ブログはマーケティングコミュニケーションを設計する上で、なくてはならないメディアとなっている。
また、その手法も商品PRに止まらず、コンテンツ開発、SPツール開発、商品開発などのその活用用途も多様化している。
特に価格に頼らずにその商品のもつ「価値」を消費者にいかに的確に伝え、共感を呼び、消費者間で話題を醸成することが
マーケティングの大きな課題になっていることからも、ネットにおけるクチコミマーケティングの存在感は増している。
■“Myニッチメディア”
口コミマーケティングが従来にも増してその重要性を増しているのは、ネットの普及とブログやSNSといったCGM
(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)が消費者の購買行動を大きく変えてしまったからだ。
一つは宮崎氏が指摘しているように、消費者は本当に価値ある情報か、信じられる情報かを自分で取捨選択できる
「Myニッチメディア」を手に入れてしまった。この情報環境による購買行動の変化にマーケティングは対応しなければならなくなっている。
もう一つはインタネットメディアの増大によって、情報の提供量自体は410倍になっているが、そのうち消費される
情報量は13倍にしか過ぎないという。この爆発する情報環境の中で、いかにターゲットとする顧客にたどり着くかは、
いままで以上に困難になってきている。
■“仕掛け”と“仕組み”
このような情報環境の変化に対応すべく様々なマーケティングコミュニケーション手法が提案されている。
それはガジェット、クロスメディア、ブランデッドエンターテインメント、ブログインフルエンサー、ジェネレーター、
行動ターゲティング、AISAS、アドバゲーミングなど、百貨騒乱の感がある。
これらの新しい概念は、一見、魅力的に見える。しかし、これらの概念はあくまで情報を載せる器にしかすぎず、
もっと本質的なモノの見方を宮崎氏は提示している。それが“仕掛け”と“仕組み”の峻別である。
クチコミマーケティングの前提は、どれだけ消費者をわくわくさせることができるかだ。このわくわくする“仕掛け”
をどれだけ準備できるかということが重要であり、それを乗せていく器が上記の様々な概念であり、
それは“仕組み”であると宮崎氏は指摘している。この視点は重要である。
■“つなぐ”の最大化
さらに宮崎氏はこのCGMを中心としてクチコミマーケティングを従来のマーケティングの中で位置づけている。
それは“つなぐ”という役割であり、機能である。これまで両極であったマスコミュニケーションとOne to Oneコミュニケーションが
両極をつなぐのが、CGMであり、クチコミマーケティングである。
従来、マスとOne to Oneをつなげることは難しいものがあった。ここにCGMによって、マス広告でリーチした後に、
その情報を面白いと思った人がそれを自分のメディアに乗せてより広げてくれる。認知拡大はもちろん、ファン作りと最後の
購入の一押しがつながることになる。
この“つなぐ”の最大化がマーケティング展開の新たな課題となっているといえよう。マーケティングは新たな
コミュニケーション手段を手に入れたが、それだけが単独で成立することはない。“つなぐ”の最大化という考え方こそ、
クチコミマーケティングの本質的な視点といえよう。