だれもが避けては通れない人生の最終セレモニー「葬儀」。かつてはブラックボックス業界とも言われ、
その価格の不明瞭さなどが問題となっていた。「生きることと暮らすこと」とイオンは自分達の事業領
域を規定しており、本来は葬儀もそこに当てはまるのではないかとの考えがあった。
■何故、イオンが葬儀ビジネスなのか
葬儀を出したい方々をイオンが葬儀社に斡旋するシステムを作りビジネスとすれば、葬儀社は宣伝費の
要らない分、葬儀費用をもっと安くできるのではないか。人口統計データからも今後30年間、亡くなる
方は増え続けるということ。さらに、葬儀の市場規模は約2兆円であること、現時点では大手企業の進出
はそれ程多くない市場であること。イオンの従業員自体が30万人、イオンカードのお客様は2000万人を
超えること。また、様々な調査データが示す葬儀でのニーズは、やはり安心・信用・低価格であること。
事業を立ち上げる条件は揃っているように思えた。
■社内からの反対意見
「イオンが葬儀までやる必要があるのか。返礼品などの物販だけに注力すればよい話ではないか」といっ
た社内での反対意見も多く、決定に至るまでには難航を極める。結果2009年9月にイオンライフ事業部が
発足する。参入の最終的な決め手となったのは、日本の葬儀を何とかして変えたい、そしてまさに「ゆり
かごから墓場まで」生活者の暮らしを支える企業でありたい、という思いである。
■イオンとしての差別化ポイント
差別化ポイントは、まず一つ目は料金の問題で、提示した料金から1円の追加料金も発生しないこと。
二つ目は、当たり前のことではあるが、お葬式の品質にイオンが責任を持つこと。三つ目に、お支払い
の方法には、分割払い、一括払い、カード払いなど、いろいろな方法が使え、お葬式の全ての料金がカ
ードで支払えること。
いうならば、イオンのお葬式のコンセプトは、価格も品質もイオン基準ということで、お客様の不安や
心配をなくして、心理的不安のない状態でお葬式に臨んでいただくためのお手伝いをすることである。
■イオンの葬儀の特徴
イオンのお葬式の内訳としては、49万8000円の家族葬が一番多く、次に19万8000円、33万8000円と、
比較的小さい規模のお葬式が中心であり、全体の90%が50名以下の家族葬である。また、ターゲット
として捉えているのは、例えば東京へ30年前に引っ越してきて、菩提寺もなければ、葬儀社の知り合
いもない方であり、現在のところは完ぺきな都会型ビジネスである。田舎で社会のコミュニティーが
まだ行き届いていて、町内の長老の方が何でも取り仕切り、お世話役がおられるところは、イオンの
出る幕ではないのである。
■業界ナンバー1を目指す
イオンライフ事業部は、「葬祭ビジネスでイノベーションを起こし、超高齢社会において『終活』を
通じて社会に貢献します」というビジョンを掲げている。「終活」という終わる活動とはあまり言い
たくなくて、相続やお墓、お葬式など、人生の後半に差し掛かったときの心配事を今から考え、準備
することで、人生の後半戦をもっと楽しくする。そのためのお手伝いをしたいというのが本来の考え
方である。だからこそ、お客様第一を貫き、葬儀の生前予約を柱とし、リピート受注の拡大を目指し
ている。
2015年には葬儀業界のナンバー1へなりたいという目標を掲げている。