ブランドはどの企業にとっても競争優位の源泉であることは言うまでもない。しかし、
そのブランドマーケティングに新たな課題が突きつけられている。PB商品やディスカウント攻勢
に対して価格を超える価値づくり、更にその価値の効果的な伝達こそ大きな課題となっている。
これらの課題に対して店頭の重要性が再認識されている。ショッパーマーケティングと
いう新しい概念への関心の高さが示しているように、従来とは異なる視点と方法論が模索されている。
ブランドの価値をいかに効果的にショッパーに伝達し購買に結び付けるか、 “ブランド”と
“ショッパー”、その“連結”こそ、現代のマーケティングの課題である。
■買う気のないお客様を買う気にさせる
店頭の重要性はISMをはじめとして従来から言われてきたことだが、ショッパーマーケティングとはどこ
が違うのだろうか。岩下氏は以下のようにその違いを明確にしている。ISMがどちらかというとモノをど
こにどうやって並べたら生産性が上がるのという研究であった。ショッパーマーケティングはいかに能動
的にお客様の購買行動を動かすことができるのか、つまりコミュニケーションの比重が大きくなっている。
“買う気のない人にいかに買う気にさせるか”、いまや購買行動の変化まで踏み込まざるを得なくなってい
ることがショッパーマーケティングの背景にある。
■当たり前のことを当たり前に実行する
マーケティングはいつも新しいことを求めているが、それ以前にもっと基本的で重要なことは、“当たり前
のことを当たり前にできる”ことだと岩下氏は一貫して主張している。
岩下氏が講演で言及したマーチャンダイジングの四原則、三つのA戦略、三つP戦略にしても、全くの基本
であるが、それがなかなかできていないのが実態である。
また、ショッパーマーケティングにしても「within arms reach of desire」と、従来からいわれるように
コンシューマーとショッパーは対立する概念ではなく、二つを両輪であることも当たり前のことといえる。
連結というこの当たり前のことが実行できないことこそ、本質的な課題として再認識する必要がある。
■目的の共有−アライメント
ではこれらの当たり前のことを当たり前に実行できるようにするにはどうしたらよいのだろうか。効果的な
連結には何が決め手になるのだろうか。
このことに対しても「どのようなお客様の行動変化を起こすのかといった目的をいかに共有化するかに尽き
る」と岩下氏は明言する。この目的の共有がないと、クリエーターは自分の好きなものをつくろうとする、
営業は売りたいものを売ろうとする、マーケティングは自分の言いたいことを言おうとする。アラインメン
トとは線上に並ぶという意味だが、みんなが同じ方向を向くためには、きちんとした目的と目標がないと、
同じ方向を向けない。当然その目的によって取りうるべき手は違ってくる。この目的の共有も当たり前のこ
とといえるが、当たり前が故にお座なりになりがちであることも事実であろう。
費用対効果が益々厳しく問われる。マーケティング費用配分の巧拙がより成果を決めることになる。明確な
目的と最適な販促手法の選択と組み合わせ、製・販、社内部門間、広告代理店間という様々な組織のアライ
メントこそ、これからのマーケティングに必要不可欠な組織的能力といえるのではないか。