味の素が運営するレシピサイト「レシピ大百科」は2000年に創設された歴史のあるサイトである。
最近では料理レシピサイトが乱立と言っても良いほどネット上に溢れているが、日本で最も歴史ある
レシピサイトである。
古くは1960年代に「奥様手帖」という冊子を作っており、当時、既に6,000メニューという膨大な
メニューが財産としてあった。印刷物からネットへ一気に転換し、現在に至っている。そのような中で、
味の素のサイトは一貫して、メーカーが提供するレシピサイトと言う基本コンセプトを貫いているのが
大きな特徴である。
■「調味料」メーカーとしての顧客維持
少子高齢化社会は既に現実のものとして様々な場面で影響を与えている。「食」のメーカーとして
は日本の人口減少は確実に需要がシュリンクする事を示している。需要減少にどう立ち向かって行くか。
それは大きな課題である。同社では国内だけでなく国際戦略を強化しているのもそのひとつである。
さらに、人口減少だけでなく、もうひとつ大きな問題があるという。それは若い女性の料理離れである。
バブル以降、女性が料理を作る事が減る一方だと言う。「食卓には頑張って3品以上は並べたいけど、
1〜2品で力尽きて、ましてや汁物は作りたくない」「料理は義務。できるだけ手間を省きたい」。
やはりもともと食への関心が低い方が増えてきて、子どもを育てながら仕事をしていらっしゃる方
も多く、手を抜きたいという気持ちがある。それに「洗い物を少なくしたいので、なるべく品数は
抑えて一皿で」と、一皿完結メニューということで、居酒屋さんに行って1品頼んで食べるという
感じのメニューが家庭でも増えてきたというのが現実だと言う。
さらに、女性が作ることができるメニューそのものが減っていると言う。同社によれば、メニュ
ー増える時期は結婚2年以内で、結婚後2年までで大体覚えて、あとは覚えようという努力はしない
のだと言う。メニューが増えなければ当然、調味料そのものを使うケースは減る。「風が吹けば・・・」
の例えどおり、料理を自宅で作ってもらう。それが最も重要な事なのである。
それに対して、レシピサイトだけでなく、料理教室の開催など様々な施策が実施されている。
基本的な需要を開拓するための施策として参考になり事例を紹介頂いているが、「ここまでしないとダメ」
という時代になっていると言うことを改めて認識した。
■「AJINOMOTO PARK」
同社の考え方に、“消費者視点”という言葉が度々登場する。当たり前の言葉であるが、
消費者視点から生活者視点へ考え方をシフトしていくなかで、改めてこのことに立ち戻って
検討されている。その結果が、2010年7月に「AJINOMOTO PARK」である。「節電レシピ」が
誕生したのもこの生活者視点である。大震災後、いち早く提案された「節電メニュー」。当
時は電気を使わなくても料理ができると、Twitter等で話題になっていた。ある意味、SNSの
活用という面では、「非常時」に有効であると言うことが証明されたた訳である。この発想
も、「生活者視点」が元になっている。
「AJINOMOTO PARK」は、実に1万のレシピから、あなたにぴったりのレシピがすぐに見つ
かるレシピサイトとして創設されたという。そのメニューは全てが専門家がきちんと考えた
メニューで、誰でもその通り作ることができるメニューというのがポイントである。ユーザ
ー投稿型だと、ややもそれば再現性が難しいメニューもあると聞く。同社では1万に及ぶメ
ニューを全て検証しており、その点だけを見ても「生活者視点」という事の実証に他ならない。