グリコの「プリッツ」は47年にわたって愛され続けているロングセラー商品だ。「プリッツ」が47年に渡り、
激しく変化する環境の中でロングセラー商品として愛され続ける要因はなんだろうか。商品の革新性だけではロングセ
ラー化を保証することにはならない。時代や嗜好の変化への対応を継続しなければ、ロングセラーブランドとして消費
者に支持され続けることは難しい。
しかし、ロングセラー化でもっと重要なことは、ブランドの核となる部分を“変えない”ことではないか。
“変化と不変”、変えていいことと、変えてはいけないこと、それをどうマネジメントするのか、このことがロング
セラーブランディングで一番難しい戦略課題といえよう。「プリッツ」は何を変えてきたのか、何を変えなかったの
だろうか。
■変化対応
プリッツの歴史はまさしく変化対応の歴史といえいる。その変化は、チェーンの居酒屋の増加による外での飲酒需要の拡大、
イタメシブームなど食のトレンドの変化や飽食の中での健康意識の高まりなど消費環境の変化、さらにはチョコレートスナッ
ク人気の拡大や個食スナックのシェアの拡大などの競争環境の変化、プリッツの年齢層の持ち上がりや製品のライフサイクル
の短縮化など内部環境の変化などである。このような消費環境、競争環境、内部環境などが複合的に絡み合った環境変化にい
かに対応できるかがロングセラー化の基本条件となる。
■“VERSATILITY”
しかし、変化に対応するといっても商品のハードそのものに“変化に対応できる力”が備わっていなければならない。
プリッツは非常にシンプルなハード故に、様々な“化け方”ができるというハード特性をもつ。細く焼けば、細焼きプリッツになり、
香ばしくすればローストに、塩味にすればサラダに、トマトを塗り込めばトマト、堅く焼けば堅焼きというように、“VERSATILITY”
な多才さを生かしたマーケティングがプリッツの基本戦略といえる。
■変えてもよいこと変えてはいけないこと
このような“VERSATILITY”を利用した変化対応がプリッツの強みだが、無制限に変えてもいいわけではない。
変えてもよいのはサラダとロースト以外の周辺商品であることが前提だ。この周辺商品でフレーバー、ボディ、
スタイルなどの項目に分けて、常に新しい変化に挑戦をしている。
逆に変えてはいけないことは、@細長い形状Aアルカリ処理B独特の焼き目CピルスプレーD端まであるや焼き色、
というハード面のこだわりだ。心理面では@「スタンダード感」A「チョイリッチ感」B「エンタメ感」
C「ニュース感」など、商品イメージを構成する要素となっている。
■キャラクター
プリッツには「楽しく、元気」「お茶目」「気さく」というキャラクターを設定している。より具体的には
「渋谷を闊歩する女の子ではなく、学校が大好きな真面目で楽しいティーン」と絞り込んだターゲットを想定している。
プリッツの商品開発の成功・失敗を分ける要因をみてみると、このキャラクターの影響が大きく、設定されたキャラクター
から逸脱した商品は売れていないこいとがはっきりとしている。プリッツの事例はキャラクターの重要性を改めて再認識
するとともにロングセラー化はまさしく、変化と不変をどのようにマネジメントするかが要諦であることを教えてくれる
代表事例といえよう。