2002年、大和ハウスから新しい住宅商品「EDDI's House(エディズハウス)」が販売された。
“建築家とハウスメーカーのコラボレーション”の先駆けとなった企画住宅である。
この開発は「生産・購買部門も商品企画・営業に寄与すべし」という号令から始まった。
生産・購買部門を中心に新商品の企画から販売まで一貫して手がけるプロジェクトチームが編成された。
■生産部門からの革新
プロジェクトチームの中核が生産・購買部門というのが非常にユニークだ。特に生産部門は、
開発や生産や施工などの様々な不具合が非常によく見えるポジションといえる。いわゆる部分最適の矛盾が集約される位置ともいえる。
部門ごとでは改善が行われるが、それを一気通貫で取り組むには様々な社内の壁がある。部分の改善の限界と一気通貫に対する問題
意識が非常に強くあったことが住宅業界の常識にとらわれない商品とマーケティングへの挑戦を可能とした大きな要因といえよう。
■業界通念への挑戦
エディズハウスは従来常識とされている業界の通念に大胆に挑戦している。
一つは、建築家とのコラボだ。建築家がつくっているのは「作品」、ハウスメーカーのつくっているのは「商品」。この価値観の違いを超えて
“作品でも商品でもない住宅”がエディズハウスだ。
二つ目は、“営業レス”。住宅購入の決定要因は営業マンの影響度が非常に大きい。その一番重要な販売促進要素に頼らない大胆な試みが当初なされている。
三つ目は、は“Web完結の販売”だ。コンタクトセンターとの併用で、住宅をWebでプランニングから見積もりまで完結する仕組みをつくりあげた。
四つ目は、住宅販売の大きな要素であるモデルハウスをつくらず、実際に建った住宅での“施主宅見学会”を中心にしていることだ。
五つ目は、販促ツールの考え方もユニークだ。カタログという概念ではなく、書店で売れるような“ライフスタイルブック”を制作し、全国書店で販売している。
■ペルソナ
エディズハウスのコミュニケーションを再設計するにあたって大きな力を発揮したのが“ペルソナ手法”であった。
代表的・象徴的な顧客モデルを発見することで“作品でも商品でもない住宅”を求めるユーザー像を明確にすることができたことが大きい。
“ペルソナ手法”はまた、社員・組織間での意識共有を促進することが他の手法と比較して大きなアドバンテージであろう。
■プロダクトアウトの追求
エディズハウスのケースで印象的なのが、ある意味で時代の流れと逆行する“プロダクトアウト”の追及である。
“マーケットイン”という概念が何の疑いもなくビジネスのあらゆる場面で使われている。しかし、“マーケットイン”は
顧客への極端な迎合や全体での非効率、もっと言えば、環境問題などの大きな問題にも繋がっているのではないか。
ここで言う“プロダクトアウト”は生産の都合を優先するということではない。メーカーとして、工業化のプロとして、自信
のある商品開発をもう一度見直すための一つのモノの見方を提示しているように思われる。