料理レシピの投稿・検索サイト「COOKPAD(クックパッド)」。20〜30歳代の女性が8割を占める
利用者は月間約390万人に達し、サイトのトップページ閲覧数は月間1,890万回に及ぶ巨大レシピサイトだ。
掲載されているレシピは37万品目、いずれもサイト利用者が投稿した手料理で、レシピを投稿したユーザ
ーと、それを見たユーザーとがコミュニケーションできる工夫が用意されている。利用者が入力した検索語
から料理ニーズ、ウォンツなどのインサイトを発見でき、お客様に響くメニュー開発が可能となる。しかも
「クックパッド」は、単なる料理サイトを超えて“女心”を理解する新たな「マーケティング開発装置」と
いっても過言ではない。
■食卓の意思決定メディア
クックパッドというサイトの本質的な価値は何であろうか。単に知識を得るための検索サイトでは
ない。「食卓の意思決定メディア」といわれるように、このことが多くのユーザーに支持される理由であろ
う。それは利用頻度、レシピを参考にした食材購入率の高さ、そしてなによりアクセスが夕方の4時頃に
ピークとなるということが、それを証明している。
レシピ本は世の中に溢れている。しかし、「今日」の献立を決めるための支援メディアとしての
価値は大きい。もっといえば、毎日の普通の食事というソリューション提供にクックパッドの本質的な意義がある。
■楽しみの場の提供
クックパッドのサイトはすべてユーザーの投稿から成り立っている。その投稿に対するインセンティブは一切
ない。投稿したレシピに対して他のユーザーからの反応がモチベーションとなり、さらに投稿への動機づけに
なるという善循環の構造がある。
マズローの欲求段階説を持ち出すまでもなく、「承認欲求」を満たす仕組みはクックパッドのサイト運営のポ
イントといえる。
■価値訴求=モノからコトへ
このようなクックパッドのレシピサイトとしてはもちろんだが、新しい「マーケティング開発装置」としての
価値も見逃すことはできない。
「開発装置」としての新しさは、価値開発の装置であることにある。商品のもつ価値を適切に消費者に伝える
ことがマーケティングコミュニケーションの大きな課題だ。しかし、商品のモノそのものではなく、そのモノ
がどのようなコトに役立つのか、どのようなコトを創りだせるのか、このコトの中に適切にモノが位置づけら
れた時に、そのモノの新たな価値が生まれる。
■ユーザー参加の価値開発
クックパッドを利用した価値開発は、このコトをつくりだす装置ということができる。しかも、コトだけでな
く、新たな商品を作り出す装置ともなっている。
クックパッドの「マーケティング開発装置」の最大のアドバンテージは、開発への“ユーザー参加”というこ
とに集約できる。ユーザーが直接参加することによって、アイデアを出し合い、口コミを広げ、具体的な商品
の情報探索や購買行動まで誘発する。
この開発へのユーザー参加”は、主婦の持つ家事のプロとしての知恵を引き出したことと承認欲求を充足する
“場の提供”がこのことを可能としている。