「キリンオンラインショップDRINX」は2014年4月に開設された通販ダイレクトマーケティングサイトである。
2014年度の売上は、1.34億円(出荷ベース目標0.91億円)を達成している。14年度テスト展開で、7月より限定商品を販売し、
数日間で完売。現時点では「ここでしか手に入らない商品」、「新しい銘柄が試せる」という限定性・新規性が高く評価されている。
■DRINXの事業モデルと戦略的意義
2020年にキリンのDRINX事業には、二つの狙いがある。当然ながら一つはビジネス活動して収益性を確立させることである。 最初の数年間は赤字であっても、ある段階からは累積黒字へ転換する。もう一つはリレーションシップ活動である。一人一人の顧客と向き合い、
真摯に応えていくことが、企業価値の向上につながる。また、サイトでは新しい価値発信し、企業姿勢への好感を醸成していく。これらは社会的な 価値と企業にとっての価値を両立させ、企業のCSVを伝える広告的な役割も持っている。すなわちDRINX事業は販売とファンづくりの統合型事業モデルなのである。
キリンには「ブランドの約束」というものがあり、「『飲みもの』を進化させることで、『みんなの日常』をあたらしくしていく」というスローガ ンを置いている。これを受け、DRINXの事業コンセプトは、「新たな飲み方をつくる」「新たな暮らし方をつくる」「人と人とのつながりをつくる」
の三つが打ち立てられている。
■顧客ターゲット層は
RINXサイトは酒類の消費が多い方をターゲットとして開設されていない。クオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上、つまり自分らしい
生活の質を高めていきたい人、特に食生活に関与が高い層をターゲットとして据えている。従って、扱っている商品の価格はほとんどが5000円を超えるものばかりで
ある。また、例えば夕食時に必ず「一番搾り」を飲んでいるという方は、キリンにとって重要な顧客だが、本サイトでは対象としていない。ここでは、「今日はこの料理
だからこのワインを合わせてみよう」「こういうビールを飲んでみたい」「お客さんが来るからこういうものを買ってみたい」といった、生活の中で食やお酒を楽しみたい
という志向性の人々をターゲットにしているのである。