View Point 買い場研究所

 

「買い場研究所」

売場はメーカーの様々なマーケティング活動を完結させるための最重要接点である。その重要性はいまさら強調する必要 がないほどに研究が進んでいる。しかし、売場と消費者の購買行動に与える要因は非常に多元的であり、様々な要因が絡 み合いながら購買が決定される。 「買い場研究所」は、売り場を生活者視点で“買い場”として捉え、店頭コミュニケーション手法を調査・開発する早稲田大学 の恩蔵教授との産学連携の研究機関である。

■アカウンタビリティ

「買い場研究所」の扱う主なテーマは大きく三つあるが、その研究視点はユニークだ。しかもその研究の中心が実証実験であ ることが大きな特徴といえる。 テーマの一つが販促手法の効果測定である。これは他の研究機関ですでに研究が進んでいるが、中でもSP領域の効果測定 の研究は遅れている。これはインターネットに代表されるデジタル技術によってWebコミュニケーション手法では効果測定が可 能となる中で、広告主側でも効果と費用の問題、ROIからの視点で様々なプロモーションが見直されている。それに反してSP の世界ではGRPに匹敵する指標すらない。近い将来間違いなく、効果測定が求められるアカウンタビリティの時代がくるとい うのが研究所の基本認識である。

■次世代店頭研究−デジタルサイネージ

二つめのテーマが次世代の店頭研究である。特にネットと店頭の融合の中で、デジタルサイネージに着目している。デジタル サイネージは、ここにきて表示機器の品質の向上、通信技術の進化などによってデジタルという特性を最大限に活かせる非 常に強力なメディアとなり得る可能性を秘めている。特にインストア・メディアとしてマーケティングコミュニケーションに与える 影響は大きいものがあると考えられる。 この領域も先行して様々な実証実験が行われているが、「買い場研究所」が行ったのが顔認証技術を活用したデジタルサイ ネージの可能性の実証実験である。デジタルサイネージは、設置場所に合わせたコンテンツのコントロールが可能であること が大きな特徴だ。その特徴をさらに活かすのが双方向のコミュニケーションであろう。そういう意味で顔認証技術の応用という 視点はデジタルサイネージの可能性を感じる実験といえよう。

■感性マーケティング

三つめのテーマは感性マーケティングである。この視点も非常にユニークだ。あらゆる商品がコモディティ化する時代に、従来の ように品質や機能で差別かするのが難しくなっている。感性や感情に訴えかけるような商品開発や売り方が必要とされているこ とは論を待たない。 買い場研究所の実証実験はここでもユニークだ。感性特に香りについてはマーケティング的には未開拓な分野といわれている が、100円ショップで一般的な香りを店舗で流した場合、どのような購買行動に変化があるのかを実験している。その結果によ れば、カテゴリーや性別によって異なるとはいえ消費者が商品を購入する瞬間における香りの効果は絶大だといえる。 香りは、カレーの香りやポン酢、てんぷら、すき焼きなど香りを発するメニューは多くあり、特にスーパーの店頭での香りの演出 は、新しいプロモーション手法の可能性を秘めている。 最終的な購買が完結する買い場は、次世代マーケティングの大きな未踏の領域といえる。「買い場研究所」の今後の実証実 験に期待したい。