「フェリシモ」は、一般的には通販会社というカテゴリーに分類される企業だが、「フェリシモ」はそれを非常に嫌う。
フェリシモは“通信販売”でも“カタログ事業”でも“アパレル関連”でもなく、「ダイレクトマーケティング」会社
という事業定義にこだわっている。このこだわりの事業定義にこそフェリシモのユニークさの源泉がある。
この自社の事業を「ダイレクトマーケティング」と規定したときに通販を超える事業が生まれる。通販は手段に過ぎな
いが、「ダイレクトマーケティング」には顧客との直接的なつながりという本質があるからだ。
■ASPとコレクション販売
ダイレクトに顧客とつながっているのは通信販売の特性だが、それだけではフェリシモのユニークさを説明できない。
ダイレクトのつながりと相乗効果を発揮するビジネス特性がある。それは、自社企画開発が大半であるということである。
いわゆるSPA(製造小売)であり、協力企業のネットワークを通じてある意味でどんな商品でもつくることができる。
しかもお客様の声がダイレクトにプランナーに届く仕組みがある。
もう一つの特徴はコレクションという毎月シリーズでお届けする仕組みにある。それは固定客を中心にした継続的な
関係が成立することになる。特にコレクション販売は、デリバリーボックス、モーダルシフト、カタログ回収制度など、
環境負荷の低いエコロジーな物流システムにいかんなく発揮されている。
■「ともにしあわせになるしあわせ」
ダイレクト、自社企画開発、コレクション販売というビジネスモデルを以上にフェリシモを際立たせている根底にあるのが
「ともにしあわせになるしあわせ」という中核価値である。この概念こそがフェリシモの様々な事業に貫かれているDNAと
もいうべきものだ。
ポイントになるのは「ともに」と「なる」だ。このことをより明確にしているのが、社会貢献活動で、フェリシモはこの社
会貢献活動を「社会文化活動」とあえて呼んでいる。それはただ単にフェリシモだけが社会に貢献するのではなく、たくさ
んの人と“ともに”できることを考えたいという思いがあるからだ。それはHAPPY TOYS PROJECT、フェリシモの森基金、CCP
(チャレンジドクリエイティブプロジェクト)などの活動に一貫して貫かれている。
■価値観を共有するコミュニティ
もっと重要なことがある。フェリシモの一連のカタログ販売事業はこのように単なるモノをダイレクトに届けるビジネスを超えて、
思いや価値観を共有する人々を組織化していることだ。この共通する価値観をもつ人々のコミュニティをつくり上げているからこそ、
「ともにしあわせになるしあわせ」が実現できるといえる。
■価値共創
「フェリシモ」が提供しているのはモノにまつわるコトであり、この考え方は「価値共創」といえる。従来のビジネスの考え方は、
価値を生み出すのは企業側で、顧客は企業の生み出した価値を消費するという一方向モデルであった。それに対して「価値共創」
は価値を生み出すのは企業と顧客の双方であり、様々な相互作用を通じて価値が創造されるという考え方だ。
「フェリシモ」には、いま注目を集めている「サービス・ドミナント・ロジック」の事例として、新しいマーケティングのヒント
に溢れている。