1981年、ファンケルは通信販売による化粧品販売を始める。創業当時の1980年代には、
化粧品被害が社会問題になっていた。頬の部分が黒ずんでしまう黒皮症という病気は、
防腐剤や殺菌剤などの皮膚アレルギーを起こす成分によるものであった。そこで、それ
ら成分を含まない化粧品を作ったらどうかと考え、誕生したのが「無添加化粧品」。そ
れがファンケル創業の原点である。現在の商品は、化粧品、健康食品、発芽米、青汁な
どで、連結売上高は約811億円、従業員数750名。通販チャネルを中心に、直営店舗、海
外店舗もあり、流通にも商品を卸している。
■「不の解消」と「お客様に喜んでいただくこと」
ファンケルは「不の解消」を理念として掲げる。例えば、不満を満足に、不安を安心・安全に、
不快を快適にするために、「もっと何かできるはず」というスローガンを掲げている。ファンケ
ルの取り扱う商品の多くは化粧品、健康食品など比較的安価であり、1回だけお買い求めいただく
様な構造では、なかなか会社の売上・利益の積み上げは難しい。お客様に継続してお買い求めい
ただくことで、初めて商売として成り立つのである。そのため、ファンケルは常にお客様の視点に
立ち、「お客様に喜んでいただくこと」を全ての基準としている。こうした理念、商売への考え方
が、徹底したお客様満足を追求する様々な取組みを生み出している。
■お客様の声を生かす「お客様視点推進事務局」
ファンケルの取組みには、お客様の声を最終的に商品やサービスの改善につなげていくという大きな
流れがあり、その為に「お客様視点推進事務局」が存在する。お客様対応の窓口としての機能と、美
容相談室や健康相談室、受注窓口、店舗などの各部門から上がってくるお客様の声を一つのデータベ
ースに集約し、それを分析・発信・提案し、社内活動を促すことでお客様満足の向上につなげるVOC
(Voice Of Customer)活動に取組んでいる。お客様の声が集約されたデータベースを、社内ではヤッ
ホーシステムと呼んでいる。まず、電話やEメール、店舗に来店したお客様からお声をいただいて対応
すると、その内容を入力。その情報は全社で閲覧でき、商品企画や販売企画部門の担当者が、自分が担
当した商品や施策に今どんな声が入っているかが見られる仕組みになっている。加えて、週や月単位で
まとめた情報も全社に発信している。
■アクティブサポート
さらに、ツイッターの声にも注目しアクティブサポートも展開する。ツイッターでつぶやかれた中にも
貴重な意見が多くあり、「ファンケル」が入ったつぶやきや、当社商品やサービスに関するつぶやきを
探し、それをつぶやいた方に返事をするという取組みである。つぶやいた方からすると、直接言ったつ
もりはないという様な場合もあり、こちらが反応すると、驚かすケースもある。返事をするのもなかな
か難しい状況もあるが、どのようなご意見や内容であれば返事をするかという一定の決まりを設けて運
用している。
■お客様の目委員会
ファンケルはお客様に覆面調査を依頼する組織「お客様の目委員会」をつくり、様々な改善への協力を得
ている。調査メンバーには電話窓口への各種対応、店舗での実体験などを経て、アンケート形式で意見を
収集する。一般に覆面調査を実施する会社は数多くあるが、特別なのは、後日その委員会から数名集まって
いただき、東京・大阪・名古屋に各地で座談会を年に4〜5回開くという。当然、ファンケル側からは社長以下、
役員、商品開発部門も出席して色々なご意見を直接聞く場としている。お客様からは、かなり手厳しいご意見
もでてくる。窓口部門や店舗スタッフだけではなく、社長や役員も、お客様から直接手厳しい話を聞くこと
で改めて気づかされることが数多くあるという。