だれでも一度は食べたことがある「キンレイ鍋焼きうどん」。本格的な味と調理の簡単さ
が支持され、商品寿命が短いコンビニ商品の中でも1978年発売以来29年のロングセラ
ー商品だ。
しかもコンビニでの冷凍調理麺では、ほぼ100%のシェアをもつ。しかし、実績に比較して
その知名度は高くない。知られざるオンリーワン商品、それがキンレイの冷凍調理麺といえる。
■CVSの片隅でひっそりと佇む冷凍麺
キンレイの知られざる理由の一つがCVSの冷凍食品売場の特性にある。キンレイ
の調査ではCVSでの冷凍食品利用率は28%、同じ冷凍ショーケースのアイスクリームは71%、
弁当の63%と比較すると非常に少ない利用率ということがわかる。
このCVSでキンレイはカテゴリーシェア100%である。この秘密は特許で保護された
技術優位性を始め、ファーストエントリーやCVS限定、流通との取り組み関係などがその要因
であるが、それ以上に季節変動の激しさからビジネスになりにくい市場でキンレイはいち早く
ビジネスモデルを確立したことが大きい。
■年間40アイテムの新製品投入
CVSカテゴリーシェア100%の秘密は上記以外にも重要な要因がある。
それは年間で新商品25、リニューアル15アイテムの改廃をしていることにある。
冷凍アルミ麺以外の冷凍食品での入れ替わりが年間2〜3アイテム程度である
ことからも、冷凍麺は非常に活発既なマーケティングを実践しているといえる。
CVSでの冷凍麺ユーザーはかなり固定されている。この既存ユーザーをいかに
飽きさせないかが非常に重要なマーケティングのポイントになる。季節変動の激し
さとこのスピーディなマーケティング活動こそ、CVSカテゴリーシェア100%の本質
的なキーであると考えられる。
■限定マーケティング
中京エリアで実施した限定マーケティングは注目に値する。エリアNO1のラジオ局の
看板番組とタイアップした「志の田うどん」が発売1ヶ月後の出荷実績累計25万食とい
うキンレイ始まって以来の大ヒット商品となった。
しかし、従来からこのようなタイアップ企画商品は枚挙にいとまがない。なぜこれだけの
実績をつくり出せたのか。それは商品、エリア、媒体、番組、リスナー、チャネルすべてを
徹底して限定したことにある。ニッチ企業だからできた限定マーケティングといえよう。
■量販チャネルへの再参入
CVS冷凍食品売場の活性化策に加えて、高付加価値麺市場の創出にキンレイは挑戦している。
安売りが状態化している一般の量販チャネルではなく、いわゆる高級スーパー利用向けのプレ
ミアム商品である。このようなプレミアムラインの商品は高級スーパー以上に一般の量販も差別
化商品として求められていることは明白であり、今後の一つの商品開発の参考となる事例である。
■ニッチ・オンリーワンの戦略
キンレイのニッチ・オンリーワン戦略。戦略のキーワードは、ファーストエントリー、消費者インサイト、
4Pマーケティング、ゲリラマーケティング、柔らかな組織に集約できるのではないか。
キンレイのニッチ戦略から、ニッチ市場は無限にあること、それを自らつくりだすことができることなど、
非価格競争のマーケティングに学ぶべき点は多い。