近年、駅の商業施設は急速に拡大している、すでに巨大な流通業であると捉えられている。
JR東日本の小売業の売上げの総計は約1.4兆円。JR東海とJR西日本を合せると約2.8兆円
の規模に達している。駅の消費は非常に大きなマーケットである。
もともと駅は利便性が高いから使う訳だが、便利故に時間がない人がそこで買うという消費
に加えて、駅という場、移動中というあるシーン特有なインサイトや明確にニーズ化したも
のが存在し、それが特徴的な駅の消費を生んでいる。
■駅商業施設の新たな展開
JR東日本の代表的な商業施設は、まず駅ビルである。ファッションビル形態を基本とした
「ルミネ」と郊外立地で、生活全般をサポートする「アトレ」がある。約500店舗の「キオスク」
と現在はその店舗数を上まわるコンビニ業態の「NEWDAYS」がある。また大いに話題となった駅ナカ
と言われる商業施設が「ecute」であり、東京駅の「GRANSTA」などである。有名企業ブランドの出店
も活発化しており、直近では地域エリア全体の活性化にも貢献するべく「通過する駅から集う駅」
というコンセプトを展開している。
■エキシューマーのインサイト
駅の買い物で一番特徴的なところは、買い物全体の4割が、実は移動中に来店行動を意思決定して
いるということである。例えば会社を出て家に向かっている途中で“ついでに寄る”ということ、
ここに大きな違いがある。そこには消費者のある共通の心理パターンが見てとれる。
一つ目は「気持ちスイッチ消費」、駅で消費を意識的に行い、オンからオフ、或いはオフからオ
ンへと、帰宅前、出勤前の気持ちの切り替えを行うことで心理的なバランスをとろうとしている消費。
二つ目は、駅で過ごしているときは、計画をきちっと立てずに偶然を楽しむような気分になっている
「出会い系の消費」 三つ目は、日常の中のプチぜいたく、例えば残業を頑張ったり、仕事を頑張っ
た日に、自分に対するご褒美として、自分が今幸せであるということを日々確認しようとする
「幸せ確認消費」 四つ目は、駅だと他人の目を気にせず解放感を味わえる。会社と家の真ん中
の駅にいる15分とか20分が実は自分が一番自分らしくいられる時間、駅で個を楽しむ「個消費」
最後は、自宅の近くの駅に戻ってくると、もうすぐ自宅であるという安堵感を感じてリラックスしよ
うとする要求が高まる「ほっと・HOME消費」などである。
■駅消費の未来と移動者マーケティング
女性の社会進出と人口減少社会。またコンパクトシティーなどと言われ、都心や駅前に回帰する動き
がある。そういう意味では駅の消費は今後まだまだ発展する可能性がある。これからはロードサイド型
の流通からレールサイドに戻る、変わるということも言われている。
今日の成熟消費社会の中では消費者のAction(購買)にどう落とし込むのかが大きな課題である。移
動者マーケティングとは買い物の前後には必ず移動があるという事実に着目することで導き出された新
たな戦略概念である。本来、移動中には別に買い物をする必要はない。ただ都市生活者にとっては家を
出た瞬間、目の前にコンビニがあり、会社に行く直前にも当然コンビニがあり、駅には駅ビルがある、
駅ナカもあるという暮らしである。移動中は常にある種の潜在顧客状態であると言えるのではないか。
まさに「移動を狙えば“買う”はつくれる」である。