少子高齢化の波を受け、苦戦が続く家庭用食品業界の中で、ハウス食品は、ここ数年ヒット商品が続き、
全体の業績を押し上げている。
業績好調のひとつの要因が健康・美容商品カテゴリーで、中でも「ウコンの力」は04年に発売、三年で
累計一億本を販売。売上高は06年度で150億円、ハウス食品の主力商品の一つに成長している。
それまでウコン食品市場は、素材の知名度は高いにもかかわらず、市場規模の小さい市場であった。
その市場に参入したハウスの「ウコンの力」は、発売の年末に爆発的にヒット。「ウコンの力」によっ
て潜在需要を顕在化させ、市場規模を大幅に拡大させている。
健康食品・飲料市場でヒット商品を作り出すのは難しい。「ウコンの力」はなぜヒットしたのか?ハウス
食品「ウコンの力」のマーケティングに、そのひとつのヒントがある。
■原点の問い直し
「ウコンの力」開発の根底に「ハウス食品は何者か?」という問い直しがあったことが大きい。
ハウス食品のルーツは薬種化学原料店。カレー原料は漢方に通じる。さらに食品メーカーとして加
工技術、特に香辛料のマスキング技術に強みがあった。
当然、「外の視点」である消費者のニーズの変化を把握しながらも、「内の視点」である自社の強み
を改めて問い直したことが「ウコンの力」を生み出したといえる。
■非常識?美味しさ最重視
ヒットの大きな要因に商品としての「おいしさ」の追求があった。一般的には効果効能のあるものは
苦味など「それらしい味」があるというのが通念である。実際、開発の初期段階ではウコンの味をた
たせた苦味のある試作品であった。
しかし、社長の「おいしさ」の追求というこだわりが「ウコンの力」をヒット商品にした商品設計面
での非常に重要な要因であった。このことは購入者の3割が女性であるということからも証明されて
いるのではないか。
■エビデンス。インナーの力の源泉
ハウス食品はこの「ウコンの力」の開発で初めて臨床試験を実施している。
臨床試験を「和漢医薬学会」に「ウコンのアルコール代謝に及ぼす影響」を発表し、この学会発表を
パブリシティとして活用している。
しかし、臨床試験というエビデンスは、外向けというより、それ以上に社内のインナーへの説得や納
得、さらに営業の流通等への自信ある説明などに大いにその効果を発揮しているように思われる。エ
ビデンスはどの業界でも重要な要因となる。
■現場からの営業力
プロモーションでは様々な施策を実施しているが、中でも末端の営業マンが製品を売るためにどうしたら
良いのかを創意工夫をして実行したことが成功の非常に大きな要因であったように思う。
「ウコンの力」は営業マンすべてがこの製品のターゲットであり、営業マン自身が実感として売れそうだ
と感じられたことによって、コンビニへの飛び込み営業などのいままでにない営業の動きが生まれている。
「ウコンの力」のヒットは、様々な要因が考えられるが、当たり前かもしれないが、食品メーカーとして
の自社の強みを最大限に活用し、引き出したことにあるのではないか。