国内二輪市場はピーク時の約320万台から約70万台に大幅に減少している。
しかし、ハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)は逆に、22年間連続対前年増販を続けている。
ハーレーはなぜ縮小する国内市場で成長することを可能にしているのか。
◎マーケティング通念の否定と実践
HDJは、差別化、マーケトイン、顧客囲い込みなど普段なにげなく使っている通念を否定したイノベーテ
ィブなマーケティングを実践している。
■差別化→独自性の選択
■利益志向→成長志向
■売れない理由探し→売れない理由を探さない
■シェア追求→一台でも多く売る
■マーケットイン→プロダクトアウト
■データオリエンテッド→感性
■新製品→定番革新
■価格で売る→価値で売る
■マス広告→イベント
■モノ→コト(ライフスタイル)
■Win-Rose→Win-Win
■結果管理→プロセス管理
■囲い込み→絆(きずな)
◎“蟻”の戦略
HDJのイノベーティブなマーケティングの基本的な考えの源泉は、日本でのポジションにある。
競争相手はホンダ、スズキ、カワサキ、ヤマハといったまさに強大企業である。このあまりに
も格差のありすぎる競合企業とまともに勝負しても勝てるはずはない。競合を意識した差別化やシェアは意味をもたない。
ハーレーとしての独自性、オンリーワンを追求することこそ、結果としての差別化が実現できることになる。
◎ライフスタイルマーケティング
もう一つの基本認識は、ハーレーの商品特徴からくる考えであろう。ハーレーは蕎麦屋の配達にも
、郵便配達にも、通勤にも使われない。
つまり極論すれば移動という“機能価値”はなく、趣味や楽しみという“情緒的価値”しかもた
ない商品といえる。だからこそライフスタイルの提案であり、その場を提供するイベントが不可欠となる。
◎ハイタッチとハイテクの相互浸透
ライフスタイル、価値、感性、絆などソフトなキーワードはHDJのマーケティングの一側面を説明する
に過ぎない。もう一つの側面を見逃してはHDJのマーケティングを理解するには片手落ちになる。
そのもう一つの側面はNEW SFA、NEW CRMにみられるシステム化されたマネジメントだ。
ハイタッチとハイテクがそれぞれ内包され、さらにそれが統合されていることがHDJの真の強みであろう。
◎凡事徹底
もっと重要なことがある。マーケティングは新しい枠組みや論理が次々に提唱され高度化している。
しかし、それゆえに頭でっかちなマーケティングが巷に溢れている。
もういちど、マーケティングの通念を疑い、凡事−当たり前のことを当たり前に徹底することがいま
だからこそ重要ではないだろうか。
HDJの事例から学ぶことは多いが、「凡事」を、しかも「非凡」に徹底するという、HDJの本質こそ我々
は学ばなければならない。