TVドラマでヒットする作品とヒットしない作品を分ける要因にも感情が大きく影響しているという。
だとしたら人の感情に訴えるドラマの演出手法が、広告宣伝だけでなく商品開発や店頭などのマーケティングに
もっと活かされてもいいのではないか。メディアの多様化、ブロードバンドインフラやオンライン動画配信など、
インフラはすでに整っている。しかし、ソフト面では従来メディアの広告もWebやCGMなども、さらにマーケティン
グといえども消費者の「心」を捉える新しいモデルをいまだ見出しえていないように思える。
人の心を動かすストーリー性があるモノが選ばれる時代。マーケティングもストーリーそのものが勝敗を決する
ドラマや映像のプロが持つ『ストーリー構築』のノウハウから多くの学ぶことがあるのではないか。
■ハリウッドの「ストーリーアナリスト」に学ぶ
では、ストーリーの何を学ぶべきなのだろうか。一つがハリウッド映画の投資判断のたに脚本を分析するストー
リーアナリストの手法だ。中でも「プレミス」「テーマ」「キャラクター」「ストラクチャー」はそのエッセンス
といえる。特に企画内容を一言で表すことができる「プレミス」という考え方はマーケティングでも役に立つので
はないか。短い文章の中で新しさやユニークさが語れることが企画の優劣を見極める一つの判断材料とすることが
できる。
■C.Gユングの「元型」に学ぶ
二つ目がユングの「元型」である。「元型」は、人の無意識の中にある「型」である。それが自分の外部にその型と
ピッタリなものが出現すると、内部から強い投影作用が生じて心的興奮をもたらすという。「元型」の代表例が
「アニマ」「アニムス」「シャドウ」「トリックスター」。物語の中でこのような元型に出会うとなぜ面白いか
はわからないが、ドキドキする。それが元型の力というもので、ストーリーの中にこれらのキャラクターを上手
く組み合わせることも基本といえよう。
■ジョゼフ・キャンベルの「ヒーロー研究」に学ぶ
三つ目が「ヒーロー研究」の知見だ。ヒーローとは、新しい体制に脱出するために自己犠牲を求められる人間と
定義できる。その定義から言えば現代のヒーローはイチローよりも野茂英雄という。野茂は旧態依然とした日本
の野球界を飛び出し大リーグで日本人は通用しない、とい常識を破って、日本人選手に新しい世界を開いた。
ヒーロー定義から言えば、まさしく野茂がヒーローといえる。
■レヴィ・ストロースの「神話素」に学ぶ
四つ目はレヴィ・ストロースの「神話素」。非常に多くの数の世界の神話を分析してこれ以上分解しきれない
単位まで煮詰めたのが「神話素」だ。ソフトバンクの“白戸家”に作用している神話素である「異類婚姻」、
エルメスのキャリーバックの神話素である「王妃の懐妊」などが代表例である。
TVドラマでヒットする作品とヒットしない作品を分ける要因は、このような基本的な人の心をわくわくさせる
英雄物語や元型が配置され、神話素が作用しているかどうかといえる。
しかし、このような「元型」「ヒーロー物語」「神話素」などを学ぶことに共通する本質的な目的は何だろうか。
それは「感情」に影響を与える要因を学ぶことに他ならない。消費を動かす力の一つが「感情」だ。「感情」を動
かす力としてストーリーから学ぶことは多い。