関心の無いもの
には極端に無関心で、さらにはちょっとのことでは感動しない消費者にどう向き合うか。実際に
考えようとすると、それは無理・・・とも言いたくなる事である。しかし、「常識」「誰もが知
っていること」をもう一度見直してみる。そしてそれを新たな価値基準に置き直した時に「びっ
くりさせる」事が生まれてくると言う。ヒントは案外足下にあるのかもしれない。
■2012年は?
ヒット商品の育成とは、野に咲く花の価値を見直す、足元の宝物を見直す作業だと言う。
「びっくりさせる」事と同様に、足下の技術に注目してみること。これが2012年のヒット
商品のキーワードかもしれない。震災以降、今までにない生活スタイルや価値基準が生ま
れている。そのような中でどう商品を創っていくか。鳴り物入りの技術ではなく、枯れた
技術の見直しがキーかもしれない。