2011年は東日本大震災という途方もない自然災害によって、組織小売業も大きな影響を受けた。
多くの小売業が被災し、営業を停止したケースが続出した。そんな中でも、被災地にある大手チ
ェーン、中小チェーンをはじめとする多くの小売業が被災住民のために営業をなんとか続けたケ
ースも多くみられた。食料品や生活必需品を無償で提供したという事例も多く聞く。このような
非常時における小売業の役割というものを改めて考えさせられる事となった。一方で少子高齢化
の進行、デフレといった環境悪化要因は待ったなしで小売業を襲っている。日々構造変化と改革
を続ける小売業の行く末は厳しいものがある。
■合従連衡
環境変化の中で、駆け足で進んでいるのが業界再編である。大型M&Aが次々に起こっている。
2011年では、アークス(北海道)とユニバース(青森)の経営統合が話題となった。10月21日に
株式交換による経営統合が行われ、売上高4,061億円という、ライフコーポレーションに次ぐ、
業界第2位のSM(スーパーマーケット)が誕生した。
イオンはマルナカと山陽マルナカを買収。中国・四国地方で一気にそのシェアを高めた。また、
セブン&アイ・ホールディングスは近商ストア(大阪)業務・資本提携を実施。バロー(岐阜)
はマルキ(岐阜)を子会社化するなど、SM業界を中心に合従連衡が相次いでいる。結果、
そのエリアでは突如シェア第1位のSMが誕生すると言ったことが起こる。それによる業界構造の変化、
市場の変化は大きい。今後は買収予防を含めた対策がますます進むだろうが、一方で、今後の環境を考
えた場合により一層の合従連衡が進むことは間違いないだろう。
■収益改善
11年上期、CVSやSM、GMSなど食品を中心に扱うチェーンは軒並み収益改善が進んだ。
これは震災による需要、特に買い占めや買いだめによるもの、チラシや特売と言った通常の販促活動が
震災による自粛で実施されずに、結果的に収益が改善された事による。震災という特殊な事情をさしお
いても、チラシや特売といった販促活動の自粛による収益改善というのは、ある意味皮肉な結果である。
日々、売上確保のために様々な販促活動を実施して来たわけだが、それを実施しなければ収益が改善する
という事が証明されてしまった。もちろん震災という特殊な事情の中の話なので、割り引いて考える
必要があるが、販促の効果という面では、改めて考え直す必要があるだろう。本当に効果の上がる販促と
は何なのか。一層の研究が進むように感じられる。
■これからの小売業
10年後に日本の小売業がどうなっているのか。誰にも予想できない位変化が激しいだろう。しかし、
小売りの寡占化は今以上に進むだろう。中小の小売業はどう生き残るのか。アークスとユニバースの
経営統合はその一つの回答例だと思う。4,000億円という売上規模は資金力という言う点でも様々なチ
ャレンジができる規模だ。このような規模へ拡大し、新たなステージへのチャレンジが増えてくると思
われる。また、エリア内シェアナンバー1を目指した動きも加速するだろう。高齢化の進行は地方ほど
早い。そういう環境にあわせた改革が一層のスピードで進んでいくと思われる。小売業からは一時も目
が離せない日が続く。