ダスキンを取り巻く環境には非常に厳しいものがある。レンタルモップ・マットの事業市場では小規模事業所の減少、一般家庭では主力商品であるモップ等の定着や主婦の在宅率の低下、フード事業では中食市場との競合など、それそれの事業分野で逆風が吹き荒れている。当然ながらサービスメニューとその提供方法も従来の延長線ではすまなくなっている。
ミネラルウォーター市場参入はこの環境変化に対応する新しいサービス開発の挑戦でもありまた、最大の資産である加盟店の活性化という大きな戦略的使命をもった新事業といえよう。
ダスキンには2300店にも及ぶ加盟店(フランチャイズチェーン)という顧客接点の資産が大きい。その資産をどう活かすか、どうマネジメントするかがダスキンマーケティングの根幹といえよう。その要諦を講師の松井氏の語録からピックアップしてみよう。
◎SBU開発
事業を構成する要素は3つくらいのユニットに分かれる。いわゆるマーケティングの4Pともいえる。ダスキンの場合、商品、ロジスティック、チャネルである。この3つのユニットのうち、一つでも変われば「事業」になりえるという。ダスキンの例では、家庭用の商品を業務用チャネルに置き換える、つまりチャネルを変えるということである。SBU開発はユニットを入れ替えたり、付け加えたりする事業化アイデア発想のヒントといえよう。特にミネラルウォーターやカフェ(コーヒー)サービスは、家庭用と業務用とチャネルを変えてみるSBU開発の挑戦事例でもある。
◎成功事例
ダスキンの2,300店の加盟店は日夜悩んで考え、実行している事例の集積でもある。悩みながら挑戦した結果として必ず成功事例が生まれる。本部の使命はそれをいかに早く見つけて標準化して加盟店フィードバックする役割が非常に重要であること強調されている。全員が目を皿のようにして成功事例を探すというお話はフランチャイズビジネスに限らず、単純ではあるが重要なマーケティング活動である。
◎プロセス管理
この加盟店の継続的な強化が当然ながら重要な課題である。ダスキンの場合は新商品発売時に勉強会を実施し、ノルマを与える。問題はそのノルマを細かく追いかけ、それを徹底する。そのために夜討ち朝駆けでフォローする。この泥臭いともいえる「プロセス管理」が加盟店という接点の強化のためのキーとなる手法であろう。
◎マインドシェア
2300ある加盟店も1社を見れば、そのキャパシティに限りがある。新たな商品や事業を上乗せでやってもらわなければならない。ダスキンの提案する事業にどれだけ投資するかは、いかにして“エースを投入”させるかだと断言している。その決定権はオーナーである。そのオーナーのマインドシェアの指標はエース投入の程度であるという。いかにマインドシェアをあげるか。いかに人を投入してくれるようにもって行くかが、本部の大きな役割となる。
最後に「皆様に送る言葉」として松井氏の様々な事業を通じて学んだことを7つのキーワードに集約して提示している。実務に裏打ちされた奥深い内容となっている。是非熟読して欲しい。