インターネットインフラを核にブログ、ツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアが次々に登場して話題になっている。
しかしその注目のされ方は、既存マスメディアに対するカウンターメディアとして、情報発信の主体の企業から個人へ変化、という
文脈で語られる場合が多い。このような表層的視点ではこれからのコミュニケーション戦略がかえって見えにくくなってしまっている。
この多様化するメディア環境の未来を展望する視座を提供してくれるのが渡辺氏である。
■ほんとうはもっと凄いネット革命
渡辺氏の主張は明確だ。トリプルメディアの中で、メーカーの立場から“オウンドメディア”である自社サイトが、
すべてのメディアのなかでもっとも重要な柱であり、不況の中で、ますます“オウンドメディア”の強化こそがメディ
ア戦略の根幹であるとしている。その主張の背景には世間一般で言われているようなことはネットのほんの一部に過ぎ
なく、もっと深層では凄いことが起こっており、その本質をきちんと理解すればもっとできることがあるという考え方
にある。
■マスメディアを超える自社メディア
では、ほんとうに凄いネット革命の本質とは何か?ネット革命は一般的にはこれまではメディア産業しか持てなかったメ
ディアを個人が持てる時代になったことといわれているが、渡辺氏は個人がメディアをもてるぐらいだったら、企業はも
っと強力なメディアを持つことができるはずという。Hondaでは一つの商品サイトでも月間250万や300万人が訪れること
を実証してきている。いづれにしてもユニークユーザー数が200〜300万人くらいいれば、一つのメディアとして雑誌や小
さなテレビ局とも互角といえよう。
■リアルタイムで把握できる顧客の反応
ネット革命の本質は量的側面だけではない。今月あるいは今日、お客さんがこの商品に何人くらい関心を持っているかと
いうことがリアルタイムに見える。そのことによって自分達がやった広告や活動の成果を測る指標を手に入れることがで
きるようになる。顧客の動きがリアルタイムで把握できるという質的なところがネット革命のもう一つの本質だ。
■ネットに入れ替わるリアルメディア
さらにすべてのリアルなコミュニケーションメディアはネットに変わることにある。例えば自動車購入に影響を与えるメ
ディアを時系列で見てみると、専門誌からメーカーサイトへ、販売店から自動車情報サイトに、友人知人は個人のブログ
などのサイトに置き換わっている。すべてのリアルなものはネットに変わっているという事実がネット革命のもう一つの
本質といえる。
■真の顧客志向の時代
これらのネット革命の本質はマーケティングにどのような革命を起こすのだろうか。企業のもつ様々な機能の中でマーケ
ティングが特有にもつ機能が顧客志向だが、これまでその特有の機能を発揮していたとは言いがたい。しかし、ネット革
命によってあらゆるマーケティング活動の反応が顧客のアクセスという支持率の数字によって白日のもとに晒される時代
が来ている。お題目ではなく、感覚ではなく、具体的な数字による顧客視点に基づくマーケティングをせざるを得ないこ
とがネット革命の本質だといえよう。その真の顧客志向のマーケティングを支えるのが“オウンドメディア”である自社
サイトといえる。