View Point 東京電力の挑戦

 

熱源を含むすべてのエネルギーを電気でまかなう「オール電化」。電力自由化、IPP、自家発などで伸び悩む電力需要に対して、ガス需要を奪う、電力会社のまさに生き残りをかけた戦略、それが「オール電化」だ。しかもその対象はガスの本丸である厨房や給湯の熱源である。

いまや電力10社の「オール電化」契約件数は全世帯3%強、150万件に普及し、着実にしかも静かに浸透している。東京電力では女優鈴木京香を前面に打ち出した「Switch!」キャンペーンによる大量宣伝で電気機器を使った快適生活提案している。東京電力の「オール電化」契約の昨対伸び率は84%と電力10社のうち最も大きい。

しかし、「オール電化」は大量の宣伝だけで普及させることはできない。そこには水面下での地道なマーケティング活動が行なわれている。そのマーケティングをあえて一つのキーワードにするならば“コラボレーション(協働)”といえよう。

■ハンバーガー戦略

IHクッキングヒーターやエコキュートなどの住宅設備機器は住宅に組み込まれて販売される。そこで2つのユーザーが存在することになる。一つは住宅の施主である“エンドユーザー”。もう一つがハウスメーカーや工務店、リフォーム業者の“サブユーザ”である。この両面へのマーケティングが基本である。

この戦略を東京電力では「ハンバーガー戦略」と呼んでいる。特にサブユーザであるハウスメーカーやマンションデベロッパーへの「オール電化」仕様折り込み活動は重要な営業活動である。

■仕組み開発

エンドユーザーがオール電化を採用するには、大きなコストがかかる。しかも新築やリフォームというもっと大きな買物と同時にそのコストは発生する。

商品的な特徴やメリット訴求以上に金融的な仕組みが採用の背中を押すことになる。オール電化を促進する様々な金融面での優遇制度が準備されている。それは電気料金の各種割引、火災保険の割引、住宅ローン金利優遇制度、機器のリース制度など多彩である。これには銀行や損保会社とのコラボレーションが必要となる。

■体験・体感

「オール電化」はいくら商品を説明しても、自分で使って、生活してみないとその良さは分からない。まさしくヘビーな体験型商品である。

それはユーザー調査で、一旦「オール電化」の良さを味わうと、「是非勧める」が4割近く、「どちらかといえば勧める」を含めると9割が勧めるという調査結果をみても明確である。

その体験・体感の拠点として、住宅メーカーとの協働による宿泊体験型のオール電化モデルハウスの開設や住宅・関連機器メーカーのショールームでのIH料理教室などが積極的に開催されている。

■キッチン提案

東京電力では特にIHの特色を活かしたキッチン提案をしている。火気を使用していないので内装制限を受けないことから従来とは異なるキッチンが可能となる。キッチンがリビングに進出し、可動式のキッチンも可能になる。ここでもメーカーを始めとした多様なコラボレーションが行なわれているであろう。

「オール電化」は1社だけではない、普及のための協働のマーケティングの典型ケースといえよう。